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大事にしてると思ってた

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 打ちひしがれて島へと帰るが特に予定は無く、赤ちゃん達を撫であやして時間を過ごし、食堂へと向かう。
その時、窓際にキラリと光る物に気が付いた。随分前に作ったミスリルの玉っころだった。

「こんなの売れないしなぁ」

価値が無いのでは無く、あり過ぎて攻めて来るからだ。今の俺達なら余裕で返り討ちだが、売り先も無いな。

「カケル様、どうなさいましたか?」

「カケル、ご飯」

赤ちゃん係から解放されたシャリーとイゼッタが俺に追い付いたのだ。

「なあシャリーよ、ミスリルは問題があって売れないとして、売れそうな金属ってあるか?」

「どんな物でも多ければ買い叩かれますが、実用性なら鉄や銅ですね」

「カケル、宝石ならいろんな種類が採れる」

「広く浅く、か。だが宝石なんて価値知らんし、あんなの宝石商が勝手に値段決めてんだろ?」

「よくご存知で。カケル様は石に興味がおありで?」

「カケルは石ころ大事にしてた」

「それは唯の投擲武器だ」

「ホワイトジェムの原石だった」

「宝石投げてたんですか…」

「早く言えよ…。あの頃金無かったんだから…」

「大事にしてると思ってた」

どうやら、俺達が出会った頃に持っていた石ころ投擲武器の中に宝石の原石が混じってたらしい。そうか、宝石か…。

 昼食を摂り、食後のお茶を啜りながら女達に宝石の事を聞いてみる。ラビアン達はそうでも無いが、人種はそれなりに興味がある様子だ。

「私は家が家でしたので宝飾品は身に付けておりました。華美過ぎる物は肩が凝りますので困るのですけれどもね」

「私は着けた事は無いな」

  「宝飾品では無く魔道具としてしか…」
「原石、投げたら怒られた」

「私も一緒に怒られました」

貴族関係者はこんな感じ。

「うちは資産として持ってました!キラキラでキレイでしたけど、焼けると割れたりするんですよね」

「拾っても売ってました」

平民はこんな感じだ。因みに龍種は魔石優位で宝石の価値はだいぶ落ちるが、あれば巣に取っとくと言う。これも娯楽の一つだな。

「宝石掘りでもしてみるかなぁ」

「新しい金策を考えていたのですか?」

「否、娯楽としてな。売り先なんてそうは無いだろ?」

シャリーの問に答えると、商業ギルドなら何時でも買取り可能だと言う。資産としての価値もあり、貴族や教会と繋がるのにも使え、嵩張らず単価が高い。金の延べ棒の次くらいに大事に扱っていたそうだ。

「魔石も高いですが、人にとっては消耗品ですからね」

「我等にとっては弁当箱みたいなものだな」

  「魔法士にとっては道具の一部ですね」
宝石に付与魔法を掛けると、その石の持つ属性に依って付与の割合が増えるのだとか。俺が持ってたホワイトジェムだと聖属性。…使える人は殆ど居ないと言う。

「聖属性は…………ホーリーヒール」

リュネがごにょごにょして魔法を唱えると、光とは少し違う、暖かい光が食堂一杯に広がった。皆怪我等してないから効果は無いが、リアとノーノは凄く驚いていた。

「初めて拝見致しました…」

  「ですね…」
「光魔法とはどう違うんだ?」

「光は回復、聖は…かいふく?」

どっちも回復だろうけどさ。

  「傷を癒しながら成長させるのが光魔法です。聖魔法は傷のあった場所を復元します」
「ある程度でしたら欠損も治す事が出来ると聞き及んでおります」

「カケルさん、教えてあげましょうか?」

「また全身光らせて笑うつもりだな?」

「うふ、うふふふ…」

図星だったようだ。

 午後を過ぎ、川に向かう。洗濯やフェルトを洗う滝壺の下だ。遠出するには時間も無いし、リアやイゼッタが見物したいって言うからな。
この島はミスリル鉱脈があって結構なミスリルを採る事が出来たがこの辺りではどうだろうか。川底は多分だが岩棚で、小石が堆積してる。滝の水流で流れて来た物だから期待薄だな。狙うは滝壺の中だろう。

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