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味気ない

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「カケラント国です」

「え、何だって?」

「カケラント国です」

 魔族が総べる、この国の名前らしい。元の帝国がリュネ達の手で崩壊し、新たな国として再出発するに当たり、カケラント国と名を改めた…とエンメロイは言う。

「それ、俺の名をもじってるよな?」

「…うふ」

「うふっじゃねえよ」

「一度公布された物は変えられませんので…」

「カケル、人のこと、いえない」

「姉さんを王にしてますからねぇ~」

そうだった。ウラシュ島の小島を国にして、ミーネを王に据えてミネストパレスなんて名前にしたの俺でした。人のやる事は何処も同じなのである。

「俺、王にはならんよ?」

「問題ありません。宰相として国を纏めるのが私の仕事ですから」

「ん~…、まあ、滅ぼされん程度に頑張ってくれ」

「産み増やして頂ければ、それで」

「カーケールさぁーん」

「い、一世代だけな?」

「人のこ、ポコポコ増える。うらやましい」

「それだけ弱い存在なのでございます」

「仕方ないですねぇ…。ハメを外しすぎないようにしてください。ね?」

「はーい」

リュネからの許可が取れたので早い内に種付け大会しなければ。けど今日からってのはダメみたい。リュネとネーヴェに抱き着かれ、気付いたら島に帰ってた。別れの挨拶くらい言わせろよって思う。

 昼飯は先に食べちゃったので俺は一人、寝室で昼寝する。
魔王の件は片付いた。少なくとも今代の勇者が出張る事は無いだろう。リュネに封印を上書きしてもらったし、これでもかと浄化して瘴気も途絶えたからな。浄化と言えば、属性魔石に使い捲ったせいでジョンの所に卸しに行く分が無くなった。カラクレナイがちゅぱる分くらいはあるが少し心許無い。魔石を獲りに行かなくては。

『離乳食って、あんなに味気ない物なのかしら』

普段は俺から声掛けしないと反応しないシンクレイアが初めて自分から《念話》を送って来た。パパモテ期到来か?

『今日から離乳食なのか?』

『ソーサーだっけ?アレの煮たの。ガンダーちゃんのを分けてもらったのだけど、あんなにバクバク行ける程では無かったわ』

『普通の赤ちゃんより舌が肥えてるんだろうな。豆乳あるけど持ってこうか?豆腐もあるが足が早いからそれはこっちに来たら食べさせたろう』

『甘さが恋しいわ。チョコ食べたい』

『大人が発情するチョコっぽい食べ物ならダンジョンで採れるが、止めとこうな』

『豆乳待ってるわ』

娘のお願いは聞いてやらんとな。食堂に降りて豆乳もらって来よう。


「豆乳ですか?次に作るのは夕食の時間になりますけど、飲みたいのですか?」

 偶々厨房に居たシャリーに豆乳について聞くと、毎食搾りたてを使いたいそうで在庫が無いと言う。

「ガンダーやメッツはもう始めてるだろうが、シンクレイアもそろそろ離乳食だろ?」

「はい。うちのお子様達も煮込みソーサーを…、ああ、豆乳で煮るのですね?その発想はありませんでした」

「ママ上殿の所に持ってってやって欲しいんだ。カロとタマリーにもな」

「タマリーさんの所には時間停止のマジックボックスありますかね?」

「聞いてみないと分からんな。余ってるヤツがあったら一つくれてやってくれ」

「では私のを出しましょう」

「余ってるならそれで。出来ればシンクレイア達の夕飯に間に合わせてやってくれ」

 シャリーがバルタリンドに持って行った豆乳が、あそこまでブームになるとは思いも寄らなんだ。
ガンダーとシンクレイアの食い付きが物凄く、それを見ていた親が味見をし、眉唾効果を聞いて同席していた女性職員に火が着いた。そこから家政婦組合と女冒険者に飛び火して、何故か野郎も飲み出した。

「カケル様、店舗を作らないと卸し切れません」

「お前が迂闊な事言うからだろ」

「カケル様ぁ~」

「分かったよ。金は出してやるから店舗探して来い。従業員もだぞ?後、ウラシュ島の種ならそっちの増産もな。リームに頭下げとけよ?」

結果、シャリーが本気を出してしまった。





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