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別の日
しおりを挟むシャクリャ・オーファンシーこと大橋咲良こと、我が愛娘シンクレイアとは、少しずつだが《念話》で話をしている。魔族のエンメロイですら《念話》は数リット持たない程の魔力を使う。シンクレイアの魔力は人の子の中でもかなりあるようだ。
『何で聞かないのよ?』
『何をだ?』
『シンクレイアの、魂の事…』
『神の力でも無きゃ知った所で何も出来ないじゃないか』
『自分の娘でしょ?』
『なら聞くが、本当に、何も出来無かったら、お前はどう責任を取るつもりなんだ?』
『…私にだって分からないわよ』
『俺は条件さえ整えば神に会える。会う事が出来て、要件を聞き入れられて、あの子の魂がお前の体に入ったとして、お前はどうなる』
『…消えるのかしらね』
『俺が蘇生してから今迄のシンクレイアは別人で、これからは蘇生前のシンクレイアに戻った…って、カロに伝えるつもりか?』
『そうよね…』
『お前の事を知ってる奴は、俺と妻二人とメイドの一人に、龍だけのようだ』
『私はシンクレイア。私が、シンクレイア…。もう寝るわ』
別の日には俺の子供の話になる。
『以前託児所みたいな所に連れてかれたのだけど、あれ何?』
『俺ん家だよ』
『って事は、他の赤ちゃん達は…』
『妾の子だよ。一人だけ俺の義理の弟が居るけどな』
『うわ、最低』
『日本のシステムと同じに考えるなよ?同意は得てるしこの世界はそう言うシステムなんだ。稼いでる者、強い者が女を養える。それが異世界シルケの理なんだよ。嫌なら浮気しない男と結ばれる事だ。パパより強い奴でな』
流石にセックスが娯楽である事は黙っておこう。
そしてまた別の日。
『…あの時、最初に転移するって時、女神様に言われたの。今の私ではこの国の兵士には敵わないって』
『どんな扱いを受けるか、聞いたのか?』
『聞いてない。失敗するからって。空の上から見てたわ。ブレスを吐いた、あの龍が貴方なのよね』
『変身するのに二十五日掛かるんだぜ?』
『そうなのね。ん、そろそろ限界だわ。隠しながら魔力を練るって疲れるわ』
『お休み。魔力だけならシルケで二番目くらいにあるから頑張れ~』
こんな感じで勇者になった時の事やその前後の話を聞いたり、世界の情報を教えたりした。
大橋咲良は十七歳の夏、予備校からの帰り道に見知らぬ者から刃物を突き立てられ亡くなったと言う。加害者は死刑になりたくて殺したと供述したが、結果的には死刑にはならなかったと女神に聞かされたようだ。その主な理由は死体が無かったからだ。
死に掛けの状態で女神の元に呼ばれた咲良は、女神の言葉に従って勇者の力を得て死んだ。そして、その魂は命の灯火を失いかけていたシンクレイアの中に宿ったのだそうな。
『ダンジョンにドラゴン、燃えるわね!』
ラノベ好きだと言う咲良は悪役令嬢や乙女ゲーモブと同じくらい冒険ファンタジーも好きだそうで、シルケの話をすると男の子なノリで食い付いて来る。
『十五歳で登録。んでCランクになれば入場可能だ』
『長いわ。ねえ、冒険者ギルドに知られて無いダンジョンならランクも歳も関係無いわよね?』
『それでも赤子は連れてけんだろ』
『ああ、もどかしいっ』
『魔力とスキルを鍛える期間、だな』
『龍の人に時間早めてもらっちゃダメなの?』
『時間の進みが遅い部屋に十四年も居られるなら止めはしないが』
『精神と時の…って事ね』
『残念ながらアレと違って、飯が用意出来無いんだよなぁ』
『何でよ?』
『考えて言葉話せよ?年に千食以上の食料が一瞬で無くなるんだぞ?』
『そう、だけど…そうよね。食料自給率もあるのよね』
『聡い娘を持ってパパ嬉しい』
『十七年じゃ知識チートも出来ないわよ。アルネス来たから、またね、パーパ』
三十年過ぎでも出来ないんだよなぁ。
「そろそろ着きますよ、パァパ」
「お腹すいた。パーパ」
俺は今、ネーヴェを伴い巨大リュネの背に乗って移動していた。
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