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先っちょだけ

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 焼肉を鱈腹食べた二人はすっかり暗部の仕事を忘れて俺の腹を背凭れにして幸せに浸っている。

「そろそろ報告せい」

「あ、御意」「御意にっ」

こんにゃろめ…。思い出したように正座をすると、それではと報告を始めた。

 先ずは教会から。全体的に防御魔法が掛けられて、多少は丈夫になってるようで、地下室は教会の真下、深さは十五ハーン程であるそうだ。確かに外観からでもちょっとした魔力が見えるな。だがリュネとネーヴェから破壊力はお墨付きを頂いているし、失敗したらリュネがフーってしてくれると言う。
次に国。王を唆したのは宰相だが、大乗り気で口車に乗った王も王だ。近隣の国も婚姻が進んで粗家族だって言うのに大陸制覇からのキネイアッセン侵攻、なんて抜かしよる。キネイアッセンに封印された魔王が納められているのは文献と諜報活動で知ったようだ。
予定については抜かりなく、定刻通りに行うそうで、現在教会内では国中から集められた魔術士達が術式の準備で根を詰めてるそうだ。教会の周りにテントが集まってるのはそのせいか。

「宰相は魔族なのか?」

「分かりかねます。特に軍関係を贔屓してるようでも無さそうでした」

「ある意味重臣ですね」

「カケルさん、それっぽい人は見当たりませんねぇ」

リュネが街の中を《感知》でチェックしたようだが、魔族は居ないと言う。やろうとしている事は屑だが、国を纏めて、魔王を倒して安定させたいと言う気持ちは分かった。方法が間違ってるだけなのだ。勇者を犯さず、戦争利用もしないのであればまだ良かったものを…。

「さて、何時やるか、だな」

「もうしちゃったらどうですか?」

せっかちさんだが俺も同意見だ。屋根の下で寝たいもん。

「そうだなぁ。魔術士も集まってるみたいだし、勇者が死んでから路頭に迷うのは可哀想だよな」

「カケル様、国の方は如何なさいますか?」

「消し飛ばせれば楽で良いが、城を更地にした所で群雄割拠するだけだしなぁ」

「また…、洗脳する?」

「大陸内は仲良くしてるみたいだし、城の中だけやっとくか。リュネ、頼んで良いか?」

「お任せ下さぁい。ご褒美は、先っちょだけ、先っちょだけで良いですので…」

「絶対ダメ。産んでからな」

「んもぉ、イケズです~」

「ご懐妊なされていましたか」「おめでとうございます」

「うふっ、じゃあ早速、行きましょうか」

「リュネ、ねむい…」

鱈腹食って限界を越えたネーヴェはお留守番となった。お前と貴様にリュネが背中に跨って、俺は静かに空に上がった。


「リュネ、結界を頼むよ」

「はぁ~い」

 教会の上空に着くと、リュネに結界を張ってもらう。外への被害を出さない為でもあり、中の者を出さない為でもある。教会周りと城周りに結界が張られ、俺は魔力を溜めて練る。
多少魔法が使える暗部の二人は俺の口に溜まって行く魔力に気分が悪そうだ。リュネが二人にも結界を張ってた。良いだ。
魔術が使える魔術士達も、俺の魔力に気が付いて、教会の中に隠れたり、遠くへ逃げ出そうとして結界にぶつかって右往左往してるようで、悲鳴やら何か言ってると思われる。上空千ハーンでは何も聞こえないし、小さくてよく見えん。

「んばっ!!」

ドゴオオッ!

練習通りにど真ん中に着弾した魔力の塊は、巨大な火柱と共に煙と衝撃波を撒き散らす。結界はやはり何とも無いが、衝撃波で周りの木が百ハーン程根こそぎ吹き飛び、丸く禿げ散らかした更地となった。

「カケルさん、お上手ですっ」

「ちゃんと中まで殺れたかな?」

「大丈夫ですよ。五十ハーンくらい抉りましたし。念の為お水でも掛けておきましょうか」

リュネが結界の中にドバドバーッと水を入れるとグツグツ茹だって湯気が立ち上る。これで生きてたら凄いな。

「ねっ、大丈夫でしょう?」

「そうだな。じゃあ次に行こうか」

「はぁい」

行くと言っても振り向けば直ぐそこだ。


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