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カチコミ
しおりを挟む勘違いの雄龍に、俺とママ様の関係を簡単に説明した。
『親子の契を結んだもんでな』
『ならばこれ以上戦う訳にも行かぬか。今勝ったとしても、後々殺られる事になりそうでな』
『魔石は迷惑料だ。取っといてくれ』
水球に齧り付き、魔石を握り込んだ雄龍がゆっくりと遠ざかる。ジョンの所に戻ると驚いた表情で握り込んだ豆を零してた。
「お、おい。何で帰ってったんだ…?」
「アレ、トカゲじゃ無かった」
「は?」
「雄龍だった」
「はああああ?」
驚くのも無理は無い。俺も少し驚いたもん。
「俺のトカゲ探しってリュネ達雌龍を基準にしてるからさ、魔力の低い雄とか、クソ強いトカゲと勘違いしちゃうのよ」
「…最初はトカゲだと思ってた…ってぇ訳か」
「龍と戦って生き残ったよ!やったね!」
「つ……疲れるぜ…、特に精神的になっ」
「冒険譚のネタが増えたな」
「全くだよ!龍と喋来る仲間の件とかどう話しゃ良いんだ」
「き、休憩の提案したら人の言葉で返して来た…とか」
「お前上手いな。物書きになれるぞ」
豆ばかりで肉が食いたい!とネーヴェみたいな事を言うジョン。俺も肉か魚が食べたいのでシューンシューンズデーゲンの街に向かう事になった。因みに、一生分の経験になったからと、トカゲ狩りは中止になった。
「あ、俺カケルのギルド証しか持ってねえ」
「良いじゃんカケルで。この街でお前を知ってるのはあの二人の関係者だけだろ」
妥協して、門兵にギルド証を見せて街に入る。自然な流れで冒険者ギルドに入るジョン。お前のギルドじゃ無いんだが、良いのか?カチコミと思われても知らんぞ?
「いらっしゃいませ…。もしかしてジョン様ですか?」
「ご無沙汰。近くに寄ったから顔出しに来た」
カチコミと思われなくて良かった。周りの荒くれ共もジョンだジョン様だとヒソヒソざわざわ。遠くても隣町。名前と顔は知られてるか、Aランクだしな。
「マスターにお声掛けして来ますので、暫しお待ちをっ」
受付嬢が返事も聞かず、階段を上がって数リット。帰りたいのをジョンに掴まれ、もう殺すしか無いって所で戻って来た。
「マスターの支度が出来ました。此方へどうぞ」
「ほらカケル、行くぞ。此処のマスターは女だぞ?嬉しかろ」
「…絶対罠だな」
背中を押されて歩き出す。まあハゲマッチョよりはましか…。
ギルマスの部屋に通されて、確かに女の部屋だと思った。
「ジョンさん、いらっしゃい。お連れの方も掛けてゆっくりしてね」
「おう、久しぶりだな。こんな事でも無ぇと中々外に出られなくなっちまったぜ」
お婆ちゃんでした。にこにこと笑みを浮かべてお茶の用意をして居られる。腰が曲がり、杖を突いて歩いているが、そんなんで荒くれ共を御せるのか?お茶の乗ったトレーを持つのも大変だろうので手伝ってやった。
「あらあら、ありがとうねえ」
お茶を並べて席に着き、三人でお茶を啜る。ふぅ~…。
「所でジョンさん、今日は何をしに来たの?ダンジョンで遊んでるって聞いて居るわよ?」
「これでもちゃんと間引きとかしてるんだぜ?今日は此奴とトカゲ狩りに来たんだが…」
「トカゲ?聞かない名前ね」
「レッサードラゴンの事をトカゲって呼ぶみてぇでな」
「レッ…。ジョンさん、無理はダメよ?」
穏やかな顔に汗が垂れる。ドラゴンと聞けば誰でもそうなるか。
「無理なもんか。ダンジョンのトカゲは一人でも狩れんだよ」
「あら、そうなの」
「けどよ、外のトカゲを狩らねぇとさ。大手を振ってAランクを名乗れねぇんだ」
「そんな事しなくても、貴方にはその実力はあるのよ?」
「否、無かった。トカゲに辿り着く前に武器も防具も使いモンにならなくなってた」
「よく戻れたわね…」
「正直舐めてたよ。武器もスキルもカケルに世話になったんだ。そもそもカケル達とじゃ無きゃ潜れても無いしな」
「貴方がその、カケルさん?お強いのね」
笑ってそうで笑ってない。リュネがよくやるヤツだ。
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