上 下
925 / 1,519

丈夫

しおりを挟む


 《結界》越しに、ブランブランと挑発し、集まって来たのを煙に変える。牙、皮、爪、羽根。魔石以外はこんな感じだ。ミスリルナゲットが出ないなら、此処での狩りは無意味だな。
《結界》の外を一掃し、雑木マットを敷いて少し早めの昼飯にした。時間感覚が狂ってるのか少し眠い。しっかり食うとガチ寝したくなるので間食程度に抑えて昼寝しよう…。
仮眠から目覚めたら、身形を整え来た道を戻る。俺も転移魔法なり転移スキルが欲しい。折り返しだと、スタートとゴールから移動する場合、敵が居なかったりするのだ。
そして一周で飽きる。特に通路上に居る雑魚を追って倒して行っても箱一杯には到底及ばない。ミスリルナゲットが出るだけマシと考えるしか無いが、あんまり出ないのだ。
四十階と七十五階を一往復して、多分夕飯の支度に入る。フィールドが茜色に染っているし、夕方の筈だ。作ったスープを煮込みながらソーサーと肉を焼き、其奴を齧りながらお玉でスープを味わった。


 夜になると、《結界》の外で彷徨く魔獣達が活発になり、《結界》を壊してやろうと体当たりや尻尾ビンタ。風か何かの魔法っぽいのがぶつかる音がする。だがこの程度ならエリアの魔獣が総出で来ても問題無い。コップの水を一口含み、明るくなる迄横になる。

「あら、あらあら。キレイな結界だこと」

「!?」

思わず飛び起きた。ドカドカやってる《結界》の外からはっきり聞こえたその声に、体が勝手に反応して飛び退いた。久々に《逃げる》が自動発動したのだ。
《抵抗》を掛けないと意識を持ってかれる…。そんな美声の持ち主は《結界》に穴を開けて侵入し、ご丁寧に穴を閉じた。

「器用だな…。初めて見たよそんな事」

「うふ、この程度なら幾らでも。貴方に一つ、聞いても良いかしら?」

「答えられる事ならば」

「そう。では…

今、どんな気持ち?」

脳味噌が溶けてしまいそうな気持ちだ。だが口には出来ん。三重に掛けた《抵抗》に、《結界》を三つ《纏う》。そして《治癒》が俺の腹に開いた穴を塞ぐ。口を開いたら血かゲロを吐く自信があった。

「ふぅ~…」

「あら、丈夫なのね」

「…答えて良いか?」

「ふふっ、ええ、どうぞ?」

「……死に掛けるような目に遭うのは何度か経験したが、今回のは二番目にキツかったよ」

「何、それ?」

「死ぬ程度の魔力を吸われた時の方がヤバかった。反応すら出来なかったしな」

「慣れっ子って事なのね」

「ああ。経験は力だな。所であんたは何者だ?」

「こっちこそ聞きたいわぁ。何で死なないのか…ねっ」

「丈夫だからだろ」

「なっ!?」

幾重にも纏った無意味な《結界》を解除して、《抵抗》を《耐性》に変える。そして見えない攻撃の正面に《収納》を並べた。キツかった抵抗が耐えられるようになり、攻撃は異空間へと吸い込まれた。

「暗いから明かり着けて良いか?」

「勝手になさいっ」

光の棒を数本取り出し、ほんの僅かに魔力を込める。ジリッと足を擦る音がして、こんな強い奴でもビビるんだなーって思った。空に浮かせて照らし出される美声の主は、声に違わぬ美女だった。長く、濃い色の金髪は大きく畝り、顔の横からは二本の角が頬当てのように下に伸びていた。黒い皮のドレスを纏い、黒く長い尾には金色の装飾が…否、これは鱗か。

「強くて美人とかどんだけ勝ち組かよ」

「それは…褒めているのかしら」

「貶しては無いぞ。本心だ」

「そっ。なら死になさい」

「うーん…」

もうその攻撃じゃ、俺を殺せないかな。

「此方からも聞いて良いか?」

「何よ!?何で消えるのよ!」

「何で攻撃すんの?ダンジョンの魔物じゃ無いのだろ?」

「貴方がっ!殺すからっ!」

「此処に居た魔物をか?」

「そんなんじゃないわよ!貴方っ、龍を殺したでしょ!?」

「無理だろそれ。俺これでも人だぞ?」

「貴方のような人が居るかっ!!」

「人なんだがなぁ。取り敢えず…」

浮気になるからエッチは出来ないな。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。 どんなスキルかというと…? 本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。 パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。 だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。 テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。 勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。 そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。 ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。 テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を… 8月5日0:30… HOTランキング3位に浮上しました。 8月5日5:00… HOTランキング2位になりました! 8月5日13:00… HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ ) 皆様の応援のおかげです(つД`)ノ

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

『モンスターカード!』で、ゲットしてみたらエロいお姉さんになりました。

ぬこぬっくぬこ
ファンタジー
 えっ、なんで?なんで絵柄が――――バニーガールなの?  おかしい、ゲットしたのはうさぎのモンスターだったはず…  『モンスターカード』というスキルがある。  それは、弱ったモンスターをカードに取り込む事により、いつでも、どこにでも呼び出す事が出来るようになる神スキルだ。  だがしかし、実際に取り込んでみるとなぜか現物と掛け離れたものがカードに描かれている。 「もしかしてこれは、ゲットしたらエロいお姉さんになる18禁モンスターカード!?」 注)当作品は決してエロいお話ではありません☆  小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...