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冥土の土産

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「すんません、勘弁してください。アレは此方で処分しますから…」

 そう言って頭を下げるジョンに泥をぶっ掛ける馬鹿女。

「マスター、冒険者に諂いへつら 過ぎでヒッ!」

「口を開くな。首を落とすぞ」

何も無い空間から表れたグレイブが瞬く間も無く馬鹿女の首に据えられる。女は身動きする事も出来ず、心胆寒からしめていた。

「落とさないのですか?」

「…此処では、汚れますので…」

「《洗浄》しますよ、《洗浄》うふふ…」

怒ってるなぁ。このままでは街を《洗浄》されかねん。

「リュネ、俺は仕事で来たんだ。苛ついても我慢しろ」

「カケルさぁん…」

「お前も仕事の関係でしか無い癖に舐めた口を聞くな。お前が奴隷墜ちしても賄えない額の取引だぞ?」

「う…うぅ…」

「カケル、リュネ様。ご迷惑かけてすいませんでした!」

再びジョンが腰を折る。職員が、冒険者が、それを見て静まり返る。

「今回はジョンの顔を立てる。次は問答無用で殺す。誓約書を書け」

「…分かった。誰か、誓約書持って来い」

その場で誓約書を取り交わす。リュネも見て、問題無しと判断された。そしてギルマスの部屋へと通された。

「取り敢えず殺すつもりは無いが、マジで気を付けてくれよ?特にリュネ達が居る時はな」

「徹底した筈なんだが、まさかまだあんな口を聞く奴が居るとはな…」

ソファーに掛けてお茶を飲み飲み一息付く。

「カケルさんの顔を立てます。次は無いですよ」

「その時は俺が殺しますので…」

「取り敢えず商談しようぜ。魔石一杯獲って来たんだからさ」

冷や汗タラタラのジョンに助け舟を出してやる。

「そ、そうだな。海竜だったよな」

「手持ちに四十八個あるが、幾つ買える?」

「買いきれねぇなそりゃあ。今買い取りたいって奴は六人だが、それぞれ一つだ」

「真面な相手なんだよな?」

「真面じゃないのは数に入れて無ぇ。魔法ギルドと治療院が一つずつ、今の二ヶ所と商業ギルドの隠居のジジババが一つずつに、学園が一つだ」

「年寄りしか買わんのか」

「若い奴は金持ってねーからな。因みに値段は一律二千万ヤンで頼みたい」

「国宝レベルが二千万か」

「カケル様、個人レベルではこれでも頑張っている方かと」

ジョンの後ろに控えるサブマスの女が口を挟む。それは良い。何で毎回違う女がサブマスなんだ?有能なサブマスを増やせとは言ったけどさ。美人多くね?

「否、相場が分からんだけだから気にするな。初めて獲れたのは天然物でちょー怖かったからなぁ」

「私を治すのに使った石ですね」

「んだ。アレだったらもっと色付けさせる所だが、コイツはダンジョン産だし、こんなもんなんだろう」

「俺が買う訳じゃねぇが、ジジババ共の冥土の土産だ。売ってくれよ」

「どうせハークかアルアの所に持ってくだけだろ」

「…かもな。上手く隠すようには進言させてもらうぜ」


 海竜の魔石六個の代金一億二千万ヤンがギルド証に振り込まれた。ギルドが十軒干からびる金額であると言う。

「所でカケルよう、指名依頼受けちゃくれねーか?」

「何だ?殺しか?」「戦争ですね?」

「んな物騒な事指名依頼で頼めるか!学園に魔石を届けて欲しいんだよ。キッティ、依頼書書いてくれ」「畏まりました」

ここから適当な商隊に運ばせて、野盗に盗られたら大問題だから、だって。俺達なら飛んで行けるし災厄レベルの護衛も居るから確かに確実だな。小遣いレベルの金額だが受ける事にした。

「カケルさぁん、私のランクも上がるでしょうか?」

「リュネ様なら直ぐにBになられますよ?」

いーなー、俺苦労してBになったのに。リュネからギルド証を受け取ったサブマスキッティが機械に通してサッと返す。

「見てください。Bですよ」

「いーなー」

「お前だってBじゃねーか。Aに推薦しちまうぞ?」

「まあ、これだけの品ですから、よろしいかと」

流石にそれは断った。膝を着く相手は此方で選びたいからな。

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