上 下
807 / 1,519

余計な知恵

しおりを挟む


 お茶に呼ばれて荷車を桟橋に付ける。お茶を飲み飲み石の面取りをすると、イゼッタの厳選した石は特にキレイなストーンである事が判る。削りながら拾ってたからだな。シャリーのは罅を切り離せばキレイになったが、分割されてしまった。
俺のは小さかったので面取りしたらイゼッタのより小さくなっちゃったよ。

「皆様良い物を拾えたようで良かったですね」

「売ったら幾らになるか、シャリーは分かるか?」

「そこまでは分かりかねますね。私のジェムは皆様のよりは大きくて数がありますが色は薄いですし、お二方のは色は濃いですがストーンですからね」

「商業ギルドに売りに行ってみるか」

「でしたらバルタリンド以外の街が良いですね。場所がバレたら此処が人だらけになっちゃいますよ」

「ああ、あるある。タマリーも言ってたな、穴だらけにされるって」

ってな訳でクリューエルシュタルトに向かう事になったのだが。

「お前さぁん、クリューエルシュタルトに行くならオレも行きた~い」

「俺もー」「ハークに会いたいぜ」「稽古つけてやんぜー」

耳の良いワーリンが聞き付けて声を上げると少年隊も跳ねて来て遊びに行きたいと言う。

「ワーリンは良いがお前等はダメだ。ハークは学園に居るから遊べないんだ」

「兄貴ぃ、ひでぇよぉ…」「泣くぞ?泣いちゃうぞ?」「びぇ、びぇえ」

一瞬で涙目になる兎男子。何処で覚えたそんな技。汚くなければ抱いてなでなでしちゃいたい。泣く子と地頭……ああ、ハークか、余計な知恵を…。

「本当だってば。彼奴は今、学園で魔法習ってんだよ。休みになったら遊ばせてやるから我慢せい」

「ちっ、約束だかんな」「ちぇ~」「泣き損だぜ」

泣いた兎が悪態吐くと、妻が真似てお強請り目線で伺って来る。

「カケル様、私はお連れになっては頂けませんの?」

「旦那さま、私も行きたいです~」

結局、妻三人にメイド三人とワーリンが行く事になった。


 俺とイゼッタも参加して、間引きを終えた翌日。朝食を終えるとワーリンが来たので転移門でクリューエルシュタルトへと向かう。

「久しぶりに帰って来たぜ。やっぱ寒ぃなー」

暖かい季節と言ってもバルタリンドよりは気温が低い。湿度が低いから清々しい感じだ。

「ワーリンは魔装のインナー着てるだろ?」

「上だけね。下は尻尾が出ねぇから着なくなっちまったよ」

そう言えば何時の間にか尻尾出てたな。穴開けたのかと思ってた。

「尻尾が出る迄クルクル折って履いたらどうだ?」

「今度からそうすんよ。じゃあオレはちょっくら行って来るよ」

「では私も後程合流します」

ワーリンとフラーラは此処で一旦離脱。フラーラは必需品の買い物に、ワーリンは実家に顔を出しに行くそうでお土産買いに行くのだと。俺達は商業ギルドへと向かう。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用向きで?」

「こんにちは。今日は買取りをお願いします」

「え?あら、シャリーさんお久しぶりです。また甘い物ですか?」

「今回甘くないですよー」

「あら残念。では、空きスペースを用意しますので少々お待ちください」

何度も行商に来てるシャリーは此処でも顔を売っていたようで、受付嬢の反応が良い。直ぐに四人掛けのボックス席に誘導された。

「大人数で押しかけちゃってすまんな」

「問題を起こさなければ問題ありません。それではお品を拝見します」

四人掛けのテーブルセットにシャリーとイゼッタ、対面に受付嬢と買取嬢が座り、俺達は立ち見で観戦させてもらおう。テーブルに置かれたトレーに、三人の採った石を並べると、対面に座る女達の目の色が変わった。

「ジェムにストーンじゃないですか。もしかして、これを定期の商材に?」

「それは考えてませんよ。偶々石が拾えたので幾らになるのか気になったんです」

買取嬢が眼鏡の魔道具を掛けて鑑定を始めると、板に状態やら値段やらを書き出して行く。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いずれ最強の錬金術師?

小狐丸
ファンタジー
 テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。  女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。  けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。  はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。 **************  本編終了しました。  只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。  お暇でしたらどうぞ。  書籍版一巻〜七巻発売中です。  コミック版一巻〜二巻発売中です。  よろしくお願いします。 **************

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

(完結)異世界再生!ポイントゲットで楽々でした

あかる
ファンタジー
事故で死んでしまったら、神様に滅びかけた世界の再生を頼まれました。精霊と、神様っぽくない神様と、頑張ります。 何年も前に書いた物の書き直し…というか、設定だけ使って書いているので、以前の物とは別物です。これでファンタジー大賞に応募しようかなと。 ほんのり恋愛風味(かなり後に)です。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません

ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」 目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。 この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。 だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。 だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。 そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。 人気ランキング2位に載っていました。 hotランキング1位に載っていました。 ありがとうございます。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!なろう2000万アクセス突破!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

処理中です...