上 下
575 / 1,519

龍が治める国

しおりを挟む


 広場で昼飯を食い、昼休み。岩壁の部屋を一つ借りて種の仕分けをしながら横になっていると、入口から覗き込む小さい奴等を《感知》が捉えた。気になるお年頃なのだろう、気にせず種をお椀に入れて行く。

「お、お前!ヒズラーから来たってほんとか!?」

代表したのか押し出されたのか、男の子が前に出て声を荒らげた。

「正確には違うが家はヒズラーに建てたぞ?」

「なら敵だ!俺のとーちゃん返せ!」

「戦争にも参加してないぞ?冒険者は国のいざこざには関わらなくて良いらしいからな。それに、俺がヒズラーに来る前から戦争してたみたいじゃないか。それにだ。キネイアッセンはどうなんだ?あっちも略奪してたんだろ?」

「う…」「もういーよぅ、やめようよぉ」「やっぱりこの人は関係ないんだよ」

「ヒズラーだキネイアッセンだ言ったが、略奪なんてする奴は唯の野盗だ。お前等を守る為に必死になって戦って守り切ったんだ。それを誇れよ」

この街だけじゃ無いだろう、ウラシュ島全体の蟠りがこの子等の言葉には込められていると感じた。すごすごと部屋を去る子供達に俺が掛けてやる言葉は無い。

「子供等が世話を掛けたな」

「返せと言われてもな」

開け放たれた窓枠から顔を出すボーデンフェルトの顔は渋い。否、暗い。窓枠に腰掛けて何やら長話をしそうな雰囲気をぶった切る。

「子供が真似するから降りろ」

「あ、ああ…」

「戦争で死ぬのは兵隊だけで良いのにな、困ったもんだ」

「…そうだな」

「窓と扉、作ってくんね?」

「こ、此処のか?随分と唐突であるな」

「後で一つずつ見本を見せるから、真似てみてくれ」

「了解した…。カケル殿に聞きたい」

「何だ?」

「カケル殿は、命をどのように考える」

「敢えて言うが、この世界の命は軽過ぎる。悪人が居て、魔物が居て、怪我や病気があり、老いて行く。それで居て弱者を守る為の対策は無いに等しい。国や街の長たる者はそれを守る義務があり、その為に税を納める。そんな事が出来て無い」

「成程。戦で負けるのは国や街の所為と言う訳か」

「違うな。国のせいで戦争する羽目になるんだ。民に学を与えないから収量が増えず飢える。魔法を貴族が、魔道具を魔法ギルドが独占してるから魔物を減らせず怪我をする。食えないから奪い、そして被害者が出る。国の政治が出来て無いせいで人の命が軽くなっているんだ。
ボーデンフェルト、お前は戦争でどれくらい殺した?」

「数えた事も無い」

「それでも戦争が終わらなかったのはお前に学が無かったからだ。人を効率良く殺す知識がな」

「戦場に出て戦うだけでは足りなかったと言うのか?」

「上陸する前の船を潰せよ。出港する港を潰せよ。王城を潰せよ」

「あ…ああ…。我の所為か」

「それも違うからな?侵略して来た奴等のせいだ。勘違いするなよ?」

「だが、我が浅はかなばかりに戦火を伸ばしてしまった事に変わり無い」

「ボーデンフェルト、この島を国にするつもりはあるか?」

「…お前を王として、か?」

「否、王はミーネでどうかと思う。長生きだぞ?」

「龍が治める国、か…。他のものに知れたら人の子の真似事と揶揄されるだろうよ」

「人の子の傍で生きる龍だって居るだろ。其奴等が楽しく過ごせれば良いじゃないか。他のは関係無いぜ」

「我が命はこの街に捧げる物としている。それが国になるだけの事。協力しよう」

「先ずは窓と扉な」

「ふっ、了解した」

 選別していた種を片付けて、寝てる二人を起こさぬように部屋を出る。壁の出入口から外に出て、すぐ側に生える木の元に降り立った。

「一先ず一本あれば良いな」

根元から《収納》し、枝と皮を剥いだ丸太にして外に出す。

「乾燥させないと歪むし腐る。方法に依っては三年程掛かるが、お前ならどう乾かす?」

「それでは時間が惜しい…。火で炙る、か」

板なら良いが反りが来そうだし、丸太だと割れてしまうかも知れないな。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。 どんなスキルかというと…? 本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。 パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。 だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。 テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。 勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。 そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。 ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。 テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を… 8月5日0:30… HOTランキング3位に浮上しました。 8月5日5:00… HOTランキング2位になりました! 8月5日13:00… HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ ) 皆様の応援のおかげです(つД`)ノ

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第六部完結】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

処理中です...