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強制労働者

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 翌日は、朝の仕事を片付けたら島内の帰宅希望者七人を荷車に乗せて空に上がる。勿論ネーヴェも同行する。バジャイは拗ねて巣籠りしてしまったよ。帰ったら某国王並に撫で散らさねばなるまい。

「んー、集落って結構あるもんだな」

上空から《感知》で島を見渡して、人の存在を探して行くと、結構な数の集落がある事が分かった。何れも川沿いや海沿いで、隠れ住めるような場所に住んでいる。洞窟だったり崖や岩山に穴を掘ったり。大人五人は皆が海沿いに住んでいたそうで、ぐるっと半周も回れば探し出せる事だろう。集落の名前や場所を覚えてない子供等には色々質問を出して繋ぎ合わせて行った。その結果、穴や壁暮らしでは無いそうだ。そして海沿いでは無い事も判明した。川で魚を獲ったり体や服を洗ったりしたそうな。

「私達は後でも良いから、先に二人の頼むよ」

「ああ、任せとけ。所でさ、隣街の野郎が奴隷船で働いてるって事はさ、街々に罪人の手先が潜伏してるんじゃないのか?」

「かも知れないね。ならカケル様の街はどうなんだい?」

「俺の街じゃないぞ?俺の街はあの島の方だからな。俺達が島に来た時に船や徒歩で逃げてった人達が居るんだが、その中に紛れていた可能性はあると思う。だが、ボーデンフェルトが居て見抜けない筈が無い。だから居ない可能性が高い」

試しに集落一つ一つを注視すると、大所帯で平地にある集落には幾つかの害意が見付けられた。だが確信は持てない。どの街だって一人や二人悪い奴は居るもんだからな。
こんな事なら強制労働者に何処で拐ったのか聞いておけば良かった。

「カケル、あれ」

ネーヴェが指差す先、割れた丘の中に集落があるようだ。そこで気付いた。害意の他に悲しみや痛みの感情が多くあるのだ。

「アジトかな?」

よく見ると、ネガティブな感情は数箇所に纏められてる。ああ、犯してる奴が居る。

「アジトだな。あれも強制労働者にするべ」

ターゲットを男と害意を持つ者に絞って《洗脳》を施し、集落の中心に荷車を降ろした。

「全員集まって並べ」

暫くして集まった男共に女達を集めさせた。捕まっていた女は全部で七人。内一人は被害者の振りをしてる加害者だ。

「助かったよ!あンた私等の命の恩人だぎぇっ!」

「お前の恩人では無い。その六人の恩人だ」

一人だけ小綺麗にしてたらバレバレだろうに。馬鹿な女にも《洗脳》を施し男共と並べといた。
連れて来られた女達は俺が近付くと恐怖に身を震わせていたが、《洗浄》して回復を掛け、帰宅希望者達と話をさせると皆涙を流して喜んだ。
新たに確保した六人は、二人ずつ三つの集落から拉致されたそうだ。川を往く交易船を隠れ蓑にして拐っていたらしい。実際に拐って運ぶのは陸路だそうだが、見た目に目立つ船を疑って積荷を検めても女は居らず、その隙に陸路で連れ帰っていたようだ。

「奴隷紋は入れられたか?」

「え、ええ。アイツ等の中に魔法を使えるのがいるよ。あの雛鳥禿げの男だよ」

「ネーヴェ、頼めるか?」

「わかった。ならべ」

ネーヴェに因って奴隷紋を消された女達は荷車には乗り切れないので雑木で橇を作って乗ってもらった。強制労働者二十一人は空に上げて追従させる。
川沿いの集落に向けて低空を移動すると、直ぐに女達が知ってる場所だと教えてくれた。集落に女達を帰しに行くと凄く警戒されたが、女達が帰って来た事実には抗えず、納得して感謝の言葉をもらった。子供達の居た集落では無かったが、聞き込みしないとヒントすら集まらんから仕方が無い。その後は上流へ向けて移動して、残り四人の集落も見付けて帰す事が出来た。
子供達の居た川では無かったようだ。彼女達の知る川はもっと細く、船等入れないと言う。

「陸路で拐ってるなら陸輸での行商に扮してるかも知れないな」

「村に物を売りに来る人いたよ!」

「荷車で来てたのかい?」

「うん。これよりおっきくて四角いの」

細い川となると選択肢が広がり過ぎて困ってしまう。
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