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包丁
しおりを挟む強制労働者と移住希望者を乗せた船が空を行く。空飛ぶ船…飛空挺だな、ボロっちいけど。女達は荒野広がる眼下を眺めて何を思うのか。途中、塹壕にて直立不動になってる強制労働者を回収し、街に着いた。幻術を解いていたようで、壁の内側に広がる緑に女達が感動の声を上げた。
着陸するより海の方が良いだろうな。先に居た三隻を《収納》し、着水、着岸させた。
「今度は船毎攫って来たのか!」
「全員降りて並べ。移住希望者は後から降りてくれ」
主婦や兵士が集まって、居並ぶ罪人を検めるが、今回は知ってる顔は無かったようだ。
行商モドキを含めた女二人に男三十九人は、兵士とボーデンフェルトに連れられて、詰所へと向かって行った。
「先ずは風呂に入って疲れを癒すが良いよ。昼頃にはここで皆が飯を作るから、一緒に作ると良い」
移住希望者の三人に告げると、世話好きな主婦達に囲まれて、公共浴場へと連れられて行った。
「主様、帰りを待っていた」「カーケルー」「カケルさま!カケルさま!」
「ただいまリーム、ネーヴェ、バジャイもただいま~」
寄り添うリームに抱き着くネーヴェ、しゃがんで待つのはバジャイだ。
「野菜ほしば、つくる。教えて」
「そうだな…、彼処に建てようか」
島と街を繋ぐ、街の西側の岩壁は俺達の居る場所の直ぐ近くだ。西日は当たらなくなるが港のど真ん中になんて作れないからな、妥協せざるを得ない。
岩壁に向かい、清掃と補強を施すのはネーヴェ。護岸工事もすっかり慣れて、キレイな斜面が出来上がった。俺は地面を平らに均して固め、煉瓦のタイルを並べてく。
「主様、それは何の為にするのだ?」
「野菜が落ちても平気なようにだよ。土が付くより良いだろ?」
「気にするものなのか?」
「人の子はお腹痛くなっちゃうんだよ」
「カケル、次はよ!」
四×十×三ハーンの建物にする為、先ずは煉瓦で箱組する。それを二段で二階建てにした。
右端に大きめの入口と、大きい窓を三面に開け、とにかく風通しを良くする。ドアは要望があったら付けようと思う。
入り口奥の天井に穴を開け、階段を作ってく。そして二階にも大きい窓を開けて、建屋は完成。雑木で天板が二×七ハーンもある長方形のテーブルと丸椅子十四脚。そして大きめの桶を二十作りテーブルの下に仕舞った。一階にも同じ数作って設置した。
「できた?」
「これで半分って所かな。切る場所は作った。次は干す場所だ」
雑木で膝丈程の箱を沢山作る。一先ず三十二個。次に細かい穴の空いた板を八枚。大きさは女でも持ち易いように九十×百八十ドンにした。畳サイズだな。
「主様、この板は?」
「干し棚だな。箱の上に乗せて、切った物を干すんだ」
試しに並べてみる。直列にすれば箱八つで三枚の板が乗るぞ。
「ネーヴェ、建物の隣に同じのを一つ作ってくれ。テーブルや箱も頼むぞ」
「ん。がんばる」
直ぐに出来てしまうだろうが、その間に細かい物をつくろう。先ずは包丁。シルケには、俺が知る限り包丁は無い。プロの料理人や宿屋の厨房ですら常にナイフで調理してるのだ。野菜専用の刃物を作る必要があるので、菜切り包丁を作る事にした。
薄い鉄を菜切り包丁の形にして、雑木の柄を差し込む。鋼は無いので事ある事に研がなきゃいけないが、ナイフもその辺一緒だし問題無いよな。
煉瓦の粒子を密にして砥石を作る。薄い円柱を横にして、水を掛けながら回してやると、水が飛び散りビタビタになった。
「ぎにゃっ!」
「うっ、すまん」
砥石が入る大きさの盥を作って収めてから回す。多少濡れるがさっきよりマシだ。試作した包丁に刃を付ける。浮かせて傾け押し付けて、水掛けながら左右に揺らし、砥石全体で研いで行く。
ネーヴェが作業を終えて戻って来たと思ったら、雑木が無くて家具が作れないのだと。練った雑木をくれてやったよ。
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