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肥料が足りない
しおりを挟むバリアフリー。地球ではこれをやらないと色々な所から文句が出るし、やればやっただけ仕事した気分になると言うお手軽仕事であった。実際に施行するのは業者であって、発注する奴はコンクリも練らなければコーンも立てないのである。だが施行する事で非健常者の快適度が上がるのは事実なのだ。
施行する場所と予算があれば、だがな。俺が以前在籍していた課では、新規の施行箇所も新規に建てる建物も無く、それでも予算を得る為に施行する必要の無い施設にまで粉を掛けて顰蹙を買っていた。
「成程。主様の作られた方が使えなくなった場合、動けぬ人の子が取り残されてしまうと言う事か」
「けど、坂道、長い」
「人の歩幅は同じじゃない。階段は歩幅を同じにしてしまうから、歩幅が合わない者は疲れてしまうんだ。そして歩く速さもまちまちだ。前に遅い人が歩いていたら、その後ろは渋滞してしまうだろ?」
「ふむ~」
「移動距離を短くしたい意図は解る。けどこれだと荷車が上げられないよな?」
「たしかに。直さなきゃ」
ネーヴェも理解してくれたようだ。ドロドロの生煉瓦を流し込み、キュッと固めて階段を無くすと、再び穴を切り取って行く。勾配十%以下を目指して切り取ってもらったが、これを歩き続けるのも実はかなりキツい。が、この対策は今は出来無いので後回しだ。西側と同じようにスロープを作り、廊下や部屋を切り出して、落下防止のブロックや屋上出口の屋根等を付けたら側の完成だ。作り直した場所があっても俺がやるより早いのは、流石龍だとしか言い様が無い。
今日も広場では奥さん連中が集団で飯を作ってる。井戸端会議の延長であるそれは、食い物に差が無いからこそ出来る事なのだろう。昼飯までにはまだ時間がありそうなので、外の雑野菜を更新しに行こう。
「島で食うにはまだ土が弱いな」
「肥料が足りないか」
「出来れば一度、森にして鋤き込んでしまいたい所だ」
「なら、種を取ったら半分程森にしてしまおうか」
「心得た」
空に上がり、奥の門から半分程のエリアに魔力を注ぎだす。茂って枯れる野菜から種を浮かせて寄せて来る。纏まって雑多になっちゃってるので後で仕分けしなきゃな。
地面から野菜が無くなると、薪や建材になる木を風魔法で切り刻み、ドバババッと地面に射出して成長させた。間伐も枝打ちもしないので、水瓶と道以外密集した木で隙間無く埋まってしまった。それでも成長を止めないので密着し始める。島の複合施設みたいだな。
そいつをネーヴェが風のグラインダーで粉々にして行く。イゼッタの魔法を真似たのか。魔力と音に驚いたボーデンフェルトが飛んで来たが、俺達が作業してるのを見て静観するみたいだ。
おが屑と土をリームが混ぜて、混ぜたのをネーヴェが腐らせる。湯気の立つ赤黒い土が出来上がった。俺、何もしてないので水撒きます…。
「主様の水は魔力が多くて良い。普通の人の子ではこうはならん」
褒めて伸びる子なので頑張ります。手伝ってもらって素早く終わらせたけどね。
「カケル殿、奥の方まで収穫は出来ん。建材や薪の為の林にして貰えぬだろうか?」
静観していたボーデンフェルトが口を出した。確かに往復六十キロハーン掛けて収穫するのは移動だけで一日掛かりだな。森の中心に収穫村が出来るまでは森林にしても良いだろう。
「リーム、枝打ちは解るか?」
「分からんが、必要ならば教えてくれ」
枝を払って材の質を高めたり、日を林内に入れる事の意味を教えてやると、何となく理解したようだ。
「風呂と食堂のある木のようにする訳だな。不自然に枝が無いと思ったが、そう言う事か」
「手間が掛かるからそこまで気にしなくても良いよ。十ハーン間隔で植えて、枝が重なるようなら切れば良い」
「やってみよう」
リームが真上から植林したり枝打ちをした結果、木が円柱状に剪定された。そうじゃない感で一杯だが、今直ぐ使う訳で無し、そのままにしておこう。
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