958 / 1,519
俺は男だ
しおりを挟む腹減って、島に戻ろうと思ったが、多分まだ午前中。女将の暇な時間なら食堂の片付けが終わった辺りの時間だろうと予想する。島に戻ってもおやつ程度の物しか無いだろうし、街で買い食いする事に決めた。雪の時期が遠のいて、街の広場には露店が並び出している。
コレ、今迄無かったんだって。ウラシュ島との交易が始まってから流行りだしたそうだ。
とにかく辛いと銘打つ串焼きを買い求め、齧りながら露店巡りに興ずる。うん、辛い。唐辛子でも山葵でもマスタードでも無い辛味がする。舌先から喉の奥迄満遍なく同じ刺激なのが面白い。味噌が欲しい。塩味なのが残念だ。
「あ、カケルだ!捕まえろ!」
「え?」
声の主はフル装備のジョンだった。同じくゴテゴテ装備した奴等がガチャガチャ鳴らして集まって来た。
「カケルだな?観念しとけよ?」
「卑猥な装備しやがって、何やらかしたんだ!?」
「ジョンくーん、懲らしめて良いかねー?」
「止めろ!懲らしめんなっ!お前等も冗談だ!絶対触るなよ!?」
俺がやる気を出すと、ジョンくん走って来た。
「え?冗談?」「こんな卑猥装備なのにですか?」
「実力に見合った装備だ。試合うなら後にしとけ」
「「おう」」「分かったぜ」
「で、ジョンさん。此奴は?」
「俺より強ぇ冒険者のカケルだ」
「どうも、ジョンくんより強ぇカケルさんだ。所でどうしたその格好?」
「ああ。此奴等の到達階を下げる為にな。随伴すんだ。カケルも来いよ」
通りで見掛けん顔だと思った。と言うか若い。俺より若いかそう変わらんかって感じの若造達だ。
「男ばっかじゃん」
「そうだぜ?俺は男だかんな、ダンジョンで儲けてモテまくるんだ」
「俺だってジョンさんみたいにドラゴンバッタバッタ殺ってやんだ!」
男と言われたのが嬉しかったのか、途端に馴れ馴れしくなった。そう言う意味で言ったんじゃ無かったのだが…。
「なあ、来いよ。俺一人じゃ三人ぐらい減っちまいそうだしよ」
減り過ぎだ。依頼として受理されて、報酬が出ると言うので帯同してやる事にした。
ダンジョン入口迄走りながら、ガキ共の自己紹介を聞かされる。ジョンの右腕になりたいサムに、ならば左腕になると言うドアップ。右脚のラグエルと左脚のミッデラン。誰も頭脳にはなってくれないのな。
「四肢欠損しても平気だな」
「平気なモンか!」
「カケルはジョンさんの何になんだよ?」
タメ口かよ…。俺はジョンのお守りじゃ無いんだが…。
「ならば…、ジョンくんの代わりに女を抱いてやろうかな」
「やっぱ卑猥装備じゃねーか!」
「引っこ抜くぞちんぽマン!」
行くの辞めたい。だがダンジョンの入口が近付くと、ガキ共も静かになって来た。
「緊張してんのか?」
「だっ!誰がっ!」「しゅ、集中してんだよ!」
「お前等、少し力抜け。いきなり強ぇトコ迄は潜らんからよ」
「「「「お、おう」」」」
ジョンの一言で落ち着いたのか、それからは静かに受付を済ませ、ダンジョン内に入って行った。
「十階は余裕、か」
「ケブなんてガキでも殺れらぁ」
数が居てもわ~っと来るだけじゃ大した驚異にゃならないか。聞くと此奴等。三十階手前くらい迄は行けるそうだ。回復に後衛無しで行けるのは意外と優秀なのだろうか?
「後衛や支援は集めないのか?」
「喰らわなきゃ回復要らねーじゃん」
「魔法屋って足遅ぇしな」
「後ろから撃たれたらたまったもんじゃねーぜ」
「残弾考えなきゃなんねーしな。飛び道具もだけどさ」
前言撤回。唯の脳筋だった。俺の問に答える四人は盾一回避一剣二の四前衛。三十手前が限界なのは理解出来た。
ジョンが小さく囁いた。それで俺もって事か。否、俺居なかったらどうしてたんだ?三人減らしたのか?
そんなこんなでガキ共が限界と言う二十七階にやって来た。多少迂回したが敵を蹴散らして来たので皆お疲れだ。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる