上 下
598 / 1,519

調整役

しおりを挟む


 ネーヴェに雑木の塊をあげて暫くして、包丁のバリを取り、形が出来た頃、家具を作り終えたネーヴェが二階から飛んで来た。

「でーきたー」

「お疲れ様。この円盤をツルツルにしてくれるか?」

「んー、ほい」

なんと簡単にこなしてしまうものか。一瞬でサラサラしていた煉瓦がツルツルに変わった。研ぎ出すと黒いのが出るので研げているのが確認出来た。面研ぎは時間が掛かるし、包丁の増産をやってしまおう。サラサラ円盤をもう一台作り、今度は沢山の包丁を削り始める。

「カケル様、そりゃあなんだい?」

暇を持て余した主婦や移住者が見物に来た。畑仕事が無い午後の主婦は暇なのだ。作っているのが包丁と知って目の色が変わる。これは家庭用にも作らにゃならんパターンか?切り出しただけの刃の無い鉄板を見たり持ったりして使い心地をシミュレートしてるよ。

「ナイフに比べると身がだいぶ薄いねえ。これで野菜を切るのかい?」

「そうだよ。使い心地は実際に使って見ないとね。好みもあるだろうし」

「肉は切れるんかい?」

「骨は無理だな。関節を切るのも鉈くらい厚みが無いと厳しいだろうね。精肉を切るのは出来ると思うよ」

肉も切れると言う事を聞いて物欲に火の付いた女達の目が刺さる。先ずは仕事用。それが終わったら順次進呈する事で落ち着いてもらった。敵に回すと生活出来んので此処は忖度するしか無い。
試作の一本がテカテカに研ぎ上がったので、早速野菜を切る事にした。折角作った加工場だが、全員は入り切れないのでその場でテーブルを拵えて、皆が見えるようにした。実演販売かよ。
リームが取り出した数種類の野菜を切る。包丁の性能もそうだが、何故か俺が料理出来る事に驚かれた。解せぬ。下手な主婦より皮剥きが上手いとか、切り方が丁寧とか、真面目な顔が意外と可愛いとか。意外とって何だよ…。
切った野菜は折角なので干し棚で乾かす。

「皮剥きした残りはどうすんだい?」

「外の畑に鋤き込んでやれば良いよ。次採れる野菜の肥料になるだろ」

「新しい人達の仕事になるんだろ?あたし等もさせてくれないかねぇ?」

「飯作りと掃除と洗濯だけじゃ暇を持て余しちまうよ」

充分働いてるだろそれ。報酬が現物支給になっちゃうのを説明し、それでも良ければ…と言う事で調整してもらう事になった。調整役は元肉屋の女将の未亡人、マルシアさん。調整役はそれだけで一つの仕事になりそうなんだが、本人がどちらもやりたいと言うならそれ以上の口は挟まない。調整が終わったら一度報告に来ると言い、その場は解散となった。


 午後をだいぶ回り、一回目の包丁の増産が終えたので岩壁の居住区を整備に行く。二回目を仕込みたかったが、動力は俺のスキルだし、俺が近くに居ないと不安なので休止したよ。

「中を壁で仕切ると言っていたな?」

「ああ。トイレ剥き出しじゃ恥ずかしいもんな」

西の二階に行くと、既に数人が座ったり寝転がって休んでた。慌てて出て行こうとする女達を制し、序にレイアウトのリクエストを聞きながら仕切りを立てて、ベッドやトイレ、照明を設置し、最後に窓とドアで部屋と外界を遮断した。六人部屋はこれを雛形にしよう。

「私等は今日から此処に住むよ」「ありがとうね、カケル様」「したくなったら、…良いからね?」

有り難く通わせてもらおう。ネーヴェとバジャイのガードが強いので、他の部屋も整備して行った。作り方を覚えたネーヴェも参戦し、新規の分を含め、二階と三階で十六部屋を整備して飯の時間になった。
 飯を食いながら移住者の女達に話をすると、皆が今日から住むと言う。家を留守に出来るので正直助かるぜ。その後、調整役のマルシアさんから明日から仕事を始められると報告を受けた。お礼代わりに光の棒を差し上げると、何処に置いたら良いか分からないので家に来てくれと言う。
魔道具のアフターケアは入念に行わなければならない。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

病弱幼女は最強少女だった

如月花恋
ファンタジー
私は結菜(ゆいな) 一応…9歳なんだけど… 身長が全く伸びないっ!! 自分より年下の子に抜かされた!! ふぇぇん 私の身長伸びてよ~

治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師 そんな彼が出会った一人の女性 日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。 小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。 表紙画像はAIで作成した主人公です。 キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。 更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

処理中です...