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納骨室

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 ウラシュ島に戻り、その日はリュネと寝た。バックで…とも思ったが、人死も出てたし、色々考える事もあり抱き合って考えていたら何時の間にか眠ってた。
朝になり、収穫のリームと行商のシャリーが起こしに来た。起こしに来た訳では無いのだが、転移門がリュネの部屋にあったので起きてしまった。

「おはようございます。起こしてしまい申し訳ありません」

「否、やる事があったから丁度良いさ」

「主様、被害は如何程か」

「兵士が二人に、強制労働者の男が三十七人だそうだ。畑と水が略奪されたので荒れてるはずだ。済まないが宜しく頼む」

「頼まれよう」

「略奪された野菜はリュネが持ってるが…、寝てるので後にしよう。島で使っても良いしな」

「リーム様。葉物だけでも揃えたいので宜しくお願いします」

「うむ。では行こうか」

「俺も行くよ。墓とか火葬場を作んなきゃ…」

リュネにキスして外に出る。まだ明け切らぬ空の中、三人で街の出口に向かった。

「荒らされてはいるが、この程度で済んだのなら作付けには問題無いな」

リームはポツリと呟いて、空に上がって行った。シャリーはその場で待つので、俺は壁の西沿いへ向かう。人の足で十リット程の場所を火葬場と決め、そこからは奥は墓所として使おうと思う。まあ、広過ぎて使い切れないだろうがな。
 耐火煉瓦で土台と横に空いた箱を作る。それを五つ横に並べる。蓋は押し込み式に、煙突は一ヶ所に合流させて、雨避けのカバーを設置した。焼き窯に遺体をそのまま入れる訳には行かないので鉄の箱と蓋、火かき棒や火箸、塵取を作っておいた。鉄箱には火の属性魔石をたっぷり使う。ミズゲルの核を使ったが、ダメなら作り直さねばならん。
鉄箱を置く台や骨壷を置くテーブルも必要だった。土台を盛り上げたり、木箱を作って済ませる。
焼き窯の周りには煉瓦の壁と屋根をツーバイフォーで組み立てて、入口に軒を作る。ドアも窓も無い火葬場が出来上がった。欲しければ後で作れば良いだろう。
最後に骨壷と蓋を三十九セット作る。俺の魔法じゃ釉薬は掛けられないので石の壺にした。男ばかりなので少し大きめだ。
 骨壷を仕舞い、今度は墓所を作る。畑の土を十×五十ハーン、壁に沿って深さ一ハーン程《収納》し、三×五十ハーンの納骨室を二つ設置する。雨の少ないウラシュ島だが水が入らぬよう地面より壁を高くし、水抜き穴を開けた。間は道とするので煉瓦で埋める。上蓋は石の一枚板に五十×五十ドンの穴を開け、浸水防止の高さを出して一回り大きい蓋状の石版を乗せた。これを二ハーン間の二列で五十ヶ所。
正直広く作り過ぎた。二つの納骨室を作り追えた頃にはリーム達は移動して、朝食の時間はとっくに過ぎてしまっていた。

「お疲れ様です。カケルさ~ん」

「リュネ、起きたのか」

「朝ご飯食べてないのでしょ?」

「コレはやらなきゃならん仕事だったからな…」

「カケルさんの分、取っておきましたよ。一緒に食べましょう」

リュネも食べてなかったそうで、悪い事をした。火葬場の横にテーブルと椅子を出して食事をしていると、マシュエルとボーデンフェルトがやって来た。

「カケル殿、その建物は?」

「火葬場と、奥にあるのは納骨室だ」

「石が敷いてあるのう」

「中に部屋があって骨壷を納めるんだ。所で遺体は何処にある?」

「兵士は我が、強制労働者達は、すまんが風呂に水を張って浸けている」

防腐処理の無いシルケでは、直ぐに埋めるしか無い。しかし外には敵、街の中では穴を掘る訳にも行かず、苦肉の策で水に浸けたと言う。食肉の保存にも使われるやり方だな。

「それで良い。遺体を焼けるのは五ヶ所だ。五人ずつ運んで来てくれ。それと、これを風呂場に置いてほんの少し魔力を流しておいてくれ。浄化の属性魔石だ」

「…心得た」

「マシュエルは兵士の遺族が居るなら連れて来てくれ。最後の別れだからな」

「そうだの。では行こうか、ボーデンフェルト様」

二人の後ろ姿に寂しさや悲しみが見えた。
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