上 下
554 / 1,519

ウラシュ島

しおりを挟む


 ミーネの発言は、以前他の者に進言されて断ったんだよな。確かリア達だったか。公務員より稼げる農家になりたいと言った気がする。国は嫌だが街を興せば糖を売るだけで稼げる農家になれちゃうのか…。

「国はミーネが王になるなら考えても良い。まあ、土地があって流通が出来るならな」

土地。この大陸はリアの産まれた公国と、ほぼ親族の治める三つの国があり、ある意味仲良くウラシュ島侵略戦争をしていた。搾取と鉱物資源回収のため、大陸全土が何れかの国の所有となっている。ってノノペディアより。こんな所に街など作っても何処かの貴族に搾取されるだけであるし、国なんて興しても戦争する未来しか見えない。

「島で良ければあるぞ?知り合いの巣だった場所だが既に使われておらん。人の街が近いので私は使わなかったがな」

「あるのかー。広さはどんな感じ?」

ミーネ曰く、海の浸食で削れて無ければ今居る島の百倍はあるそうだ。そう言えばミーネの巣もかなりデカかったな。彼処は火山がもくもくしてるからダメだけど。

「カケル、引越し?」

「そうだな。折角良い家作ったしなー」

「けど、住民は増えない」

「人が来られないからなー」

「イゼッタ様、街は職場と考えてはどうでしょう?あたしもこの島には愛着があります」

「捨てるなんて勿体無い事はしないよ」

「ならば明日にでも見に行くか。誰かが巣にしていたら諦めてもらうがな」

「カララも行くの!」

母親同伴なら大丈夫だろう。冷やし種乳をお代わりしてその日は寝た。


 その日、対岸の街では異様な空気に包まれていた。対岸の島にドラゴンが、それも二頭が飛来したのだ。急いで街を離れる船に、街道では荷車が列を成し、街に残る者は諦めの境地に至った。
水レンズで島の上空から対岸を見ているが、やはりミーネに乗って行くのは間違いだったか。カラクレナイも人化してもらうべきだった。これ、人、戻って来るのか?軍隊でも連れて来そうな雰囲気さえあるぞ。
ここはウラシュ島の北にある、数少ないウラシュ人の街を対岸に望む孤島だ。広さはちょっと測れない程広いが人の姿は無く、切り立った断崖絶壁が高く聳え、人の浸入を拒んでいるようだった。

「人の子が逃げてしまった。旦那様、すまん」

「そのうち増えるの」

「そうだと良いな」

低い所から島の周囲をぐるりと見回し、モンスターが居ないのを確認した。

「取り敢えず、明日から護岸工事だな」

対岸の街を見に行く事にした。一人で飛んで行こうと思ってたのに、着いて来ちゃうミーネとカラクレナイ。ミーネは人化してるけど、カラクレナイは龍のまんまだ。
街に降りて気になったのが戦火の影響が強い事。遠目からでは分からなかったが壊れて直しかけの建物が目立つ。

「誰だ!?」

「俺か?」

物陰から誰何する人影に、《威圧》を込めて返事する。武器を持っているのだから容赦はしない。

「俺は冒険者だ。お前等は何だ?敵対するなら騎龍の餌にすっぞ?」

「そんなデカい騎龍が居るか!?我等はこの街を守る兵士だ!」

「角飾り着けてるだろうが!」

「見えんぞ!」

だいぶちっちゃくなっちゃったしな…。

「あの島に街を作る事にしたから、死にたければ攻めて来い。仲良くしたけりゃ良い物売ってやる」

「あの島はドラゴンの住まう島だぞ!」

「今は住んでない。確認して来たからな!」

「今二頭来ただろうが!」

「俺の騎龍だ!敵対しなきゃ食ったりせんから、逃げた住民を連れ戻して来い」

返事は聞かず、対岸の島に戻る。その後ろでは兵士に詰め寄る住民が人集りになっていた。飯もあるし、今日は此処に泊まるかな。川があるのが見えたのでそこにしよう。

「旦那様、巣の跡を見に行かないか?」

もしかしたら誰か寝てるかも知れないと言う。《感知》に引っ掛から無い程の龍なら俺達は帰るべきだろうに。それでもテントを建てるよりは楽かと思い、ミーネの言葉に従った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

処理中です...