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筋トレ
しおりを挟む龍のブレスと言えば火ってイメージだが、実際に吐いてるのを見ると、リュネもネーヴェも色は違えど熱線だった。そしてカラクレナイは薄ら赤い光を放ってる。魔力の色+熱量みたいな感じだと思った。ならば攻撃的=熱量で良いだろう。熱量を持たせるイメージで魔力を練り練り…。
しかし口の中は生暖かいだけで反応が無い。魔力が足りないのかと思い、これでもかと練り混ぜてみたが、口の中のガムが増えるだけで光すら出ない始末だ。
まさか熱量は間違いなのか?俺は考え方を変えて他の力を模索する。質量に思い至ったのは偶然で、うっかり飲み込みそうになった魔力に嘔吐いて、思い切り吐き出してしまったからである。吐き出された魔力が海に落ち、予想を遥かに超える高さの水柱が立ったのだ。
「あら」
「それが旦那様のブレスか」
「げほ、吐き出しただけなんだが、破壊力はありそうだな」
それからは魔力の塊を小さくしたり、数を増やしたり、大きい状態のを《散開》させても撃ってみた。リュネ達みたいに長い事吐いてられないが、単発の威力は俗に言うブレスに近い物になったと思う。
「カケルー、みてー」
カラクレナイが吐き出すブレスとはやはり見た目が違う。キラキラした薄赤いブレスはイチゴ味がしそうであった。それに引替え俺のはくしゃみと一緒に飛んだ唾、もしくは痰だな。
「カラクレナイのはキレイだな」
「娘のは唯の吐息だ。力は旦那様の方が遥かに高かろう」
「そこらの雄龍に引けは取りませんよ。まぁ、当たれば、ですが」
遠距離から痰を飛ばしても普通は避けるよな。斯くして俺は、唾や痰みたいなブレスを吐くデブドラとなった。後は威力や命中精度を増したり高めたりするだけだってさ。
俺とカラクレナイ。二頭の大怪獣を収納出来る程、島の食堂は広くない。なので俺はカラクレナイが食べ終わるまでの間巣の前で待機だ。この姿だとそこまで腹が減らなくなるので特に気にもならんしな。暇潰しに始めた筋トレが捗るぜ。
密度を高めた煉瓦の球をダンベル代わりに持ち上げる。手首の筋力や握力を高めるのにも使えるぞ。地球では重さと小ささに限界があったから硬球並の大きさで鉛以上の重さを出すのは無理だった。スキルを使えば好きなだけ重く出来るし柔らかくも出来る。とても便利だ。
グニグニと握りながら手首を曲げて、腕と肩で持ち上げる。傍から見たら不思議な踊りをしてるように見えるのだろう。テイカが不安気な顔でやって来た。
「カケル様、お食事の支度が整いますが…?」
「そうか。あんまり腹減らないんだけど食べとくかなぁ」
「それで、今のは踊り、ですか?」
「重い物を持ち上げたりして筋力を増やそうかとな」
「はぁ…」
暫くしてカラクレナイも飛んで来た。俺のスペースが出来た事を意味する。
「カケルー、ごはんなのー」
余らせるのも勿体無いので食べとくか。カラクレナイと場所を代わって食堂に飛んでくと、ネーヴェに俺の巣の付与を解いてもらうようお願いした。カラクレナイも彼処で寝ると言うので時間を戻したい。ネーヴェはうぇ~いと付与を解きに行ったが、大怪獣二頭が寝るだけのスペースはあるのかな…。
「カケルさん、寝るなら姉の巣に行きましょうか」
「確かに彼処に二人は狭いよな」
「それもありますが、彼処なら寝ながらでも魔力を溜められますからね」
気が抜けて魔力が漏れても彼処なら問題無い、か。まだ巣の中まで見た事無いけど、ミーネが寝られる広さなら俺も寝られる筈だ。
ガリガリと骨付き肉を平らげて、火山島へとやって来た。ミーネ曰く、穴が空いてるから直ぐ分かるそうだが、暗くなってるおかげで《暗視》が効いてても分かり辛い。《感知》を使って空間を見付け、そこから辿って入口に辿り着いた。
うん、暑い。火山島の地下だもんな。それにガスも出てるかも知れない。《耐性》マシマシで部屋に入った。
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