795 / 1,519
引き時
しおりを挟む依頼自体は速やかに、滞り無く終わった。が、そう簡単に帰れないのがこの学園である。
「カケルーっ魔力でボクに教えてくれたんだよね!?」
「お兄様、離れてくださいまし!この者はお兄様のカケルではありません!私の伴侶となるカケル様ですっ!」
校長室のドアを開けると可愛いタックルをお見舞いされた。皮装備で無かったら怪我をしてしまうぞハークよ。そしてその横では兄の暴挙を諌める美女児が重みのある言葉を吐く。
「アルア、淑女が声を荒らげてはいけないよ?」
「カケルさんの伴侶ですかぁ、妬けますねぇ~、うふふ…」
「うっ、リュネ様…」
「アルアちゃんがもう少し大きくなる迄、私達のカケルさんですっ」
「は、はいぃ…」
「貴方方、授業が始まりますよ?」
「「あっ」」
校長の一言で我に返ったように見えて、お強請り攻勢に出る二人。
「カケル、また見学しないの?」
「カケル様ぁ~」
「今日は仕事だ。俺は能無しに膝を着きたくないし、伴侶も然りだ」
「カケルゥ…」「お兄様、引き時です」
「今度来る時は何か教えに来てよねっ!?」
おお、流石、良妻は引き際を心得て居られる。諌められて捨て台詞を吐くハークを一撫で。アルアにも撫で撫でして学園を後にした。
「良かったのですか?」
「俺はともかくリュネ先生の指導まで入ったら割に合わんよ」
天才に限るが、他の生徒まで転移等覚えてしまったら大変な事になるのは目に見えて明らかだ。俺はその点加減して、基本の基しか教えてない。それでもこの国の魔法使いが知らない事だったんだけどさ。
ビューンと飛んでクリューエルシュタルトに到着し、ギルドで報告をする。受付には嫌われてるから俺用入口から入ってジョンとサブマスに報告。恙無く完遂となった。
「こっちも昼前にはジジババ共が直接来て引き取ってったぜ」
「金払いが良くて良かったな」
「前から言ってあったし、前金で半分はもらってるからな」
こっちは満額一括払いだったが、確かに遠いし半額でも送るのは危険か。
「誰が一番に見せびらかすんだろうな」
「何処のギルドも何かに加工するんじゃねーか?魔道具とか付与とか言ってたしな」
「調査が先でしょうしね…。皆様お茶が入りました」
サブマスのキッティさんが淹れてくれたお茶を飲み、本日の業務は終了だ。
「そうだ。サブマス、貴女に一つ聞きます」
「え、はっ、はい。お答え出来る事でしたら…」
「おしめを売ってる店を教えなさい」
「え?おしめ…ですか?」
リュネが俺の忘れてた事を思い出させてくれた。助かるが、キッティさんは困ってる。多分人妻でも子持ちでも無いだろうからな。
「リュネ、多分だが、子持ちでないとおしめの売り場なんて分からないと思うぞ?」
「あら。確かにそうですねぇ」
「き、聞いて参ります。暫しお待ちくださいっ」
スタスタと部屋を出て、バタバタと駆け下りて行くのが聞こえる。まぁ、厄災からの頼まれ事だ。無碍にしたら命は無いよな。
「街で主婦の人にでも聞けば良かったな」
「人の子に目移りするからダメでぇす」
そんな理由でサブマスに聞いたのか。流石にリュネの前でエッチラホッチラしないって。家政婦組合の女達には俺の仕事バレてるし、絶対無いとも言えないが。
サブマスが帰って来る間、ジョンに魔剣や魔装を見せびらかして過ごす。頼み事しといて帰る訳にも行かないからな。
「魔剣狩りかー。羨ましいぜクソー」
「まだトカゲの所まで行けないのか?」
「ああ。今はこの通り、装備の新調に重きを置いてる」
ジョンの鎧は多分トカゲの皮だ。輸入した高価な皮を金属鎧の上に貼り付け、強度と抵抗を上げていると言う。これならあのデカい奴以外なら問題無いだろう。武器は何時ものグレイブだ。で、問題は他のメンバーの装備だそうで、魔装では無いが良い物を拾っては、着けてより深く潜ると言うのを繰り返しているらしい。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる