女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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大体の事は平気

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「お前さん、コレならオレにも殺れんだろ?」

 ワーリンがやってみたいと強請るので、試しにやらせてみる事にした。

「分かった。やってみろ。皆離れろー」

「あーい」「「はーーい」」

「なっ、何があるんだよぉ」

「分からないから退避させんだ」

こんな事してる合間にも、電車は止まらず進んでく。戻るのは面倒だが追い掛けなければならない。
念の為、ワーリンに《結界》を纏わせ少し後ろを付いて行くと、振り上げた角バットを先頭車両へ思い切り叩き付けた。地面毎殺る気満々の攻撃が電車を襲い、電車が爆発した。

「なっ!?」「ワーリンッ!!」「先輩回復!早くっ!」

爆煙の中に飛び込む二人に出遅れたアズは風魔法で爆煙を散らしながら駆けて行く。
晴れゆく爆煙の中、ワーリンを見付けていたキキラが此方に手を振り叫ぶ。

「先輩!旦那も来てくれーっ!」

「ワーリンッ、今回復するわ!」

駆け寄ってモゴモゴと呪文を唱えるアズ。早い事は良い事だが焦って周りが見えてない。

「やっぱり変なギミック持ってたか…」

「何言ってんのさ!?」

「あ、居た!生きてる?」

晴れた煙の中からシトンもやって来た。だいぶズレたトコ行ってたな。

「分かんないわよ!集中させてっ!」

「旦那も頼むよ!?」

「落ち着けって」

「落ち着けないよ!」

ガルガル唸るキキラを横目にワーリンをてやる。
外傷無し。脈拍正常。呼吸あり。内部の異常も見付からなかった。

「カケルさん!魔法が弾かれます!どうしてっ」

「《結界》纏ってるからな。それに気絶してるだけだ」

「結界…?もお~~~っ」

アズが脱力してへたり込んだ。

「カケルさんが何の手も使わないなんて無いもんね」

「当たり前だ。俺の女を殺らせはせんよ」

シトンは何かを察していたようだが、それ本当に察してたのか?ガッツリ焦って突っ込んでったよな?

「ど、どゆこと…?」

キキラは唖然として呟いた。

「カケルさんのスキルで無傷で済んだって事」

「そゆこと」

「ぶ、無事かぁ、ふぁ~……」

キキラも漸く理解したようで、逆立っていた全身の毛が垂れ下がった。

「取り敢えずワーリンを連れて部屋を出よう」

ワーリンを浮かせて部屋の奥へと連れて行く。置いてある箱を回収して階段を降りると、マットを敷いて横にした。

「少し寝てれば起きるだろう。休憩だな」

「旦那ァ、旦那ァ~」

「分かったよ、起こしてやるから」

キキラが飯の時間の猫のようにゴネて擦り付いて来るので折れた。放っとくと噛まれるヤツだし。

「グキャッ!ひっ、…此処」

「ワーリン!」

「えギャッ!キキラッ、止めっあがっ!」

《威圧》を当てればこの通りである。《威圧》で起こされ、キキラの抱擁に再び夢の世界に誘われつつあるワーリンは、キキラの鼻っ面に噛み付く事で現世に留まる事が出来た。

「ふぃ、お前さん、酷い目に遭ったよぅ」

「まさか爆発するなんてな」

「あんなのオレ等じゃ無理だって。普通の奴等はどうやって抜けんだろ?」

「無理だと思うぞ?あんな小さいのであの威力だろ。本来の大きさだったら中に居る奴全員死ぬぜ?」

「だよね~」

「ワーリン、あんたあんな事の後で随分余裕だね?」

「そりゃあ、何かあんのがダンジョンだもん。この人が居れば大体の事は平気さ」

涙目のキキラが割って入るが、ワーリンは事も無げに言い放った。

「懐いてるねー」「止めなさい、獣人差別よ?」

「信頼してるって言ってくれよな?一緒に居てこんなに心強い雄は滅多に居ないんだぜ?」

「ダメな時はどう足掻いてもダメだけどな」

「そん時ゃリュネ様達に助けてもらお?」

「売れるだけ媚び売っとくよ」

 休憩を終えて七十一階に入る。皆一目で気付いたようで、俺が《結界》を張るのを許可してくれた。

「こんな見え見えの罠初めてだよ」

「だからこそ、警戒しなきゃいけないわ」

「絶対転がって来るもんな」

「な、なあ、旦那…」

キキラが小声で話し掛けて来た。
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