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あれから数日

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 どうも、元の姿に戻ったカケルです。あれから数日経ちました。リュネには少しごねられたけど既に妊娠してるので今回は引いてもらい、ママ様の子供に会いにノースバー大陸に来ています。

「アエー、んまー」

「カケル取っちゃダメなのー!」

ママ様の巣で、絶賛青い子にしゃぶられて、カラクレナイに足を引っ張られてます。千切れそうです。

「そろそろ止めてやれ息子よ」

「ぐぇ…」

ズルりと引き抜かれ、涎でどろどろのぬめぬめになった俺をリュネが《洗浄》してくれた。寒い…。

「先日まで《龍化》してたから魔力が美味しいのでしょうね…」

「男の子に舐められるのはちょっとな…」

「カララが舐めたげるの!」

人型のカラクレナイが抱き着いてぺろぺろチュッチュとしてくれる。尊い。
今この場に居るのは俺を除けば全て龍。母と息子に、三姉妹とその娘、そしてネーヴェだ。ママ様はネーヴェとは、正確には卵帰りする前のネーヴェとは面識は無いと言う。ママ様より歳上さんらしい。

「クリスタルドラゴン等、我が産まれる前の時代の者ぞ。珍しいの」

「もう居ないの?」

「少なくとも会合には来ておらんな。だがその程度の年月で死ぬ程弱くも無かろうて。何処かで寝呆けて居るだけであろうよ」

「ネーヴェは会いたいのか?」

「ん、べつに。たぶん、会いたくないから卵になったんだと思うし」

ネーヴェが元の姿に戻らないのも、溢れた力で気付かれたく無いってのがあるのだろう。忘れてるだけとかの可能性もありそうだが。

「カケー。アルア、ないの?」

「アルアは大人になる為に一生懸命勉強しているよ。お前さんも人の言葉が上手くなったね」

「アルア話す。ワレも、話す」

「ママ様、この子に名はないの?」

「三つも付けたからな。後は自分で名乗ってもらう」

「美しさと力強さを兼ね揃えた良い名を三つも付けられたんだから頑張ろうよママー」

「抱っこさせてくれたら、思い付くやも知れんの…」

「ママ~」

「カケルさんっ!母さんもっ!!」

ママ様の胸板に飛び付く俺を引き剥がし、自分の胸に挟むリュネ。しわわせ。

「…まあ、百年以内には考えようかの」

それ、俺死んでるかも知れんよ?取り敢えず彼の名は坊やと呼ぶ事にして、その日は解散。坊やは人型のカラクレナイを見て人の形になってみたいって言ってたが、ちょっと野生が強いから、人の集落には連れてけないかな…。

 で、クリューエルシュタルトのギルドに寄って、ジョンを縮こまらせる事に成功した。お茶に黒糖を使った焼き菓子がテーブルに並ぶ。涙目のジョンは動けない。

「カケル…カケルくん。彼女様達の魔力を、抑えて貰える事は出来ないだろうか…」

「彼女ですって。うふふふ」

「小島の国の者共はこの程度では汗もかかんぞ?」

「そう言えば確かにな。あの雄が慣れさせたのだろうか」

「ジョンは良い子。いじめちゃメッ」

ネーヴェに窘められて魔力を引っ込めた大人三龍。人型のはお菓子に夢中だ。

「ふう…。ありがとうございます。所でカケル…くん。勇者と魔王の件はどうなった…のかな?」

「口調を戻せ。別に怒ってる訳じゃないんだから」

「そ、そうか。くれぐれもよろしく頼むよ。で、どうなんだ?」

「勇者は召喚前に止めた。魔王は浄化の魔石で力が抜けてる…とまあ、そんな感じだ」

「脅威は去った訳だな」

「暗部に手伝いを頼んだから上への報告は済んでると思うぞ」

「こっちに報告来てねーけど?」

「ギルド程度じゃどうしようも無い案件だからな。気にしても仕方無いべ」

「まあな。Aランクの俺じゃどーにもならん。Sランでも同じだろうがな」

「報告も終わったし、そろそろ帰るわ。美味い菓子を食べたいなら、リュネ達と仲良くしてやってくれよな」

 黒糖は小島の国の特産で、その殆どをリームが作って居るのだ。甘い物を口にしないジョンであってもその重要度は分かるだろう。
遊びに行くネーヴェを残し島へと帰る。これでやっと、ゆっくり出来る。
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