上 下
975 / 1,519

三姉妹の趣味

しおりを挟む


 軟骨と魔石がセットで二千五百ヤン。全部で五万ヤンとなった。そりゃ塩漬けにもなるわ。金もらって帰ろ。

『挨拶くらいしなさいよね。パ~パ』

愛娘の《念話》に振り向くと、誰かからの貢物だろう、小さな皮製ポスポスを抱いて座ってた。

「良いのもらったな」

「あばぇ~」『甘いのが欲しいわ』

花より団子か、気持ちは分かる。

「今度甘い物差し入れとくよ。ママ達とお食べ」

「あきゃっきゃっ」「あうえ~」

ガンダー共々喜んで貰えたようだ。《洗浄》した手で一撫でし、カロ邸経由で島へと戻った。

「お帰りなさいませ、カケル様。今日はアルネスさんですか?」

「この間はカロだけだったからな」

「ホイットニーさんの匂いもします」

「ホイットニーさんの串焼き食ったからな」

「エメラルダスの匂い…」

「見てわかるだろ?鎧直してもらってんだ」

「ですが、致してませんよね?」

「他に客が居たからな」

「居なければ、致した、と…」

「したな。しなかったおかげでギルドで依頼こなして来たぞ」

「それは、皆様に報告せねば。食事の支度はもう暫く掛かりますので、それでは」

何故それを報告する必要があるのか。

「カケル、仕事した。えらい」

 まるで俺が仕事してないみたいじゃないか。夕飯を食べながらの会話は、殆どが仕事絡みの話となった。

「旦那さま、それで何をして来たんですか?」

「サミイは知ってるよな?シースケルトン」

「ああ~。たまに街の海岸にも出るみたいですね。倒すの大変だって聞いた事あります!」

アレ、大変なのか?ノノペディアに拠ると、物理的な攻撃に強い上に水魔法に耐性があり、鈍重な割に積極的に人を襲うので冒険者も逃げる魔物であると言う。

「そんな魔物が一匹二千五百ヤンか。安過ぎだな」

「カケル様。一体倒せば一日の寝食とお風呂が得られます」

「成程な。テイカは狩ってた口か?」

「はい。刺突に向いたダガーでグサッと」

バルタリンドに来た頃は採集物ばっか調べてたけど、その頃だったら旨味があったのだろう。今だったらドラゴンブラッドだって採りに行けるな。

「わたしも早く討伐依頼してみたいです!」「カララもなの!」

「カラクレナイはともかく、サミイはまだFなんだろ?つか依頼請けてんのか」

「カララちゃんと一緒に三回やりました!リュネさま達が付き添いしてくれたんですよ」

「葉っぱいっぱい取ったの!」

「私達もFランクですからねぇ」

「うむ。コツコツ貢献を貯めているぞ」

三姉妹の趣味となりつつあるようだ。サミイがどうしてもって強請るので、討伐じゃない依頼をまた一緒に請ける事になった。

「三人共来るのか。それにしてもその格好は…」

 翌日。食堂に気合いの入った装備のサミイと動きやすい格好のカラクレナイ。そして装備を着込んだ三姉妹が現れて、そんな台詞を発してしまう。

「作っちゃいましたぁ」

作っちゃいましたか。見た目生皮のような生成の皮の服の上下だが、シンプルなだけに何を仕込んでるのか皆目見当も付かない。

「主様よ、唯の服だぞ?」

「リュネが作ったのにか?」

「我等に装備が必要だと思うか?」

「まぁなぁ…」

「一応、冒険者に見えるような物に仕立ててもらった」

「カケルさぁん、冒険者に見えますかぁ?」

「三人共美人だからナンパされないか不安になるよ」

「うふ、近付けさせませんよ」

だろうなぁ。リュネはバルタリンドでは崇められてるからな。迂闊に近寄れば信者が黙って無いだろう。

「旦那さま、行きましょう!」「行くのー」

土産を持ち、寝具店経由で転移門を潜ると、部屋の外でエージャが縮こまっているのが《感知》された。

「エージャ、入って来い」

「え、あ…。はい。失礼します。皆様いらっしゃいませ。サミイ様もお帰りなさいませ」

「ママ上に挨拶なの!」

「旦那さまは来なくて良いですからねー」「はよなの!」

サミイとカラクレナイがママ上殿の部屋に向かうのを見て、三姉妹は客間へ。俺はペニスケを外した。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

病弱幼女は最強少女だった

如月花恋
ファンタジー
私は結菜(ゆいな) 一応…9歳なんだけど… 身長が全く伸びないっ!! 自分より年下の子に抜かされた!! ふぇぇん 私の身長伸びてよ~

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

竜焔の騎士

時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証…… これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語――― 田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。 会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ? マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。 「フールに、選ばれたのでしょう?」 突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!? この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー! 天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...