女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

製図屋や漫画家がよく使うアレ

　まだ作業が残ってるって言ってるのに机の下から出て来ないテイカが体育座りでジト目を向ける。全く、仕方の無い奴め。机に向かうと出来立ての椅子に腰を下ろして残りの作業をやっちゃおう。

「少し、狭いですね」

「甲板を上げれば少しは開放感が出るけどな」

今からやる作業は斜めにする必要が無いので、ペニスケは甲板にピッタリとくっ付いていた。

「もう少し、脚を開いてくださると…」

腿から背中をすっぽり収める椅子に、脚を開く機能は無い。少し修正しなきゃダメだな。

「ちと待っとれ。椅子を直すから」

机から離れて立ち上がり、座面を再び柔らかくして座り直すと、脚を広げて凹みを増やす。だがそれだけだと内腿の部分が膨らんでプレイし難いので、Uの字に切り取って表面を固めた。

「これでどうだ？」

「だいぶ近付けました。作業を続けてください」

机に着くと、ズボンから解き放たれたアイツがテイカに握られ、温かい舌が触れる。

「気持ち良いが、集中出来んぞ…」

「ん…んちゅ。頑張ってください」

止めるつもりは無いらしい。やるしか無い、か。

　雑木の薄板を直角になるよう《収納》し、長辺の角を落として定規の基部を作る。これは直ぐに出来る。目盛打って無いからな。同じ物をもう一つ作り、此方には垂直に腕を付けてT型定規にする。
これで垂直と水平の平行線が引けるぞ。
三角定規や分度器も欲しいが、木製では使い勝手が悪い。どうするか…。見下ろすと、テイカがレロレロ舐め付ける、アイツがお汁でテラッてた。ああ、そうか。
ミズゲルの粘体を浮かせて取り出し、大まかな形に整形して《集結》。それを先ずは薄く、次に直角が出るように切り取った。長方形になった薄ゲル版を先ずは細い長方形で一枚。次に良き幅で一枚切り出す。最初のは直線定規だ。定規作るなら最初からコレで作れば良かったわ。
二枚目の方は、幅と同じ長さで切り、対角線を切って四十五度の定規に、幅の二倍の長さで切って対角線を切り出し、六十度の定規となった。分度器は…、無理だな。軽く面取りして角を薄くし、取り敢えず完成とした。

　椅子に製図台に定規。後足りないのは筆記用具だ。紙は雑木紙で何とかなるが、ボールペンのインクがそろそろ心許無い。俺の持つ地球製品がどんどん無くなって行く。使わなくなった服等は、大事に仕舞ってあるけれど、コレを使い切ってしまったら、いよいよシルケ人になるんだな…って。

筆記用具、作るならペンだろう。製図屋や漫画家がよく使うアレだ。地球でのペン先は鉄製。錆びるのでメッキがしてあるが、シルケにその技術は無い。あるかも知れんが俺は見た事無い。なので材料は錆びても影響の少ない銀にする。ドロップで取れた銀粒一つ取り出して薄板にすると、尖った五角形に切り出してRを付け、突端から垂直に、そしてサイドに一ヶ所ずつ《収納》で切れ目を入れ、インク溜りの穴を開けた。地球ではスクールペンと言われる奴である。本来なら丸ペンなのだが、そこまで細い線は必要無いしな。銀は柔らかいし、丈夫さを取って此方にした。

「インク買って来なきゃ…」

「んぷ…。インクでしたらイゼッタ様かリア様が持ってますよ？はむ…ちゅぷ」

なら後で借りるとしよう。雑木で作ったペン軸にペン先を突っ込み、雑木紙に線を引く。スーーーッと引っ掛かり無い音がして、良いのが出来たと実感した。

「テイカ、やっぱりエッチに集中しないと出すに出せないや」

「ん…ぷふ。でしたら集中、しましょうか…」

「やる気出て来たよ」

二人並んでヤリ部屋に向かうのであった。

　テイカをたっぷり楽しませ、折角だからと装備を着込んでクリューエルシュタルトの雑貨屋へ。借りるより自分用のがあった方が良いもんな。

「カケル様。此処へは初めて来ましたが、少し寒いですね」

「ああ。もしかしたらママ様が近付いてるのかも知れないな」

マントから伝わる微かな冷気に、雪の時期の足音が聞こえたような気がした。