上 下
862 / 1,519

お試し体験

しおりを挟む


「なあ坊や、偶には依頼を受けちゃみないかい?」

 並んだ料理を食べ進めていると、タマリーが依頼を受けろと言う。そりゃあ俺も一応冒険者だし、依頼を受ける事は吝かでは無いんだぜ?

「俺に出来る依頼?トカゲでも倒せば良いのか?」

「そんな依頼無いと思うがね。けどあまりに依頼をおざなりにしてるとランクも上がらないじゃないか」

ランクと聞いてサミイが口を開く。

「旦那さまって、Bランクでしたっけ?」

「だな」

「坊やの場合、依頼以外で稼いでるから何とも言い難いけど、カロだって会いたがってるんだよ」

私もね、と聞こえたような気がした。もっと声張ってええのじゃよ?だがおっぱいとお尻以外主張しないのもタマリーの良い所だ。

「依頼の件は了承した。けど、俺をAランクにする相手は決まってるからランクは上げないぞ?」

「それで良いさ。安い仕事で良いから、直々顔を見せてやっておくれ。でないと子供達が親父の顔を忘れちまうよ?」

それは困るな。会いに行くのもそうだが島にも来てもらわないと。

「タマリー達も休みがあったら島に来てくれ。島の子達もきっと喜ぶから」

「休み次第だね。カロにも伝えとくよ」

一足お先に食事を終えたタマリーが仕事に戻って行く。支払いは任せろ。サミイはジト目を向けるな。

「旦那さまはどんな依頼が良いんですか?」

食後の果実水を飲み、サミイが口を開く。中々難しい質問だ。

「どんなと言われてもなー。昔は金が無かったからしょぼい依頼なんか無視して素材狩りしてたんだよな。今は早く終わる奴が良いかも」

「薬草採集みたいな?」

「だな。採り過ぎて一悶着起こしたけど。スキルで探せるからしょぼい討伐でも良いな」

「戦うのは怖いですけど、薬草摘みならわたしもやってみたいです!」

冒険者に憧れのあったサミイはお試し体験的な事をしたいみたいだ。流石にこれから直ぐに、とは行かないので明日にでもやってみるか、と言う事になった。


「よ、よく似合ってるぞ?」

「たんせいこめた。ほめたたえて」

 夕飯を食べながらネーヴェにサミイの一張羅の仕立てをお願いし、朝一番に袖を通したサミイは素人冒険者には見えない出で立ちになっていた。
薄ら青い皮は海竜だよな。青皮に俺が以前獲って来た人工皮革がパイピングみたいな装飾になっている。水色と焦茶のシマシマはチョコミントを連想させる。腰の左右には謎の金具が付いているが、武器でも提げるのに使うのだろうか?

「旦那さま、体が軽くなった気がします!ネーヴェさまっ、ありがとうございます!」

「カケルさぁ~ん、此方も支度が整いましたよ~」

「は?」

まだ朝飯も食べてないのだが、珍しく早起きのリュネが支度が整った事を告げた。何の?

「リュネも来るのか?」

「私は引率ですから、見てるだけでぇす」

「カーケルー、サミイ~、はーやーくー」

美少女カラクレナイが、巨大カラクレナイになっていた…。しかも装具が凄い。俺が以前渡したミスリルを惜しげも無く使い、全身金属鎧みたいになっていた。それにしてもだ。その過剰装備で採集に行くのか?依頼受けるからバルタリンドに行かねばならんのだぞ?

「依頼を受けてから元に戻れば良かったのに…」

「カララちゃんは騎龍として登録されてますからね」

「サミイ、早く乗るの」

「カララさま~、屈んでくださ~い」

「だいじょぶ。ぴょんってすれば乗れる」

「え?こ、こうですか?」

サミイが飛び跳ねた瞬間、俺は必死に追い付いて抱き抱えた。加減を知らんものだから跳び過ぎたのだ。

「びっ、びびっ、びっ、びっくりしました!」

「せめて何度か軽く跳ねて感覚を掴んでから跳ぼうな?」

カラクレナイの背中に降ろすと、サミイは両腰に付いている金具を留めてカラクレナイと一体化する。
俺達は一体どんな伝説の薬草を採りに行くと言うのだろうか…。

「取り敢えず、朝飯食わないか?」

お弁当用意されてた。カラクレナイはもう食べたんだって。ヤル気満々だな。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。 それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。 特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。 そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。 間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。 そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。 【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】 そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。 しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。 起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。 右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。 魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。 記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。

白紙の冒険譚 ~パーティーに裏切られた底辺冒険者は魔界から逃げてきた最弱魔王と共に成り上がる~

草乃葉オウル
ファンタジー
誰もが自分の魔法を記した魔本を持っている世界。 無能の証明である『白紙の魔本』を持つ冒険者エンデは、生活のため報酬の良い魔境調査のパーティーに参加するも、そこで捨て駒のように扱われ命の危機に晒される。 死の直前、彼を助けたのは今にも命が尽きようかという竜だった。 竜は残った命を魔力に変えてエンデの魔本に呪文を記す。 ただ一つ、『白紙の魔本』を持つ魔王の少女を守ることを条件に……。 エンデは竜の魔法と意思を受け継ぎ、覇権を争う他の魔王や迫りくる勇者に立ち向かう。 やがて二人のもとには仲間が集まり、世界にとって見逃せない存在へと成長していく。 これは種族は違えど不遇の人生を送ってきた二人の空白を埋める物語! ※完結済みの自作『PASTEL POISON ~パーティに毒の池に沈められた男、Sランクモンスターに転生し魔王少女とダンジョンで暮らす~』に多くの新要素を加えストーリーを再構成したフルリメイク作品です。本編は最初からすべて新規書き下ろしなので、前作を知ってる人も知らない人も楽しめます!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界隠密冒険記

リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。 人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。 ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。 黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。 その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。 冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。 現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。 改稿を始めました。 以前より読みやすくなっているはずです。 第一部完結しました。第二部完結しました。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...