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胸騒ぎ

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 時間が分からないので多分であろう夕飯を作って食い、食休みをリュネの膝枕で過ごす。

「純度は高そうだが、やはり数は獲り難いな」

ドロップはしっかりとあるのだが、国が使うとなるとどうしても数が足りなく思い、愚痴が零れる。

「のんびり集めて行けば良いんです」

「まあなー。所で何時帰る?大した量ではあるんだが遺跡のゴーレムも見てみたいし」

「そうですねぇ、イゼッタさん達も宿屋で待ってますし、明日拾ったらそのまま魔法陣の部屋へ行って、一度戻りましょうか」

「そうだな。時間分かんないし早寝するかね」

おっぱいチュパって寝た…のだが。何だが胸騒ぎがして目が覚めてしまった。

「リュネ、起きてる?」

「寝てまぁす」

「何か、胸騒ぎがするんだ」

「そうですねぇ。潜るのは無しにして、帰りましょうか」

「すまんなぁ。で、何が起きてるか分かるか?」

「ふむ、そうですねぇ…。誰か、海の階層に居ますね」

「俺の知り合いかな?」

「それは分かりませんが…、女が一人、海に落ちてますね」

「急ぐべきだろうな」

荷物を《収納》してボス部屋を出る。女達が通路の端に並んでるのでチラ見して飛んで行き七十二階。上に繋がる階段迄一気に移動した。

「結界張るぞ」

「それは私が。カケルさんは助けに行って下さい」

「分かった」

二人で飛んで階段を上がると突然海の中に出た。リュネの張った結界で空気の塊が出来ているので濡れなくて済んだよ。それに魚や海竜は壁際に逃げているので俺達が襲われる事は無い。が、今水面でワタワタしてる奴は近くに居る魚達に気が気でないだろう。急いで水面迄上がり、なる早で助けに向かった。

「おーい、大丈夫かー?」

「え?ゲホッ、飛んでる!?」

海に落ちて壁にしがみ付いてる女は見ず知らずの女だった。皮鎧なので斥候辺りだろうか。壁のちょっとした出っ張りに指を掛けて何とか沈むのを耐えていたようだ。

「あんた!それ以上近付くんじゃ無いよ!?」

「…上ではあんな事言ってるけど、助けてくれそうか?」

「あ…、楽になった。何かした?取り敢えずありがと。上は…どうだかねー、気持ちはあるけど腕が無いって感じ?」

「普通の冒険者は此処で引き返さないと死ぬぞ。魚と海竜を殺れてもドロップ全部水の中に沈むから全然美味くないしな」

「襲って来ないなら平気よ」

「それ、襲って来るからな?今日が特別なだけだから」

「何呑気に喋食ってんだい!みんな、魔法準備しなっ!」

「姉さん止めて!命の恩人だよ!」

上に居る奴等が攻撃しようとするのを止めに入るずぶ濡れ女を浮かせて上に上げてやる。

「うわ、何これ魔法?」

「スキルだよ。詳しくは冒険者の秘密な?」

ずぶ濡れ女を《洗浄》して乾かし、出入口に着地させた。

「女が死ぬのを見たくなかったから勝手に助けたぞ?」

「そうやって恩を売って、どうせナニが目的だろ?」

「止めてよ姉さんっ」

姉さんと呼ばれてる女は片手剣と盾で皆を守ろうと必死だが、こんな狭い通路でチャンバラなんて出来るのかねえ。

「取り敢えずお前等も引き返しとけ。俺達が此処から出ると此処の敵も暴れ出すからな」

「何を訳の分からない事を!」

「お前等、此処迄随分と楽して来れただろ?その程度の人数でレッサードラゴンも殺れてさ。普通なら返り討ちだぞ?今日は運が良かっただけだからお宝持って帰りな」

「あんたに言われる道理は無いよっ」

「止めてったら!この人只者じゃないって」

「そんなの飛べるってだけじゃないか!」

「違うよ!この人俺達って言ってるんだよ!?仲間が居るのに見えないんだよ!私の《探知》が効かないの!!」

「は?『透視』の二つ名が聞いて呆れるね…。そんな奴に絆されちまったかい?」

「だから違「効かないですよ~」うわっ」

乾いた女の後ろから、リュネがニコニコ驚かす。全員一回ずつ死んでるな。呆気に取られて身動き止まってるし。

「俺の連れのリュネだ。強いぞ?」

ダンジョンがビビってモンスターが逃げ惑うくらい、な。



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