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出血大サービス
しおりを挟むボストカゲは倒したが、ジョンの予備はボロボロだ。剣身は言わずもがな、目玉を潰した時に眼窩も突き刺したみたいで、先っちょが欠けちゃってる。
「兄貴ぃ、剣が斬れなくなっちまった」
「使い方が悪いな」
「ガットに研いでもらうから休憩して良い?」
ジョンを見ると困ったモンだぜ、みたいなジェスチャーをしてくるので、階段を降りたら休憩にした。
「あにきー水ちょーだーい」
階段を降りて、小部屋の隅に陣取って、肉でも焼こうと荷物を出してたらガットが水を所望した。喉でも乾いたのかと水の棒を出してやると、タオルで包んだ砥石に水を掛けだした。ああ、研ぐのか。留め金を外して剣身を引っこ抜き荒砥でジョリジョリ研ぎ出した。今日はここまでかな。携帯用火の鉄板も出してスープとソーサーでも作るとするか…。
「カケル、お前って何時もダンジョンで一から料理すんのな?」
「研ぎに時間が掛かりそうなんでな。多分だが、今日はここまでだと思うぞ?」
「俺、戦ってないんだぜ?」
「行ってらっしゃい。ご飯までには戻るんですよ?」
「お袋みたいな事言うなよ。…じゃあ、少し狩って来る」
地べたに寝転がる兎達を跨ぎ、ジョンは遊びに行った。飯までに帰って来なければ全部食ってやろう。
飯が出来て、兎達に腹一杯食わせたら、階段の裏に穴を掘って便所を作る。糞をひり出し、《洗浄》しているとドアを開けてジョンが帰って来た。
「派手にやられたな?」
全身の傷は差程でも無いが、脚からの切り傷は出血大サービスしているな。
「こりゃあ自分でやったんだ。精神攻撃使って来る奴が居てな…」
とりあえず回復してやったが、無くなった血は戻らないのでぐったりしてやがる。
「肉でも食え。トカゲの肉だぞ」
腹這いで鉄板ににじり寄り、手掴みで肉を焼いて食っている。塩くらい振れよ…。寝ながら食って、食いながら寝てしまった。
「お前らはマットで寝ろよ?疲れが取れんからな」
「「「はーーい」」」
階段とドアに《威圧》の壁を設置して、俺も寝る。
目が覚めて、ショリショリ剣を研ぐガットを見やる。昨夜は寝てたから早起きして作業してるのかな?俺も起き出し飯を作る。まあ昨日の残りだけど。
「兄貴の焼くソーサーはなんでこんな薄いんだ?」「ペラペラだよな」「うまい」
「この方が作るの楽なんだ」
薄ソーサーは早食いの三人には好評のようだ。薄焼肉を巻いて食べられるしな。生野菜かピクルスでもあれば尚良かったのだが。一方ジョンはくるくる巻いて棒状にして肉とは別に食っている。飯を食ってたっぷり寝て、どうやら血は戻ったようだな。
「ジョン、今日はやれそうか?」
「無理しなきゃ大丈夫だ、と言うより精神攻撃だけだな危ないのは」
「今度ダンジョン行く時は《洗脳》してチケットだけ貰ってやろう」
「止めろよ泣くぞ」
そう言うのは子供か美少女の特権だろうに、いい歳した男が泣いても誰も喜ばんぞ。
ドアを開けて通路に出ると、敵を蹴散らし進んでく。ガットが研いだジョンの予備もだいぶ斬れ味を増したようだ。ここからは大人も少しだけ混ざって対応する。
《感知》で見える、戦うべきでは無い敵に《威圧》を掛けてこっちに来ないようにしてやった。
「畜生、昨日の奴が居なくなってやがる!」
「居なけりゃ居ないで良いじゃないか、ダンジョンだもの」
「なあ、あっちに居そうなんだよ。寄ってっても良いか?」
「そんな事よりとっとと降りてトカゲ殺ろーぜ?な?」
「トカゲ!殺れんのここ!?」「素材出るかなー」「つのっきばっうろこっ!」
少年隊がやる気になったのでジョンも折れた。別個体と分かっているが、子供等に女を殺す所なんて見せたくないからな。
進むにつれて中型種がいなくなり、大型種が増えて来て、遂に魔剣が落ちた。
「兄貴!槍だぜ!!」
「ニットの武器は交換だな。敵と相対するとスキルの使い方が分かったりするから、驚かないようにな」
「大事にするぜ!」
大鉈を返してもらい、槍に慣れるまで休憩にした。
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