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協力しろ
しおりを挟む俺は今、窓の無い、石畳と鉄格子の小部屋に押し込められている。
椅子の後ろから現れた魔法陣に乗って、行き着いた先はダンジョンの入口だったのだ。直前迄エッチしてたから勿論全裸だ。朝日を浴びてそそり立つ姿はさぞ神々しかったであろう。衛兵と冒険者の注目を集め、俺は無事豚箱送りとなった。
で、尋問されて今此処。軽く仮眠してると、幾つかの気配が此方に向かって来るのが分かった。
「カケル様!」
「ん?ああ、ヤーンか。暫く振りだな」
鉄格子に駆け寄って来たヤーン。十本槍を代表して来たのだそうで、保釈金も払ってくれたのだと。
「カケル、お前の釈放に俺達も協力したんだ。お前も協力してくれるよな?」
ヤーンの後ろで立っていた男が何やら協力しろと抜かしよる。
「誰だ?」
「ギルマスだよ。見た事無かったかい?」
「無いな」
「話は俺の部屋でしようや」
「仕方無いな。一度家に帰ってからにしたかったが」
「そう言ってトンズラこかれると困るんだがな」
「後三日は居られるし、まぁ良いだろう」
体をキレイに《洗浄》し、《収納》から直接服や装備を身に着けてると衛兵とギルマスが驚いて警戒した。大人しくしてたんだがら今更警戒されてもなぁ。
取り敢えずギルマスに付いてって牢屋を出て、ギルドに向かう。ヤーンも一緒だ。
机と椅子と、ソファーセットしか無い、シンプルなギルマス室に着くと、ギルマスは机にドカりと尻を付けて脚を組む。
「まあ好きに座れや」
「ヤーン、お茶淹れてくれ」
「え、ああ。あいよ」
鉄板やら薬缶やら、お茶セットを出して湯を沸かしてもらってる内に、ギルマスの話を聞いてやろう。
協力とは、単純にダンジョンの奥がどうなってるかの情報が欲しいのだと。貴重な情報が端金程度の保釈金で手に入れられるってんなら大儲けだよな。
「保釈金、返すからお釣りくれよ」
「あ?払えんのか?」
「幾らよ?」
「四百万ヤンだ」
「トカゲの魔石と同じか」
けっ、ボりやがって。ニヤニヤドヤ顔のギルマスに、トカゲの魔石を投げてやると、泡食ったギルマスは机に仰向けになって魔石を抱き締めた。
「足りたろ?」
「この…」
「イキんなよ。別に隠したい訳でも金が欲しい訳でも無い。奥に行くと単純に儲けが出ないから教えてやる必要を感じないだけだ」
「コイツは、この魔石はダンジョンドロップだろうが」
「レッサードラゴン、殺れんの?」
ギルマスは黙ってしまった。ヤーンが淹れてくれたお茶を啜る。美味い。
「ヤーン達が最強だとは思わんが、十本槍が行ける階層が、今ギルドが行ける最奥だろう。欲張り過ぎると人死が出るぞ?」
「い、行くかどうかは俺が決める!」
「それをお前が表に出すと、馬鹿が潜ってダンジョンに食われるんだが?」
「教える気は無ぇってか」
「知る意味が無いんだ」
「ね、ねえ、カケル様。馬鹿でも帰って来られる場所迄なら、教えても良いんじゃ無いかい?」
平行線に一石を投じるヤーンだが、途中を教えると必ずその先が気になる物なんじゃないのか?冒険者って。
「…十本槍の最深層は知ってるか?」
「ぁあ?確か…、四十階のエリアボス迄、だったよな」
「そうだよ。そこから先は私達には荷が重いよ」
「ヤーン、理由も教えてやれ」
「一つ目は魔力を温存するにはキツ過ぎる事。二つ目は、持ち物が嵩張る事だね。人数を増やしたら頭割りで旨味が無くなっちまう。それにさ、潜り続けるならダンジョンの中で寝なきゃいけない。二十一階から行って帰って寝泊まり出来る限界が四十階なのさ」
「そりゃあ、お前等が女だからだろ」
「そりゃそうだろ。男だけなら通路で雑魚寝も良いけどなー、日付けが変わると湧いて出るぞ?」
「幾ら払えば流してくれんだ!?」
魔石を机に叩き付けてギルマスが喚く。
「取り敢えず五十階のボス倒せ。で、そこから先に潜れるかを考えろ。敵は変わり映えしないから金なんて要らん」
お茶セットを片付けて、ヤーンと共に外に出た。名乗りもしない奴と仕事なんて出来んよ。
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