874 / 1,519
報告は真面目にする物だ
しおりを挟む「貴様もギルドの長だろう。礼節を弁えんと長生き出来んぞ?」
「分かってるさ。長生き出来た報告に来た」
フルプレートに羽織を着けて、多分軍人のお偉方だろう。男がジョンを窘めるが、あまり分かってない返答をする馬鹿。
「で、後ろの者共は何者だ?部外者が立ち入れる程暇では無いのだが」
まあ、そうだろうな。此奴等まだ大移動が無くなった事を知らないんだし。否、ジョンが思わせ振りな事言ってるよな?聞いてないのか信じてないのか…。
「大移動は全て討伐した。急いでいたので連れて来ただけだ」
「その割には貴様、生きているではないか」
「生きてるから報告出来るんだ」
「我々は真面目な話をしているつもりだ。場を乱すつもりなら帰って地下にでも隠れているんだな」
眉間に皺寄せ、それでも冷静を保つこの男は人間出来てるな。
「ジョンよ、報告は真面目にする物だ。何時何処で何がどうした。短く纏めて話してみろ」
多分だが、ジョンは嬉しいのだろう。けどそれで報告に時間を掛けては愚の骨頂だ。相手が真面目な性格なら尚更だ。
「わーった。分かったから威圧を当てんなっ」
ジョンが真面目に先程の光景を説明すると、ある者は驚き、またある者は訝しげな目を向ける。凡そ信じられるような内容でも無し、信じられないのは仕方の無い事だろう。
「補足する。空に上げた獲物は何時でも降ろせるぞ。剥ぎ取りするなら早い方が良いと思うが」
「…貴様が魔物の群を一網打尽にした男か」
「カケルだ。レッサードラゴンなら一人で狩れる程度の力はあるぞ」
「口だけなら好きなだけ言える」
「国王に献上と言う名の徴収を受けたが?知らんか?」
「不敬であるぞ」
「元々はハーク様ご兄妹に食べてもらおうと持って来ただけなのを、取り巻き貴族の口車に乗せられて全て奪いやがったのだ。ハーク様は欠片しか口に入れられなかったと仰った。アルア様に至っては口にもされておらん。何方に非があるのか」
「カケル、それまでにしとけ、な?」
一触即発。傍からはそう見える事だろう。剣のグリップに手を掛けるフルプレート達は今にも斬りかかって来そうにも見える。だが実際は《威圧》に纏われ身動き取れ無い状態だ。
「ブルランさんにも劣る奴等に、俺を斬る事等出来んよ。で?獲物を降ろすのか?どうなんだ雑兵」
「ぞ、雑兵…だと…」「この…冒険者、風情が…っ」
「くっ、これでも強く、なったと思っていたが…。その名を出されては、雑兵呼ばわりも致し方無し…」
「剣を帯びて無くてもだいぶ強いからな」
「…そうだな」
腕の力が緩んだので、纏わせた《威圧》を解いてやる。
「ふう…。聞かなかった事にしておこう」
「「団長殿!」」
「我々は報告のみを聞いた。そうだな?」
団長殿の一睨みで取り巻きが静かになる。物事を早く終えるに、瑣末事を飲み込むスキルは大人にとって必要なスキルだ。
「獲物に関してはもう少し協議を重ねる必要がある。本日はこの地に滞在し、明日また来るが良い。それ迄には話を纏めておこう」
ギルドから移動して酒場。テーブルを寄せて八人分の席を作ると、取り敢えずエールとなる。俺の隣にはマッチョとジョン。解せぬ。
「さあ、酒も並んだ。話せ。どうやってドラゴンを殺った?」「「さあさあ」」
そう言うのは乾杯して、ある程度飲んで食って、それからだろ?だが少年の心に還ってしまったマッチョボーイ共は目をキラキラさせてしまった。仕方無く、エールをチビりと含んで話し始める。
「あの豪傑に認められるとはな。ライガーを素手で屠られたのも凄いが、流石にドラゴンは無理だろうな」
「俺はまだ見た事が無いぞ。出会したくも無いがな」
「ああ、我々は運が良い」
マッチョボーイズは見た目に反して堅実な冒険者らしく、俺もやりたいとは言わなかった。そんな事言うのはジョンくらいの物だろう。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる