女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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地下二階

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 朝風呂を浴びに行くワーリンを見送って部屋と自身を《洗浄》し、先に食堂へと向かう。強い酒をあれだけ飲んだのにキューイもキキラもケロッとしてた。ワーリンも何ともなさそうだったし、獣人の身体能力の高さが窺える。俺は《解毒》のおかげで無事だったが、しなかったら死んでたに違いない。

「ワーリン来る迄待つの?」

一晩でフランクな口調になったキキラ。営業スマイルがキラキラしておられる。デカ可愛くなりおって。

「注文だけしとこうかな。彼奴の食えそうな量で適当に頼むわ」

「じゃあ、肉五ソーサー八とスープ三くらいかな」

「それは俺の分含めてか?」

「足りなきゃまた頼めば良いよ」

それもそうか。ギルド証で支払って、水を飲んで過ごしていると湯上りのワーリンがやって来た。

「待たせたね」

「飯は先に頼んであるぞ」

「そうなの?家に行くと思うと食欲出ないんだけどなぁ…」

等と供述していたがしっかりお代わりまで食っていた。冷めても美味しかった焼肉は、謎の技術でとにかく柔らかく、ペロリと六枚平らげてたよ。


「オレの家は二つ下なんだ」

 ギルドがあるのは一つ下で、その下からは坑内だと聞いたのだが、どうやら上の方は鉱脈が枯れていて、空いた坑道に部屋を作って生活すると言う者も多いそうだ。鉱夫や鉱山傭兵は坑道の奥深く迄行く必要があるので通勤時間を少しでも稼ぎたいのだろうな。
長い長い階段を降りて、地下一階。直ぐ隣がギルドだ。買い物するなら両替したいが取り敢えず今は買う物が思い付かないのでスルーする事にして階段を降りる。

「地下なのに風があるのな」

「風の属性魔石だよ。ガスとかが出ると死んじまうからさ、坑道の一番下にお高いヤツが置いてあるって聞いたぜ?見た事無ぇけど」

「よく盗まれないモンだ」

「そりゃあ見張りくらい居んだろ」

「そりゃそうか。家は剥き出しだからなぁ」

地下二階に着いて、明るく照らされた大通りを歩く。側道が沢山あるが暗くて奥は見えない。《感知》で見ると、碁盤の目のようになってたり蟻の巣状になってたりと統一感が無い。これは迷子防止用に態とそうなってるのかな?《感知》無しなら絶対迷う自信がある。

「こっから脇道入るから、はぐれないでね?」

「はぐれたらぐへへな事になりそうだ」

「ぐへへな事しちゃダメだかんね?みんな顔見知りなんだから」

俺がぐへへする側かよ。この区画に住むのは殆どが鉱山傭兵か、その引退者で、相互付与のコミュニティを形成しているのだと。キキラの家もここにあるそうで、キラパパも鉱山傭兵なんだって。

「ここここ。ちっと待ってて。ワーリンだよー、誰か居るー?」

切り出した石の壁に、木のドアを着けたシンプルで堅牢な造りの家だ。壁全体で岩盤を支えているのだろう。ワーリンががなりながらドカドカとドアを叩く。丈夫なドアだな。

「居るぞ~今開ける~」

少し間が空いて、間延びした声が聞こえて来た。パパリンでは無さそうだ。

「下の兄貴だな。良かった」

果たして本当に良かったのかな?俺は中に何人居るか見えてるので敢えて何も言わず、ドアが空くのを待った。

「ワーリンだな。大きくなったな~」

「変わってねーよ」

二ハーン程の高さのドアより頭一つ分デカい犬耳が、ドアの枠に頭をぶつけながら顔を出す。下の兄とワーリンは言うが、上の兄はどんだけデカくなるのか…。

「お客だなー?」

「冒険者のカケルだ」

「まあ入んなー」

「茶も出せないけど上がっとくれ。ただいま~」

「どうも」

下の兄貴が中に引っ込み、ワーリンがドアを潜る。ドアを作り直せば良いのになあ。なんて思いながら俺も中に入る。
部屋の中に入った途端、左右から放たれる殺意に《威圧》を纏わせた。

「お前さん!…って、何してんだよお前等…」

「う、動けっ動けっ」「動かねえよぉぉ」

「ちぃっ、人種一人に何やってんだ」

そうだそうだ。何やってんだ。
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