上 下
819 / 1,519

頑張り次第

しおりを挟む


 怒っているでも嫌がっているでも無く、モジモジと俯くキキラを部屋に入れる。

「オレだって妾なんだぞ?嫁なんてダメだ」

「ん…。とにかくもらってもらえって」

女の操はもらってしまったし、頂けるものはもらっておこう。しかし脳筋テンプレが過ぎるぞ。

「キキラは、俺の事が好きか?」

「え、まぁ、今迄男をそんな目で見て来なかったからさ…。初めてなんだよ。こんなにドキドキすんの」

「うわぁ、恋しちゃってるよ。お前さん、連れてくのかい?」

「妻には出来ん。三人居るし、妾には龍も居る。それでも良ければ妾に加えてやるよ」

「うん…、頑張る」

「お前さん、それならお土産は気張らないとだね」

小言を言われないくらいの土産を用意せねばならん訳か。

「お土産?ワタシも何か持ってく?」

「キキラは気にしなくて良い。俺が皆への土産を気張らねば解決しないからな」

「キキラも考えな。あンたの頑張り次第でこの人が小言を食らう時間が短くなるんだからね」

小言を食らうのは確定のようだ。

「土産ねぇ…。地元の特産なんて石ころくらいしか思い付か無ぇよぅ」

「分かる。けどなんか無かったかなー、んー…」

地もピー程、地元の名物を知らない。地元あるある。

「輸出用とか金持ち用で食った事無い食い物とか無いか?酒は美味かったが強過ぎてダメだけど」

「アレもオレ達ゃ滅多に飲めない良い酒なんだけどね」

「赤ちゃん居るから、酒はちょっとな」

「あ、ワーリン。アレならどう?」

「あれ?」

「ワームの糸」

「ああ~。数が採れたら良いけど、あれ献上品だよ?買えんの?」

「坑内に居る天然のなら採ってもへーきへーき」

「ワームの糸とは何ぞや?」

二人の話に割って入る。ワームとは、芋虫の状態で一生を過ごす虫だそうで、大きいモノは全長二ハーンを超えると言う。暖かい季節には外に出て木の葉を食い溜めし、ママ様が来る頃になると地中に繭を作り越冬する習性を持つようだ。時折坑道内で越冬する事があり、坑内を糸だらけにして居るそうだ。とは言え糸はキレイに採れば金になるし、人を襲わないと言う事で放置されていると言う。
二人はその、坑内に放置されている繭殻を拾って土産にしようと言う目論見だそうな。

「少し調べてみるか…」

《感知》で地下を見て回る。地下四階迄人が住んでるのな。で、その下袋小路になってる所に確かに楕円のでかいのがあるな。十個近く集まってる場所もある。あ、宝箱発見。

「ワーリン、坑内に宝箱があるんだが」

「それミミッキュ」

「ミミッキュ?ミミック?」「「ミミッキュ」」

ミミッキュだそうだ。ダンジョンでも無いのに現れるからバレバレの魔物で、中に何か入ってるけど不用意に近寄らなければ襲われる事も無く、やはり放置されているそうな。

『ミミッキュを叩いて鉄を得る』

無駄な労力は使うな、と言う格言まであるようだ。

「場所は分かった。夕飯迄一狩りして来るかな」

「オレも行く~」

「明日ならワタシも行けるよ?親父が強引に辞めさせやがったし」

悪い親父だな。夕飯迄は軽く見て回り、明日は三人で潜る事で決まった。


 で、地下五階。《感知》が無ければ二度と地上は拝めないだろう。そのくらい入り組んでた居住区を抜けて坑道に入ると、真っ暗で生温い。光の棒を浮かせて照らし、近い所から採りに行く。
真っ暗な中から人が出て来るのである意味ドキドキだ。顔が真っ黒で目だけギョロギョロ光ってんだもん。
袋小路に近付くと、俄に糸が見えて来る。白くてキラキラ。集めたら絹になるのかな?ワームスレッド、ワームクロスって言うんだって。

「お前さん、アレだよ」

「デカいな」

既に住民は引き払っているのか、穴が空いて少し凹んだ繭殻は、長さは一ハーン半から二ハーン程もあり、これだけで服一着出来そうな量だ。それが三つ、岩壁に張り巡らされた糸で宙吊りになっていた。繭殻をキレイに剥がし取り、中に入ってる黒いポロポロを捨てて《収納》した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【無双】底辺農民学生の頑張り物語【してみた】

一樹
ファンタジー
貧乏農民出身、現某農業高校に通うスレ主は、休憩がてら息抜きにひょんなことから、名門校の受験をすることになった顛末をスレ立てをして語り始めた。 わりと強いはずの主人公がズタボロになります。 四肢欠損描写とか出てくるので、苦手な方はご注意を。 小説家になろうでも投稿しております。

西からきた少年について

ねころびた
ファンタジー
西から来た少年は、親切な大人たちと旅をする。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

処理中です...