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動力

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 同じ車両を二台作って取り敢えず充分だろう。人形を踊らせてキャッキャウフフしてる子供達の元に歩み寄った。

「ネーヴェ、楽しんでもらえて良かったな」

「あ、カケルー」

「ちょっと手伝って欲しいんだが、良いか?」

「ん。ちょっと手伝ってくる」

「「いってらっしゃ~い」」

行くと言っても目と鼻の先だよ。輸送用車両を見せて、動力を頼む。

「どんな形にしよう…」

バスみたいに自動運転にすると、間違って外に出てしまいかねないと言う。

「形は俺が作るから動力部だけ頼もうか」

「ん」

一人乗りの箱を作り、正面と後部は上半分、左右は縦半分で車両側を切り取る。そこに椅子となる、横板を付けた。そこまでは良い。問題はステアリングだ。構造は簡単だけどシルケの鍛冶屋に作れるのかな?取り敢えず作ってみよう。
鉄でステアリングナックルを作る。トの字にした鉄の棒の先端に直角のシャフトや穴を開けて行く。
そしてステアリングボックスに仕込むウォームとウォームホイールを作り、タイロッドとナックルアームを接続した。ウォームとウォームホイールがズレないように箱詰めし、少し停滞。

「油が居るな…」

「トカゲの脂身ならありますよ?」

「贅沢なグリスだな。脂だけ取り出せるか?」

「少しお待ち下さいねー……はい。出来ました」

少しも待ってないのだが、水差しに入った油を出してくれた。箱の中や金属同士が当たる場所に油を塗って、二枚の鉄板で挟んで留めた。雑木で作ったステアリングホイールをウォームホイールから出たシャフトと繋いでグリグリ動かす。中々良い感じだ。雑木の車輪を付けて可動部を確認しながら運転車両に取り付けたんだが、運転車両が四角くては曲がりにくいので少し手直しする。
輸送用車両の前部と運転車両の後部に三角を作って穴を開け、棒を刺して接続する形にした。

「……動力じゃ無かった」

そう、これは操舵機構である。しかもサスが無いので非常に揺れるに違いない。

「車輪を回すの?」

「ああ。だが走る、止まるの命令をする部分が無いんだ」

「問題ない」

ないの?ネーヴェは魔道車も作ってるし、何とかなるのか?ネーヴェが運転車両を浮かせてぐにゃぐにゃっとしたら元の姿に戻った。

「できた。魔力でうごく。命令したら走ってとまる」

「マジかよ」

「マジ」

試しに輸送用車両と接続して乗り込んでみる。雑木の椅子が柔らか~い。魔力を爪の垢程注いでやると、いつの間にかハンドル中央にくっ付いてる魔石がぼんやり光った。いきなり走れと念じると急発進しそうなのでゆっくり前進…。

「おおお!」

「乗ります!乗りまぁーす」

一旦停めて、リュネにネーヴェ、子供達も乗り込んではよはよせがまれる。

「では行くぞーしゅっぱーつしんこー」

「「「「しんこーーー」」」」

ゆっくりと走り出した移動用車両が徐々に速度を上げて行く。時速三十キロ程だろうか。普段に比べりゃてんで遅いが乗客達はキャッキャしてるのでこの程度が良いだろう。短距離であれば、がっつり走れば抜かれる速度だが、三十キロハーンの距離ではそれも出来まい。
大体三十リット走った所で畑の真ん中。後々居住区にする為のちょっと広めの舗装された広場に到着。ゆっくり旋回して戻ってみたが、これは地もピーには難しいな。畑を少し潰して舗装を広げ、余裕を持って回せるようにしたよ。

「すげー!カケルすげー!」「ネーヴェちゃんもすっげー!!」

 入口前に帰って来て、子供達大はしゃぎ。兵士も騒ぎを聞き付けやって来る。

「カケル、今度は何攫って来た?」

「ちっゲーよ!これ見ろよこれ!すっげーんだって!」

「ボーデンフェルトに頼まれて作ってみた。ここから門まで一オコン程で行ける、馭者含めて十六人乗りの移動用車両だ」

「「「なんだってー!」」」

そう言えば、此処も少し広げないと車を回せないな。この辺の畑は刈り尽くされてるから心置き無く整地出来るよ。車を浮かせてロータリーを作った。
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