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引き時

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 依頼自体は速やかに、滞り無く終わった。が、そう簡単に帰れないのがこの学園である。

「カケルーっ魔力でボクに教えてくれたんだよね!?」

「お兄様、離れてくださいまし!この者はお兄様のカケルではありません!私の伴侶となるカケル様ですっ!」

校長室のドアを開けると可愛いタックルをお見舞いされた。皮装備で無かったら怪我をしてしまうぞハークよ。そしてその横では兄の暴挙を諌める美女児が重みのある言葉を吐く。

「アルア、淑女が声を荒らげてはいけないよ?」

「カケルさんの伴侶ですかぁ、妬けますねぇ~、うふふ…」

「うっ、リュネ様…」

「アルアちゃんがもう少し大きくなる迄、私達のカケルさんですっ」

「は、はいぃ…」

「貴方方、授業が始まりますよ?」

「「あっ」」

校長の一言で我に返ったように見えて、お強請り攻勢に出る二人。

「カケル、また見学しないの?」

「カケル様ぁ~」

「今日は仕事だ。俺は能無しに膝を着きたくないし、伴侶も然りだ」

「カケルゥ…」「お兄様、引き時です」

「今度来る時は何か教えに来てよねっ!?」

おお、流石、良妻は引き際を心得て居られる。諌められて捨て台詞を吐くハークを一撫で。アルアにも撫で撫でして学園を後にした。

「良かったのですか?」

「俺はともかくリュネ先生の指導まで入ったら割に合わんよ」

 天才に限るが、他の生徒まで転移等覚えてしまったら大変な事になるのは目に見えて明らかだ。俺はその点加減して、基本の基しか教えてない。それでもこの国の魔法使いが知らない事だったんだけどさ。


 ビューンと飛んでクリューエルシュタルトに到着し、ギルドで報告をする。受付には嫌われてるから俺用入口から入ってジョンとサブマスに報告。恙無く完遂となった。

「こっちも昼前にはジジババ共が直接来て引き取ってったぜ」

「金払いが良くて良かったな」

「前から言ってあったし、前金で半分はもらってるからな」

こっちは満額一括払いだったが、確かに遠いし半額でも送るのは危険か。

「誰が一番に見せびらかすんだろうな」

「何処のギルドも何かに加工するんじゃねーか?魔道具とか付与とか言ってたしな」

「調査が先でしょうしね…。皆様お茶が入りました」

 サブマスのキッティさんが淹れてくれたお茶を飲み、本日の業務は終了だ。

「そうだ。サブマス、貴女に一つ聞きます」

「え、はっ、はい。お答え出来る事でしたら…」

「おしめを売ってる店を教えなさい」

「え?おしめ…ですか?」

リュネが俺の忘れてた事を思い出させてくれた。助かるが、キッティさんは困ってる。多分人妻でも子持ちでも無いだろうからな。

「リュネ、多分だが、子持ちでないとおしめの売り場なんて分からないと思うぞ?」

「あら。確かにそうですねぇ」

「き、聞いて参ります。暫しお待ちくださいっ」

スタスタと部屋を出て、バタバタと駆け下りて行くのが聞こえる。まぁ、厄災からの頼まれ事だ。無碍にしたら命は無いよな。

「街で主婦の人にでも聞けば良かったな」

「人の子に目移りするからダメでぇす」

そんな理由でサブマスに聞いたのか。流石にリュネの前でエッチラホッチラしないって。家政婦組合の女達には俺の仕事バレてるし、絶対無いとも言えないが。
サブマスが帰って来る間、ジョンに魔剣や魔装を見せびらかして過ごす。頼み事しといて帰る訳にも行かないからな。

「魔剣狩りかー。羨ましいぜクソー」

「まだトカゲの所まで行けないのか?」

「ああ。今はこの通り、装備の新調に重きを置いてる」

ジョンの鎧は多分トカゲの皮だ。輸入した高価な皮を金属鎧の上に貼り付け、強度と抵抗を上げていると言う。これならあのデカい奴以外なら問題無いだろう。武器は何時ものグレイブだ。で、問題は他のメンバーの装備だそうで、魔装では無いが良い物を拾っては、着けてより深く潜ると言うのを繰り返しているらしい。
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