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アヒャンヒャン
しおりを挟む煎り豆はほんのり甘いから女達の伸びる手が止まらない。
「んん。サクサク」
「旦那さま、これ、保存食としても良さそうですねっ!」
「腹に溜まるし、良いかもな」
女達の手が止まる。昼飯を腹一杯食った後だからな、気になるのだろう。
「確かに、種は腹持ちが良いと街の女達も言っていたな」
「あっちはソーサーが無いからな」
「私達…、ソーサーも食べてしまいました…」
「さんごぶとりしちゃいますー!」
まだ産前だろうに。残った煎り種は袋に入れて《収納》し、あっちでも食べさせてみようと思う。
「皆様、遅れました」
テイカが起きて来たので遅い昼食を摂らせ、俺とバジャイは居間に向かう。リュネとネーヴェ、リームも一緒に街に行くと言う。断る理由も無いので転移門を潜った。
ドアを抜けると真っ暗な部屋。多分龍の巣のどれかだろう。光の棒で照らしながら部屋を出て、外に出る。
「なわばり!何で!?」
「凄いよな。あっと言う間に家から街まで着いちゃった」
縄張りに帰って来て元気を取り戻したバジャイは自分の巣で寝るようだ。リームは農作業をすると言うのでリュネとネーヴェを連れて街へと向かう。
こっちも昼食を終えてまったり休んでる者が多い。
「あ、カケル様!帰って来たんだね」
俺達を見付けて主婦等が集まって来た。乾燥野菜は料理しても味に問題が無いだとか、焼き塩のおかげで薄味から解放されたとか。包丁の増産はよ、なんて話で時間を過ごし、午後から働く女達は仕事に向かって行った。
「モテモテですねー、カケルさぁん」
「生活基盤を作って安全を確保したからな」
「カケル殿、戻ったか。リュネ様も先程は…」
ボーデンフェルトは雌龍に様を付けるようになったのか。何れ龍王の国になるのだから今の内に下に付いとくって事かな。
「何かようですか?雄」
名前呼んでやれよ…。
「う、うむ。カケル殿に移動用の乗り物を頼んでいたのだが、進展を聞きに参っ…りました」
威圧すんなよ…。
「ネーヴェに動力部を作ってもらおうと思ったんだが、先日は他の用があったみたいでな。用が済み次第動力部は頼む予定だ」
「うむ。急ぎでは無いが頼んだ。人の子では門まで移動するだけで訓練みたいな物だからな。では、これで…」
尻尾を巻いて逃げ出すように、ボーデンフェルトは詰所方面に走って行った。そう言えば彼奴、尻尾無いけどアヒャンヒャンしながら仕舞ったのだろうか?雄の性感帯なんて知らないので何とも分からんが。
それにしても、ネーヴェは何処行った?女達に囲まれてる隙に行方を晦ましたようだが、また子供と遊んでるのだろうか。取り敢えず、動力部は後付けに出来るように車体を作ってしまおう。
リュネを伴い街の出入口へと向かう。ああ、子供とネーヴェが居た。球体関節人形を見せびらかして何やら遊んでるっぽい。あっちに行くと戻れなくなるので先に仕事だ仕事。
輸送用車両の幅は街道の半分以下にする。擦れ違いで事故等起こしては馬鹿みたいだからな。
六×三×二ハーンで雑木を箱組し、正面は上半分、後部は完全解放で切り取る。横面に幅六十ドンの板をくっ付け椅子とした。通路の天井にはつり革の代わりに丸棒を正面から後部に掛けて付けようとして、後部全部切ったのを後悔したが丸棒をL字にして問題解決。
車輪は下でなく横に付ける。車体の長さでコの字に組んだ板を土台とし、鉄のシャフトを通した車輪を三枚。シャフトの端には四角い鉄で輪止めをし、輪止めの収まる土台基部に上向きの空間を設け、バネを仕込んだ。所謂バネサスだ。丸い金属板をグルグル切った形にしたが、この世界の鍛冶屋に作れるだろうか?皿バネとどっちが良いか迷ったがきっとどっちも大丈夫だろう。車体に付けて完成とした。
フル装備の男を百ナリと見立て、百ナリの鉄塊を載せて行く。左右で十個、通路に六個。千六百ナリも乗ったら十二個あるバネもペタンコになるわな。十五人乗りとした。
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