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尻ペン百回

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「では、私から離れないようにして下さいね。迷子になると死にますので」

「「え?」」

いきなり二人をビビらせるシャリー。確かに迷子は困るが…。

「?子供二人で迷子になって、生きて行けると思ってますか?」

「え、ああ、そっちの意味なのね」「びっくりしたー。モンスターに食べられちゃうのかと思った」

「あ、ドラゴン居ますから言葉遣いには特に気を付けて下さいね。食べられはしませんが」

「「え…?」」

「怖がったりして悲しませると本当に死ぬかも知れません。私程度では庇い切れませんので、くれぐれもよろしくお願いします」

「か、カケル様ぁ…」

「カラクレナイを泣かしたら俺も許さん。尻ペン百回だ」

「カケル、めっ」

怒られちった。ネーヴェは家に帰る序にカラクレナイを紹介してやると言って、部屋の時間の流れを調節すると、皆で転移門を潜って行った。尻ペンなんてする訳無いだろ?しても尻ペロだよ。


 作り置きの料理を《収納》し、散歩がてらに外に出た。俺に気付いた主婦達がヒソヒソやっている親の世話が…だとか、無駄毛の処理が…とか、やはり主婦は忙しいのだな。食料品店に顔を出し、樵の女将とティータにも挨拶をして、やる事無くなった。昼前の店屋が暇な訳が無いのだ。外に出て更地の様子等観察する事にした。
門を出て、まだ疎らに雪の残る更地だが、土の上からはチラホラと緑色が伸びている。日当たりが良いからだな。それを野良っぽいゾーイやラデュっぽい兎みたいなのが食っている。草食からしたら天国のような所だな。人に狩られちゃうだろうけど。轍の出来た街道を歩く事五キロ、途中から浮いて移動したりしてたけど、漸く橋の袂に辿り着いた。ハイキングには丁度良い距離だな。
橋の向こう側からゾーイ車が列を成して来てるので水が溜まって濠となった元壕を眺めて過ごす。魚放さないと蚊みたいなのが湧くかも知れんなぁ。

「もしやカケル殿では?」「え!カケル!?どこどこ?」

可愛い声が俺を呼ぶ。何となく見た事あるようなゾーイ車だと思ったら、ハーク坊っちゃまの一行でしたか。

「ここに居るぞー」

両腕を上げてアピールすると、客車の中からきゃわわたんな男児が飛んで来た。もうそこ迄到達したか。

「カーーケルーーー!」

「上達したなハーク」

正面からのがぶり寄りをもろ差しで受け止め、そのまま鯖折りにして頬擦りスリスリ。メイド等がキャーキャー言ってるが、何も疚しい事はして無いぞ?ペニスケに跨ってるけどな。

「学期末の休みになったから帰って来たんだ」

「上の級になる訳か」

「後二年で卒業だよ」

次の年度で五年生だそうだ。留年無く卒業して十二~三歳。そこから二年過ごして成人となると言う…って話を客車の中で聞いた。ブルランさん、何時も追い出してしまって済まない。
そんなこんなで降りる機会を失ってハーク邸に着いてしまった。

「今日は泊まって行くよね?ねっ?」

キラキラした上目遣いにメイドがキュンキュンして居られる。俺もだが。

「薬を与えた者の経過観察中だから、途中で出ても良いなら泊まっても良いぞ」

「カケルって薬師も出来るの?」

「否、今回は師匠の指示の元作ったに過ぎんよ。教えが無ければ破裂する事になってたさ」

「は、破裂…」「一体ナニが…」

視線の先がアイツに向いてるメイド等だが、今回は正解だ。
ハークに背中を押し込まれ、玄関を潜り、客間でお茶を振る舞われた。獣人をダメにすりゅヤツだ。美味い。

「坊っちゃま、用意が整いました」

ブルランさんが整えた用意は木製の武器だった。それが除雪した庭先で箱に刺さって置いてある。

「カケル、しよ?」

メイド等が勘違いする台詞を吐いて木剣を構える。ハークは少年隊にボコボコにされてから武器格闘に目覚めたらしいが、俺こう言うの、やった事無いんだよな。木剣を抜き取り軽く振るう。バットより軽いから取り回しは簡単だな。






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