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ズル休み

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「魔力でも当ててみますか?」

 冗談めかして言っているリュネだが、治そうと思えば治せる筈だ。それをしないのには何か訳があるのだろう。

「赤ちゃん居るから他の方法が良いな」

「カケル様、休むのが一番かと。ギルドマスターは中々休みが取れないようですし」

纏まった休みが取れないので、半休にしたり遅着早退を多くして細かく休みに当てているのだとシャリーは言う。

「シャリー、一日だけ、手伝いに行ってくれるか?」

「マスター案件と決裁に判は押せませんが、良いのですか?」

「その時はカロの裁定に任せるが、今は休みが必要だろう」

「…ですね。タマリーさんとも話して来ます」

シャリーはペコリと頭を下げると転移門へと急ぎ足で向かって行った。

「カロ、今日は休みだ。ゆっくり過ごすが良いよ」

「そんなぁ、これじゃズル休みでしゅよー」

「年休も無い会社が悪い。クリューエルシュタルトのギルマスにも言って改善させたが、使えるサブを沢山集めろ」

「…女ですか?」

「男じゃ!…って、カロは北の大陸…名前忘れたけど、行った事無かったんだよな」

蕩けてたのが急にキリッとしよる。もう仕事行けるだろ。

「ノースバー」

「それそれ。ノースバー大陸」

「知識としては知っておりますが、行った事はありましぇん」

蕩けて来たな。名前も上がった事だし魔石でも売り付けに行ってみようって事になった。
で、イゼッタとネーヴェとカラクレナイにカロの五人で転移門を潜る。ネーヴェとカラクレナイは別件で、テッチー達の所へ遊びに行くのだと。


「此処がカケル様のお友達が勤めているギルドですね」

 多少涼しくてキリッとなったカロがテンプレ的な事を言う。ジョンが上に居るのは感覚で分かるので、撫でる程度の《威圧》を飛ばしてギルドに入った。
雪の無い季節のこのギルドが雪の時期より空いているのは、外での仕事が増えるからだろう。

「いらっしゃいま…、カケル…様ですね?」

「金の引き出しを頼む」

笑顔の受付嬢から笑顔が消える。イラッとはするがイゼッタとカロも居るし、とっとと済ませてしまおう。

「カケル!来たな!?」

小銭を下ろしていると階段を降りて来たジョンが声を上げる。《阻害》掛けたら面白そうだが連れが居るので止めておく。

「よう。商談あるぞー」

「マジか。だがそれ所じゃ無ぇんだ。スマンが上に来てくれ」

「金下ろしたらな」

言うだけ言って階段を上がってってしまった。急ぎの用でもあるのだろうか。

「アレが此処のギルドマスターですか」

「パッと見冒険者」

「確かに」

「パッと見なくても冒険者だよ」

金を受け取り階段を上がる。勝手知ったるジョンの部屋をノックして、中に入ると何やら人が多い。

「来たな…って、其方の女性は?」

「妻です」

「妾です」

「妻のイゼッタに、バルタリンドのギルマスやってるカロだ。この赤いのはジョンだ」

「赤、良いじゃねーか」

「で、此方のマッチョと美女達はお友達か?」

「ちっ…おい、随分と抜けた事言うなお前。状況が分かってないのか?」

毛皮の着いた鎧を纏まったマッチョが舌打ちして口を開くが、俺説明も無しに呼ばれただけだしな。

「何も聞いて無いな。俺は魔石の売買交渉に来ただけだからな」

「そんなモン買取りにでも出せば良いだろうがっ」

「…とか言ってるけど?」

「ルウェイン、人を見た目で判断すると、死ぬぞ?お連れの女性は置いといて、カケルにはどうしても協力を願いたくて俺が直々に呼んだんだからな」

毛皮鎧マッチョはルウェインって名前みたい。他にもマッチョが四人と美女が三人、立ってたり座ってたりするが、誰も静かに考え事でもしてるかのようだった。

「魔石の件はまた後でって事にしといてやるよ。顧客集めといてくれ。で?」

「…助かる。簡単に説明すると、大移動が発生した」

なんぞそれ?
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