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鷹か鷲
しおりを挟む糖の生産調整をしている間、俺は食っちゃ寝セックスしていた訳では無い。属性魔石を作って魔道具に加工した物を売りに行ったり、ママ上殿やカロ達に甘い物をお裾分けしに行った。
そしてミーネ先生に冷却の方法を学んだ。熱だけを《収納》する事はやはり出来無かったが、熱を他の物に変換する事で熱を奪えるようになった。
それは魔素だ。コップの水の周りに魔力を纏わせると、水の持つ熱が魔力と混ざり、熱を持つ魔素に変わる。その時、魔素の持つ熱が魔力に吸い取られ、排出され、水の温度が急激に下がる事になる。コップの水は凍らない程度のキンキンになった。氷を作れなかったのは残念だが、物を冷やせるようになったのは大きな進歩だ。
そして俺は今、キンッキンに冷えた飲み物が一番必要無さそうな場所に来ている。
「兄貴ぃ、寒みぃよぉー」「布団もっとちょーだーい」「ガチガチガチガチガチガチ…」
少年隊の三人を連れてやって来たのは名前も忘れた北の大陸の雪の国。ジョンの街で良いか。門を潜り、ギルドの玄関前で誰か開けてくれるのを待とうと思ったが此奴等がこうなのでノックして開けてもらったよ。
「他所からの方ですね?早く入って下さい暖房も只じゃないので」
「わーい」「寒かった~」「ガチガチガチガチ…」
俺を押し退け丸太が入り、中から兎が出て来て女が奇声を上げた。
「「「きゃわわた~ん」」」
群がる女達に引く男達。中心の三人は揉みくちゃにされながらも満更では無い様子だな。
「お前等~、先に事務処理してもらえ~」
私が私がで取り合いになった。
「騒がしいぞ!?」
「俺が来たからだ」
「カケルか!」
「遊びに来たぞ」
「マスター、そんなの放っといて此方に!きゃわわたんでしゅよ~!?」
「…耳長三人は今直ぐ俺の部屋に来い」
うほっ?
「カケルもだぞ」
女達のブーイングを背に階段を昇り、ジョンの部屋にほいほいした。
「窓から入って来られた方がマシだったな」
「だろ?」
「今度来るまでにカケル専用入口を作っといてやる。で、此奴等何だ?お前の子だろ」
「血は繋がって無いが可愛い弟分さ。ダンジョンで遊ばせようと思ってな」
「こんな寒みいトコだと思ってなかったよ!」
「ワー姐に聞いてたけど寒過ぎだぜ」「俺眠い…」
「お茶をお持ちしました」
三人をソファーに座らせ雑木紙を掛けてやってると、普段絶対に来ない、お茶を持った女職員が入って来た。何やら勝ち誇った顔をしている。ハフハフしながら啜る三匹の子兎を見詰める視線は鷹か鷲か、変態のそれだ。
少年隊と、序に俺の事務処理をしてもらい、ジョンにダンジョンの入場券を集る。
「俺も行って良いならくれてやるぞ。と言うかそうでもしないと発行してもらえんだろ」
「一理ある。それと、そこの女の人」
「は?何ですか?」
「此奴等に防寒着を見繕ってく「是非承ります!直ぐ行きましょうそうしましょう!」」
「兄貴ぃ…」「俺達、ここで死ぬのかな?」「外出たくない!」
「金は後で俺のギルド証から引き落としといてくれ。宿の手配してくるから夕方までに此処に居るように。居なければ女達全員お腹痛くしてやる」
「必ず無事にお送りします」
雑木紙でラッピングされた三人を軽々持ち上げ意気揚々と部屋を出て行った。
「なあ、カケル。彼奴等は前に来たドラゴンみたいなバケモンじゃあ、無いんだよな?」
「龍に鍛えられた加護持ちだが、まだまだ可愛い弟分だよ」
「英雄かよ」
「野盗のアジトで攫われた女を救う程度には英雄だな」
「人間レベルでホッとするぜ…」
龍に鍛えられたってのを忘れてるぞ?三人の飲み残しを飲んで、専用出入口から宿に向かった。勿論、猟師宿樵だ。
「いらっしゃーって、カケル様ぁ!」
「久しぶりだな」
フロントで仕事してたのは看板娘のティータ。俺の部屋と、三人の部屋を頼むとネーヴェが居ない事を残念がっていたが、俺の連れが可愛い少年と知って俄然やる気を出していた。
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