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日本チックな対応

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 店は多少混んでいたが四人掛けのボックス席が空いていて、そこに案内された。客層は冒険者も居るし、商人風のも居て人種も様々。服装も小洒落た感じなのでそこそこ良い店なのだろう。獣皮紙で出来たメニュー表を持って来るウェイトレスも美人さんだ。

「バジャイは何が良い?」「肉!」「私も~」

「では私も。カケル様もお肉で良いですよね?ではそれっぽく注文しますね」

肉。何の肉なのか。先ずはそこだと思うのだけどな。ウェイトレスを呼び付けて色々注文するシャリーが決定権をもらえなかった俺に金をせびる。先払いなのは万国共通か。
テーブル一杯に並ぶ料理を皆でシェアして食べてお腹一杯。バジャイの見立て通りしっかりとした味付けで素材の味も良く美味かった。それなりの値段はしたけどな。
食事を終えて、シャリーにおすすめの宿を聞いて来てもらい、眠がるイゼッタとバジャイを抱えて店を出た。

「カケル様、宿は少し歩くそうですが良い所みたいですよ」

「人攫いと思われないようフォローよろしく」

 大通りを街の中心方向に進む事数リット。おねむな二人を抱えて着いたのは通りに面したこれまたそこそこ良さそうな外観の宿だった。宿の奥に煙突が建っているのは風呂が併設されてるのだろうか。とても気になる。縦横の柱には装飾か、それとも防腐の為なのか赤く塗装され、焦げ茶色の壁にアクセントがなされていた。
門扉の前には守衛が立ち、客を案内すると共に防犯対策もなされている模様。

「カケル様、入りますよ?」「あ、はい」

シャリーを先頭に玄関を潜る。俺はバジャイを腕に座り寝させてる上にイゼッタをお姫様抱っこしてるので交渉は全てシャリーにお任せだ。ちっちゃくてもメイド服なのですんなり受付を済ませていたよ。
大部屋が六人用しか空いてないと言うのでそこに決めると、従業員に四階の角部屋に案内された。

「此処って風呂があるのか?」

「はい。お部屋をご利用のお客様はお好きな時間にご利用頂けます。施設の内容はお部屋の中に冊子をご用意してございますので、其方を一読下さいませ」

何とも日本チックな対応だ。まさかとは思うが、勇者召喚とかしてるしなぁ。だがそれならマヨとか味噌とかあって然りなんだが…。後は米な。今の所それ等は全然見た事無い。ホルストの餌にお団子になる種はあったが食べる風習も無かった。まだ誰も来てないのか、それとも外国人なのか。

 部屋は少しゴージャス感のある絨毯と壁紙の張られた大部屋で、一人用のベッドが六つ、両端の壁に三つずつ並んでいた。折角の部屋なのにこれは頂けない。従業員が引き上げると直ぐに《収納》し、雑木マットを厚く敷いたらおねむさんを寝かし付ける。明かり取りは窓だけだが、此処には小さなガラス板が張られた窓があり、開かれた鎧戸から日差しが射し込まれている。夜用の明かりはオイルランタンだ。夜はこれで移動が出来るようだな。

「カケル様、これから如何しますか?奥様もバジャイさんもおねむですし…」

「取り敢えず昼寝すっかな。その後で街を一回りして、買い物は明日でも良いと思うぞ?」

「そうですね。私も少しお昼寝します」

俺も服脱いで寝た。着たまま寝たらミスリル線が曲がっちゃいそうだもん。寝る時用の服、欲しいなぁ…zzz

 褌一丁で寝ていたら、バジャイが捲ってペロッてた。寝惚けて食ってる訳じゃなく、ちゃんと起きてレロレロしてたよ。優しく頭を撫でてやる。よしよし。

「カヘルはま、ひもちい?」

「気持ち良いよ」

「おまはふいは」

「カケル、ご飯」

隣に居たイゼッタが通訳する。どうやら俺を起こす為にぺろぺろしていたらしい。これから飯だと言うのにアイツを起こしてどうすんだ。致したいけど我慢して服を着る。ミスリル線でガードされてるので少しふっくらした程度で抑えられていた。良い仕事してますねぇ。



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