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トカゲだと思ったら龍でした

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「バレると思うけどな」

さも当然のようにジョンは言うが、いやまさかそんな。

「そうか?」

「お前の気配はよく見たらカケルって分かんだよ。あのお二人はそう言う勘が鋭いから、バレると思うぜ?」

天才兄妹だしなぁ、そんな事もあるやも知れん。そうなるとブルランさん辺りも気付きそうだ。

「そうか…。出会ってしまったら白状する、か」

「そろそろ街が見えて来るぞ」

山と山の谷間、天然の防塞であり、水攻めに遭いそうな地形にシューンシューンズデーゲンの街はあった。日本のイメージの盆地って、冬は寒く夏は暑いのだが、此処はどうだろう。

 改めてトカゲを探す。街よりも北に居るようで少しホッとした。衛兵等に見付かってもつまらないので、街を大きく迂回してトカゲの元へと飛んで行く。

「何だ、寄らないのか」

「まだ昼飯には早かろう」

「朝飯もまだ何だが…」

「食って糞してから来いよ」

おやつの炒り豆を出して食わせる。肩を組むのも面倒なので荷車を出して乗り込んだ。

「ポリポリボリポリポリサクポリポリ…」

静かになったジョンを放置し暫し飛ぶ。空中に点が移動してる。あれだな。制空権を取る為に高度を上げる。

「うっ、耳が…」

「ほれ、水飲め。トカゲが居たぞ」

「ああ、結構遠いが飛んでるな。…こっちは何時でも行けるぜ!」

今回の得物はグレイブか。トカゲ相手なら長く伸びるそれが良いだろうな。出入口からはみ出して…、あれ?持ってたっけ?マジックバッグでも拾ったのか?

「ジョンくんや、やる前に確認して来るわ」

「ん?どう言うこった」

「トカゲだと思ったら龍でした、なんて事になったら禿山になっちまうからな」

「お、おう…」

浮かせた荷車に豆食うジョンを残し、俺は一人トカゲに向かって飛んで行くと、問答無用でブレス吐いて来た。龍語の挨拶も返してくれないし、トカゲで決まりだ。ブレスを避けつつ釣り成功。荷車の天井に乗って待ち構えるジョンがグレイブを超長剣に変えていた。

「ふんぬぁっ!」

「ギュアアアアッ!!」

トカゲ迄三百ハーンはあろうかと言う距離を一瞬で詰め寄って横薙ぎ一閃。俺でも目で追うのが精一杯だ。だがトカゲは野生の勘か、首を大きく逸らして薄皮一枚程のダメージに抑えたようだ。この程度の傷なら直ぐにでも治ってしまうだろうな。
逸らした首を降り直し、ブレスを横薙ぎに吐き出した。水平軸に居なかったら山が傷付いてる所だったよ。ジョンはと言うと、高度を上げて躱してた。よしよし、分かってるじゃないか。
此奴はジョンに任せても良さそうなので、《感知》を張り巡らせて増援の確認等を見ておこう。
…とは言ったが、中々仕留められないで居る。ジョンの攻撃は直線的だが範囲も広く、当たると死ぬような攻撃はしっかりと躱している。トカゲの方も同じで、ジョンの攻撃は掠る程度で抑えてて、高度を取られると敢えて下に向けてブレスを吐こうとフェイントまで掛けて来る。

「ジョーーン、疲れたかーー?」

「んまぁだまだあああっ!」

『トカゲーー、疲れたかーー?』

「グキャキャー!」

まだまだ頑張れるようだ。

ん?

頭が良いのは経験次第で良くなるから置いといて、声が小さいし、今のは龍語、だな。

「ジョーーン、休憩しよーぜー。お前も少し休めー」

「おまっ!休憩って!」

「グ…グルル…」

距離を置き、二人が停滞したので荷車と共にジョンの所へ向かい、飲水タイム。そしてトカゲに近付いて、ウォーターでデカい水球と大きめの魔石を浮かせた。

『お前龍じゃねーか』

『トカゲと言われて気分の良い龍は居らん』

小声で話すと小声で返して来た。

『最初は普通に挨拶したろうが』

『そうか?聞こえて居らなんだぞ』

『そりゃあブレス溜めてたからだろ。俺達は雪を降らせる雌龍に許可を貰ってトカゲを狩らせて貰いに来てたんだ。子持ちの青い龍だ。知ってるだろ?』

『親族では無いが知っているぞ。人の子の癖に匂い迄付けおって…』

龍殺しかと思ったんだって。雌龍相手は無理だよ絶対。
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