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ビンタ

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 折角だし、俺も鈍器でやってみよう。家で振ろうと作っておいた、俺専用の一本を、両手で構えて飛び出した。

「っっしゃあーっ!」

立ち上がり、女達を捕まえようとして右往左往するゴーレムの左膝を横から撃ち抜くと、体をくの字に曲げて倒れ込む。…が、深追いはしない。ゆっくりと胴体が起き上がるのを見計らい、良い感じの高さになった頭をフルスイングした。
ガキーンと良い音と共にふっ飛んで、天井に当たって煙に変わるゴーレムの頭。ショートフライかな。同時に体も煙に変わってく。バットで殴り付けた場所に核があったようだ。

「おお!」「やった!」

「横振りって凄いんだね」

「偶々だと思うわよ?」

三人が喜びの声を上げる中、アズは冷静な判断。間違いでは無いな。

「偶々だったが殺れて良かったよ。頭の近くに核があるパターンは多そうだ」

鈍器での戦いは、手足を潰して体の何処かにある核を壊すってのが定石なのだろう。これはなかなか面倒だ。だが得物を振り回してミートさせる感覚は、棒を振る生活が長かった者にとっては堪らんモノがある。
ドロップを拾わせ階段を降りる。此処からは女達にも戦わせてやった。

「ドラゴン!?」「羽無いぜ?」「デカいな」

「行くわよー!」

Tレックスを正面に見据えてアズが支援魔法を掛けて行く。前衛三人はアズの声を聞いて動き出した。
ワーリンを囮として立てて左右から叩く。強そうな敵と殺り合う時のパターンで脚にダメージを与えて行った。脚が壊れて歩けなくなると、キキラが尻尾を押さえ付け、残った二人が頭と首を打ち壊す。
大きくても雑魚なので、ボスよりは柔らかいし核の場所も壊れ易い。バットもボコボコだけどな。

「お前等バットがベコベコだな」

「だね。折れないのは良いけど、ちょっと脆いのかねぇ?」

「旦那、もっと硬くて重いのが良いな」

「あたいのはこのままで良いから直してー」

「オレ、角張ってんのが良い!」

硬くて重いのと、角張ってんのか。階段を降りて小休止を取りながら、三人の武器をメンテする。
シトンのは直ぐ出来た。ワーリンのは胴を三角形にしてダメージを増やす感じに。キキラのは鉈にした。

「これ斧じゃん」

「鉈だぞ?」

分厚くて刃の大きい、斧と間違えても仕方の無い鉈を持ち上げ振り回すキキラは中々の力持ちだ。

「オレのはバットと斧の中間くらい?」

「そうだな。尖った所で殴れよ?」

「カケルさん、私足手纏いじゃ無いわよね?」

「アズの指示が無きゃ前衛はもっと疲れてるよ。大観を見れる冒険者なんてそう居ないだろうな」

「そうだそうだ」「支援助かってるよ」「頼りにしてるよ先輩」

「それなら良いけど」

水飲んで、干し肉齧って再出発。新たに見繕った武器は二人に合ってるな。ゴーレムが次々に破壊されては煙に変わる。トカゲとボスゴーレム以外なら、四人は余裕で潜れると思う。此処迄来られないのが残念だが。シトンの武器はバットのままだが、攻撃を受け流して回避盾を頑張っていた。

「皆お疲れ。此処のボスは手出しすんなよ?」

「強いの?」

「否、弱い。だが面倒なんだ」

 七十階に着いて、扉を潜ると飛んで行く。勿論三人も付いて来る。

「手ぇ出したらビンタすっかんな?」

「うっ」「まっ?」「女の子にビンタとか酷くない?」

「どんな反応が来るか分からんのだ。分かれ」

「「「あ~~~い」」」

壁に見える顔がガリガリ鳴らして寄って来るのを見て、ヤンチャ娘共は踏鞴たたらを踏んだ。

「なんだこりゃ!?」

「動いてるよな…」

「旦那、これが敵なのかい?」

「見とけよ見とけよ~」

 四角い顔を《集結》させて電車の模型にしてやると、抵抗を失ったHOゲージがサーッと走り出す。どんな足で走ってるのか、引っくり返して見てみたいぜ。

「これが敵ですか?」

ミニチュア模型になってしまったボスを見て、遅れて来たアズは拍子抜けしているがそれも仕方無しだ。








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