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嬉ション

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 《威圧》のへらで焦げないように、底からしっかり掻き混ぜてボコボコドロドロするまで煮立てたら浮かせて粉っぽくなるまで練り上げる。

「すごい!」

何時もは板にしたのをかち割って使ってるから最初から粉状態のを見るのは初めてか。

「あじみっ、あじみっ!あ~~~」

可愛らしい雛鳥め。丸く纏めて口の中に入れてやると、口の中で溶ける黒糖と共にネーヴェも蕩けた。

「ぁむぁ~~」

俺は種の様子を確認。一番粒の大きいオオサヤノクサの火が通っていれば全体的に大丈夫だろう。…大丈夫だ、問題無い。

「街の状態はこれで半分と言った所か」

「早いのか遅いのか、我には判らん」

「まだ家が一つと畑と果樹園だけだからな」

「街にするには家が足りん、か」

「午後は行商にでも行って来るよ」

「ついてく」

「リームはどうする?」

「背中に乗って欲しいぞ」

「直ぐそこなんだがなぁ…」

昼飯は肉焼きセットで薄焼肉と焼き野菜。緑色で蕪の様な根菜は、焼くとカボチャみたいにホクホクしてて、薄焼肉で巻いて食べると美味かった。ネーヴェは何時の間にか作ってた黒蜜に塩味を足して甘塩だれを開発し、肉に漬けて焼いていた。色は似てるが醤油が欲しいな。少しもらって食ってみたが、味はみたらしに近かった。ネーヴェはすき焼きを自然発生させようとしているのか。頑張れ。

 午後になり、煮種と野菜を大八車に乗せて対岸まで飛んで行こうとするとリームに怨めしい視線を投げ付けられた。折角作った大八車を《収納》し、光を放ち巨大化するリームに跨った。

「静かに飛べよ?対岸なんだから」

「心得ている」「はよはよー」

ネーヴェもちゃっかり跨って、正確には俺のペニスケに跨って、はよ飛べと催促してる。
注文通りふわりと静かに浮き上がったリムドラは、ゆっくり優雅に飛んでった。対岸の人から見たら恐怖でしか無いな。真っ黒な龍が威圧感たっぷりで飛んで来るのだから。威圧感に見えるものは嬉しくて色々出ちゃってるだけなのだが、人には分からんからなぁ。
嬉ション状態のリムドラに、ボーデンフェルトが飛んで来た。

「誰だ!?」

「俺俺、俺だよ俺俺」

「カケル殿!?その龍はおんな 三姉妹の真ん中では無いか!」

「随分と女の名を知ってるな。もしかして狙ってたのか?」

「笑止也。長女は確かに良い女で、皆が挙って求愛していたがな。次女は出涸らしの無能龍ではなぎぎががががっ!!」

「俺の女の悪口は控えろ。それにどんなに魔力が少なくても雄より強いぞ?」

「ばっ、ばがっがががっ!」

《威圧》を解いてやる。デリカシーは無いが悪でも無いからな。

「街の者にリームの有難味を味わせてやる」

「な、何をするづぼぎぎゃぁああ!」

「だまれ、雄」

多分だが、ネーヴェは痛め付けたかっただけだと思う。いじめ格好悪いので直ぐに止めさせた。

「まさか…、その雌も龍なのか…?見た事も無いが…」

「雄よ、この方は、クリスタルドラゴンである。怒らせるなよ?」

「げ、原種…」

「俺のだ。いーだろー。そろそろ行くぞ」

再びゆっくりと対岸の街に近付いて行くリムドラに、ボーデンは汗を垂らして追従する他は無かった。鎧から汗流してるのが面白い。


 街の上空でリムドラが人型に変わり、街に降りると何時もの兵士にマシュエルもやって来た。

「また来たぞー」

「そ、そのドラゴンは何だ!?」

「俺のだぜ?すげーだろー?今日は食い物持って来たぞー。その内作りかた教えてやるから今日は好きなだけ食え」

「売らんのか?」

「金ねーだろ?」

「馬鹿にするな、無くはない!」

「そりゃあ無一文で生きては行けんだろうがさ。取り敢えず持ってって嫁やら子供に食わせてやれ」

大八車を出して、野菜や煮種を見せてやると皆の目の色が変わった。採れて六オコン経った新鮮野菜に鍋に入って湯気を放つ煮種。そして何やら茶色い玉。見た事の無い物と、欲しかった物がそこにあるのだ。
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