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仕事舐めてんのか?
しおりを挟む青く煌めく鎧を纏う、巨大なドラゴンが飛んで来れば誰だってパニックになる。バルタリンドの街は大騒ぎで、逃げ出そうとしたり戦おうとしたりでてんやわんやな状態だ。何処ぞの馬鹿が飛び道具でも撃つ前にカラクレナイの周りに《結界》を張って、リュネと共に地上に降りた。
「よう。忙しそうだな」
「おまっ!カケルだな!?何だこのドラゴンは!?」
「以前ギルドに登録した騎龍だよ。強そうだろー」
「そして可愛いですねぇ~」
槍を持って誰何して来る門兵に改めてカララサマを紹介してやると、直ぐに事務所へ駆け込んで、上役を連れて来た。
「お前の事はギルドから聞いている。何故ドラゴンを連れて来た?」
「俺はお前を知らないがそれはまあ良いや。冒険者が依頼をするのに必要だから連れて来たんだ。街の中には入れないでやるから下手に構うなよ?」
『やなのー。ママ上に会いたいのー』
カラクレナイの咆哮で、物々しい雰囲気の男共は完全に戦意を喪失したようだ。
「後で時間を作るから、先に仕事をしようなー」
「グギュルル…」
「サミイも降りて来ーい」
上空から落ちて来るサミイを浮かせて着地させる。ネーヴェ曰く大丈夫らしいが、見てる方はヒヤヒヤするので手を出さざるを得ない。
「え?サミイ?は?」
「あ、ノーリスおじさんお久です!」
「サミイだ!!」
街の住民大体知り合いのサミイはこの上役とも顔馴染みだそうだ。メットを外して顔を出すと、サミイを知る者皆驚いていた。
「サミイは布団屋の娘からドラゴンライダーとなった。なのでギルドに登録して依頼を受ける予定だ。…飽きるまでな」
「飽きるかどうかは置いといて、依頼しますよー」
「そ、そうか…」
地もピーを足止めする訳にも行かず、サミイは門を潜ってく。俺とリュネもその後に続いた。
「ギュァア。ギュウウーン」
「カケル様!あれはカラクレナイ様ですよね?」
ギルド前ではカロがシンクレイアを抱いて外に出て待っていた。
「そうだよ。シンクレイア~パパでちゅよ~」
手甲を外し、《洗浄》した手で頬っぺをプニるが、それを無視してカラクレナイを見詰めてた。少し寂しい。
「サミイが冒険者登録するから受付けてやってくれ…」
「よろしくお願いします!」
「サミイさんが?分かりました。それにしても凄い装備ですね…」
近くに居る職員に指示を出し、サミイは受付カウンターへと誘われて行った。門前付近の人集りはまだまだ健在だが、武器は仕舞われ野次馬になっているみたい。力自慢とかが湧く前に街を離れたい。
「旦那さま、終わりましたー」
「そのギルド証は返して来なさい。カロ、直接見てやれ」
「えー」「はい、承りました」
登録即ランクBとか仕事舐めてんのか?国からの強制依頼なんて此奴等にはさせられんよ。どうせ戦争だろうしな。
そして稍あって、再び見せてもらったギルド証はちゃんとFランクだった。
「依頼受けて来たか?」
「はい!パーティー申請もして来ましたよ」
「そうかそうか」「私も、入ってますよね?」
「リュネ様、万事抜かり無く」
「そ、ありがと~」
リュネは付添いだと思ったのだが、パーティーメンバーになるそうだ。
「じゃあみなさん、行きましょー!」
野次馬を掻き分けて外に出て、街道を歩く。カラクレナイは歩くと畑とか壊しちゃうのでゆっくりと飛んで来た。で、歩く事十数リット。街道を外れて生い茂る草藪に辿り着く。
「ここでーす」
「此処か」「サミイ、なにすんの?」
「叢に生えてる薬草を採りまーす。カツリョクソウとツルゲネツが生えてるそうでーす」
《感知》で見回すと、確かにカツリョクソウとツルゲネツが生えている。他にも色々生えてるな。《感知》の結果は伝えずに、サミイのしたいようにさせてやった。敵?カラクレナイが居て近寄って来る命知らず等居ない。居てもリュネが《収納》してるしな。
ホント、人って馬鹿だわ。
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