815 / 1,519
地下二階
しおりを挟む朝風呂を浴びに行くワーリンを見送って部屋と自身を《洗浄》し、先に食堂へと向かう。強い酒をあれだけ飲んだのにキューイもキキラもケロッとしてた。ワーリンも何ともなさそうだったし、獣人の身体能力の高さが窺える。俺は《解毒》のおかげで無事だったが、しなかったら死んでたに違いない。
「ワーリン来る迄待つの?」
一晩でフランクな口調になったキキラ。営業スマイルがキラキラしておられる。デカ可愛くなりおって。
「注文だけしとこうかな。彼奴の食えそうな量で適当に頼むわ」
「じゃあ、肉五ソーサー八とスープ三くらいかな」
「それは俺の分含めてか?」
「足りなきゃまた頼めば良いよ」
それもそうか。ギルド証で支払って、水を飲んで過ごしていると湯上りのワーリンがやって来た。
「待たせたね」
「飯は先に頼んであるぞ」
「そうなの?家に行くと思うと食欲出ないんだけどなぁ…」
等と供述していたがしっかりお代わりまで食っていた。冷めても美味しかった焼肉は、謎の技術でとにかく柔らかく、ペロリと六枚平らげてたよ。
「オレの家は二つ下なんだ」
ギルドがあるのは一つ下で、その下からは坑内だと聞いたのだが、どうやら上の方は鉱脈が枯れていて、空いた坑道に部屋を作って生活すると言う者も多いそうだ。鉱夫や鉱山傭兵は坑道の奥深く迄行く必要があるので通勤時間を少しでも稼ぎたいのだろうな。
長い長い階段を降りて、地下一階。直ぐ隣がギルドだ。買い物するなら両替したいが取り敢えず今は買う物が思い付かないのでスルーする事にして階段を降りる。
「地下なのに風があるのな」
「風の属性魔石だよ。ガスとかが出ると死んじまうからさ、坑道の一番下にお高いヤツが置いてあるって聞いたぜ?見た事無ぇけど」
「よく盗まれないモンだ」
「そりゃあ見張りくらい居んだろ」
「そりゃそうか。家は剥き出しだからなぁ」
地下二階に着いて、明るく照らされた大通りを歩く。側道が沢山あるが暗くて奥は見えない。《感知》で見ると、碁盤の目のようになってたり蟻の巣状になってたりと統一感が無い。これは迷子防止用に態とそうなってるのかな?《感知》無しなら絶対迷う自信がある。
「こっから脇道入るから、はぐれないでね?」
「はぐれたらぐへへな事になりそうだ」
「ぐへへな事しちゃダメだかんね?みんな顔見知りなんだから」
俺がぐへへする側かよ。この区画に住むのは殆どが鉱山傭兵か、その引退者で、相互付与のコミュニティを形成しているのだと。キキラの家もここにあるそうで、キラパパも鉱山傭兵なんだって。
「ここここ。ちっと待ってて。ワーリンだよー、誰か居るー?」
切り出した石の壁に、木のドアを着けたシンプルで堅牢な造りの家だ。壁全体で岩盤を支えているのだろう。ワーリンががなりながらドカドカとドアを叩く。丈夫なドアだな。
「居るぞ~今開ける~」
少し間が空いて、間延びした声が聞こえて来た。パパリンでは無さそうだ。
「下の兄貴だな。良かった」
果たして本当に良かったのかな?俺は中に何人居るか見えてるので敢えて何も言わず、ドアが空くのを待った。
「ワーリンだな。大きくなったな~」
「変わってねーよ」
二ハーン程の高さのドアより頭一つ分デカい犬耳が、ドアの枠に頭をぶつけながら顔を出す。下の兄とワーリンは言うが、上の兄はどんだけデカくなるのか…。
「お客だなー?」
「冒険者のカケルだ」
「まあ入んなー」
「茶も出せないけど上がっとくれ。ただいま~」
「どうも」
下の兄貴が中に引っ込み、ワーリンがドアを潜る。ドアを作り直せば良いのになあ。なんて思いながら俺も中に入る。
部屋の中に入った途端、左右から放たれる殺意に《威圧》を纏わせた。
「お前さん!…って、何してんだよお前等…」
「う、動けっ動けっ」「動かねえよぉぉ」
「ちぃっ、人種一人に何やってんだ」
そうだそうだ。何やってんだ。
0
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました
竹桜
ファンタジー
いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。
だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。
そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。
これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる