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リュネの戦い

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「リュネ、そろそろ頼むな?」

「はぁい」

 リュネは自分の周りに結界を張り、幾つかのスキルを発動する。目の前で見ていてもかなり気配が無くなった。

「目を凝らしても見えんのですが…」

「うふふ」

「ネーヴェの時もそうだったろ。取り敢えず戦闘に集中しとけ」

 リュネの結界はジョンには見えて無いみたい。結界とキスしそうな程に近付いてるのに気付いていない。階段を降りてトカゲの巣に入ると、ジョンはグレイブを出して集中した。

「デカい奴には触るなよー。多分それでも斬れないから」

「ああ…。行くぜ…」

瞬歩で空に跳び上がり、空を舞うトカゲに近付いて行くジョン。俺は下への階段でも探すかな。《感知》で見回すと、結構広い空間なのが分かる。あのデカい奴は今日は端の方に居るのね。まあ、あんなのが居ればこの広さも納得だわな。トカゲは全部で八十二匹。

「階段、階段…」

「カケルさん、あの辺りでは?」

「あの辺りと言われてもな」

「左側の中の方です」

「左側の中…、ん?あれなのか?」

「亀裂がありますよね?」

「ああ、亀裂は見付けた。階段の形してないのな」

リュネに言われて見た場所は山の中。長くて深い亀裂があって、亀裂自体は気付いて居たが、それが下への通路だとは思って無かったのだ。これ、普通の冒険者はどうやって降りてけば良いんだ?長いロープと楔で以て降りて行くのは良いとして、一日で元に戻るとなると楔やロープは消えてしまう。行き帰りで二セット必要だよな。補給部隊とかそれの護衛なんかを揃えて大人数で当たらないと真面に冒険出来無くなるぞ?

「ジョンが帰ったら行ってみるか」

「そうですねぇ。人の子にしては結構、頑張ってますね」

「俺も人の子なんだぜ?」

「カケルさんは特別ですっ」

空中でドラゴンスラッシャーを決めたジョンが、残心する間も無く次のトカゲに斬り掛かってる。あんな森の上でやってると、後でドロップ拾うの大変だぞ?無駄な時間を使いたくないので《感知》で見付けては《収納》してく。俺の《収納》、結構遠くの物も拾えるようになったんだぜ?

 大体二十匹程殺っただろうか。ジョンがヘトヘトになって帰って来た。

「ぜ…はっ…カケル、悪いっ、何匹か釣っちまった…はぁっ、はっ」

「お疲れ。久々に俺のつまらん戦闘を見せてやろう」

「回復、くれよ…」

飛んで来るのは三匹か。三匹共降りて来る気配は無く、グパッと口を開けてブレスを吐きそうだ。魔力が貯まり、吐き出すのを見計らって三匹を《結界》で丸く包む。勢い良く吐き出されたブレスは見えにくい結界に阻まれて、自らの体を焦がす。自分のブレスじゃ死なないが、驚いてる隙に脳味噌スカスカにして殲滅完了。ドロップを回収して、ジョンに回復を掛けてやった。

「何だ、ありゃ」

「結界だよ。戦うなら森の上は止めような?ドロップ拾えなくなっちまうぞ」

「あ、忘れてたぜ…」

「俺に感謝しろ?スキルで拾っといたから」

「あ、…ありがと、な」

デレたジョン等見たくないのだが。

「トカゲがまだ後五十八匹居るんだが、やるか?」

「あれを後三回、か…」

「やらんなら俺がやるぞ?」

「私がしましょうか?」

「良いけど、デカい奴はやらないでね?アレのドロップは人の子には過ぎた宝だろうから」

「動く山の事ですか?外ではあまり見ませんねぇ」

龍の間では動く山と言う名前で通ってるそうだ。人の子の間での名前は俺は勿論ジョンも知らないと言う。一生に一度見ない龍が見掛けないと言うのだ。きっと人の子では輪廻を巡っても見ないレベルの激レア大怪獣なのだろう。

「では、やっちゃいますねー」

リュネの戦いは俺よりもつまらない。なんせ何処からでもトカゲの巨体を丸ごと《収納》出来るからな。ふーっと息を吐き、数ピルで終了だ。
トカゲが一掃された事に、ジョンはまだ気付いて居ない。



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