上 下
588 / 1,519

ザラっと言うよりサラって感じ

しおりを挟む


 主婦達を降ろして引き返す。速度と加減速のタイミングを設定せにゃならんからな。と言ってもやるのはネーヴェなのだが。

「凄く文化レベルが上がった気がするよ」

「ぶん、か?なにそれ?」

こっそり乗り込んでたバジャイが俺の膝に乗ろうとして諦めてた。隣にネーヴェが座ってるからな。通路に座り、見つからないように俺の脚を掴んでる。

「文化とは、便利になる事だと俺は思ってる」

「長い道程を歩かなくて済むようになった。それがブンカと言うのか」

「発展の一つにしか過ぎないけどね。それに、人の子が自力で作り出さなきゃ本当の意味で文化レベルが上がったとは言えないんだよなー」

「私がつくった」

ドヤ~ってしてるネーヴェを撫で回し、対岸に到着。もう一台も同じ設定にすると言ってネーヴェは二号機に向かって行った。俺は風呂作りの続きをしよう。男達だって風呂くらい入りたいだろうからな。リームとバジャイも付いて来た。

 昨日ネーヴェが作った空間は五×三ハーン程の横長の入口に、五ハーンの通路。部屋は二十×高さ×五十奥行ハーンの広さとなっている。暗いので天井に光の棒を付けて照らし、作業を始めよう。

「リームは壁をキレイな石にしたり出来る?」

「残念だが妹のようには出来んよ。精々硬い石を作る程度だ」

「充分だな。煉瓦で型を作るから硬い石を貼り付けてってくれ。肌を切らないように丸みを付けてね」

「相分かった」

 先ずは浴槽。雑木の板材で四角を作り、部屋の奥にくっ付ける。奥行は十ハーンとした。

「浴槽は一つなのか?男も女も入り乱れて入る風呂なのだな」

「まさか。後で壁を立てて間仕切りする予定だよ」

板材の内側を六十ドン掘り、真ん中に幅五ハーンのスロープと手摺を付ける。

「足を滑らせないようにしたい。少しざらつく感じにしてくれるか?」

「やってみよう」

リームの魔法で生まれた石片が吸い付くように浴槽内に張り付いて行く。キレイにみっちり敷き詰められた石材タイルは、ザラっと言うよりサラって感じ。

「良い感じだ。次は浴室と脱衣場を分ける壁を作ろう」

「壁なら我にも出来る。遠慮無く使え」

「お湯まだ?」

「まだだよ」

壁は入口から八ハーンの場所に立ててもらった。出入口は入口と同じく真ん中に五×三ハーン。

「石も貼るか?」

「その前に間仕切りの壁も頼むよ。入口までお願いね」

「うむ」

パパッと出来た壁に、洗い場を作ってく。五十高さ×四十ドンの段差を間仕切り以外の壁に貼り付ける。浴室の真ん中にも低い壁と段差を付けて、二列の洗い場を設置した。反対側の浴室にも同じく施行し、リームにタイル張りしてもらった。

「中々渋い感じだな」

「暗いだけだろう」

「クリスタルでも付けるか?」

「我には作れんのだ、すまぬ」

「問題無い。これがある」

「それは…、ゲルか」

約五百匹分のミズゲルを固めた玉っころが二つ。コイツを《散開》させて大きくし、クリスタルっぽい形に形成したのをリームの火で焼き固めてもらう。

「火で無く熱波の方が良かろうな。火だと黒くなってしまいそうだ」

「俺達も黒くなりそうだ」

「任せておけ」

二つの塊が加熱される。不思議と熱さを感じないのはリームが何やらしてるからだろう。元々水分を抜いて固めたので差程湯気も出ずに固まった。しかし透明感のあるクリスタルモドキでは光が拡散しないので、粉状の煉瓦を吹き付けて白く濁らせる。光の棒で裏から照らすと上手い具合に輝いてくれたので、タイル張りした天井に貼り付けて、光の魔石に魔力を込める。

「おおー」

「ひかったぞ!」

「これがゲルだと誰が思うのか。くくく…」

浴室を照らすクリスタルモドキの明かりは眩し過ぎる事も無く、部屋の隅まで照らしてくれた。後で大きい魔石と交換する予定だが、行き当たりばったりにしては上出来過ぎるぜ。反対側も施行して、次は面倒い配水と排水だ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~

白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。 日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。 ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。 目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ! 大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ! 箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。 【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD
ファンタジー
【転生者モチ編あらすじ】 異世界を再現したテーマパーク・プルミエタウンで働いていた兼業漫画家の俺。 原稿を仕上げた後、床で寝落ちた相方をベッドに引きずり上げて一緒に眠っていたら、本物の異世界に転移してしまった。 初めての異世界転移で容姿が変わり、日本での名前と姿は記憶から消えている。 転移先は前世で暮らした世界で、俺と相方の前世は双子だった。 前世の記憶は無いのに、時折感じる不安と哀しみ。 相方は眠っているだけなのに、何故か毎晩生存確認してしまう。 その原因は、相方の前世にあるような? 「ニンゲン」によって一度滅びた世界。 二足歩行の猫たちが文明を築いている時代。 それを見守る千年の寿命をもつ「世界樹の民」。 双子の勇者の転生者たちの物語です。 現世は親友、前世は双子の兄弟、2人の関係の変化と、異世界生活を書きました。 画像は作者が遊んでいるネトゲで作成したキャラや、石垣島の風景を使ったりしています。 AI生成した画像も合成に使うことがあります。 編集ソフトは全てフォトショップ使用です。 得られるスコア収益は「島猫たちのエピソード」と同じく、保護猫たちのために使わせて頂きます。 2024.4.19 モチ編スタート 5.14 モチ編完結。 5.15 イオ編スタート。 5.31 イオ編完結。 8.1 ファンタジー大賞エントリーに伴い、加筆開始 8.21 前世編開始 9.14 前世編完結 9.15 イオ視点のエピソード開始 9.20 イオ視点のエピソード完結 9.21 翔が書いた物語開始

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】暁の荒野

Lesewolf
ファンタジー
少女は、実姉のように慕うレイスに戦闘を習い、普通ではない集団で普通ではない生活を送っていた。 いつしか周囲は朱から白銀染まった。 西暦1950年、大戦後の混乱が続く世界。 スイスの旧都市シュタイン・アム・ラインで、フローリストの見習いとして忙しい日々を送っている赤毛の女性マリア。 謎が多くも頼りになる女性、ティニアに感謝しつつ、懸命に生きようとする人々と関わっていく。その様を穏やかだと感じれば感じるほど、かつての少女マリアは普通ではない自問自答を始めてしまうのだ。 Nolaノベル様、アルファポリス様にて投稿しております。執筆はNola(エディタツール)です。 Nolaノベル様、カクヨム様、アルファポリス様の順番で投稿しております。 キャラクターイラスト:はちれお様 ===== 別で投稿している「暁の草原」と連動しています。 どちらから読んでいただいても、どちらかだけ読んでいただいても、問題ないように書く予定でおります。読むかどうかはお任せですので、おいて行かれているキャラクターの気持ちを知りたい方はどちらかだけ読んでもらえたらいいかなと思います。 面倒な方は「暁の荒野」からどうぞ! ※「暁の草原」、「暁の荒野」共に残酷描写がございます。ご注意ください。 ===== この物語はフィクションであり、実在の人物、国、団体等とは関係ありません。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

お兄様のためならば、手段を選んでいられません!

山下真響
ファンタジー
伯爵令嬢のティラミスは実兄で病弱の美青年カカオを愛している。「お兄様のお相手(男性)は私が探します。お兄様を幸せするのはこの私!」暴走する妹を止められる人は誰もいない。 ★魔力が出てきます。 ★よくある中世ヨーロッパ風の世界観で冒険者や魔物も出てきます。 ★BL要素はライトすぎるのでタグはつけていません。 ★いずれまともな恋愛も出てくる予定です。どうぞ気長にお待ちください。

処理中です...