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笑顔の天使

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 海水を補充しながら加圧加熱して行くと、鍋肌に白い塩の結晶が付着する。塩は何時も買っているのでたっぷり作っておきたい。この鍋一つで百ナリは入ってるので、三回分継ぎ足せば五ナリは出来る事だろう。塩の結晶を《集結》しながら待つ。

「カケル様、種が煮えました。これくらいで良いですか?」

プリプリ食感のマルサヤノクサはやはり塩振って食いたいな。煮汁の中に沈む種に《散開》を掛けると、白い液体が沈殿した。お玉で掻き混ぜて少し味見…、ちゃんと豆乳になってるな。シルケだと種乳になるのか。

「飲み物ですか?」

「すり潰した種カスを絞ると飲みやすくなるぞ?」

「へー」

「あまり興味がなさそうだな」

中身を浮かせて薄い雑木紙と漏斗で種乳を搾り出す。濾紙を詰まらせるオカラを《集結》させる事で効率が増した。

「おっぱい大きくなるらしいぞ」

「ははは、まさか、ははは…。頂いても?」

コップに注いだ種乳を、フーフーしながら飲みだした。確かに大豆にはイソフラボンだとかの効果で女性ホルモンがどうたらこうたらと、姉が必死になって飲んでいたな。

「美味いか?」

「青臭いですが、飲みます」

飲めますで無く飲みます、か。別鍋に少し取って冷やして飲もう。
そうこうする内に滷汁の鍋に塩が溜まった。水分もかなり減ったのでこれくらいで勘弁してやる。《集結》で塩を浮かせて耐火煉瓦の箱に詰めた。これは後で焼く。
さて、滷汁の方はと言うと、ペロッこれは滷汁!ってくらいの苦味だった。そして塩っぱい。温かい豆乳にお玉で掬った滷汁を入れて掻き混ぜて、暫し待つ。その間に、雑木紙と紐、雑木で作ったトレーを用意した。

「ぷはー。其方は何をしてるのですか?」

「種乳を食える状態にするんだ。温めても冷やしても食えるんだが、上手く行くと良いな。それと、種の絞りカスも食えるから団子に混ぜたりマタル粉と混ぜたりすると良い」

「カス、なんですよね?」

「食える物を捨てる生活してたか?」

「ですね、失言でした」

「こっちはこっちでお通じ良くなったりするからな」

「女性に嬉しい種だったのですね」

地球のと同じ成分ならな。シャリーが三杯目の種乳を飲み干す間に十リット程経っただろうか。滷汁を入れた鍋の中はプルンプルンになっていた。このまま食っても美味いだろうが、鍋は使いたいので掻き混ぜて雑木紙で包んで紐で縛り巾着にした。それを沢山作ってトレーに乗せて行く。

「固まりましたね」

「少し水分を抜いてやると味が濃くなるって婆ちゃんが言ってた」

トレーに溜まる水を捨てて試しに一つ食ってみる。折角だから冷やして食おう。巾着の周りに魔力を纏わせぐーるぐる。熱が奪われ冷えた豆腐が出来た。種腐?トーフで良いや。
白くてプルンプルンのトーフを齧ろうとすると、スッとスプーンが伸びて来た。二本あるので食う気満々のシャリーである。
スプーンを受け取りいただきます。

「豆腐だ…」

「トーフって料理ですか?さっきの種乳の味ですね。冷えてて食べやすいです。特に今の厨房では有難いですね」

「トーフもそうだが種乳も足が早いのが難点だな」

「種乳なら皆様飲むかと。私はこのトーフも気に入りましたよ?」

「食事としても食えるし、黒蜜かけて甘味にもなる。上手く消費してくれ」

「甘味と聞いて」「やって来た」

お前等ずっと食堂で見てただろ。イゼッタとネーヴェがすっ飛んで来やがった。イゼッタは身重なんだから加減して動きなさい。
お皿の上に冷やしたトーフをポテッと乗せて、上から黒蜜をたらーっと、たららーっとたっぷり掛けて、お口に頬張りアヘ顔の二人である。冷やし種乳もどうぞ。

「んま~…」「んま~…」

「カケルしゃま…」「ダメだよ!?」「でも…」

小さい子が指を咥えて居ると言うのにアヘ顔晒してこの大人達は!直ぐに用意したぞ!
黒蜜トーフに甘納豆をトッピング!冷やし種乳には砂糖で加糖した。

笑顔の天使が舞い降りた。





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