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ゲテモノ

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 金属バットの蓋を開け、中身を触ってみるとしっかり固くなっていた。覗き込む兎達はナンダコリャ?って顔してるよ。剣鉈の先でつついて少しだけ砕き、三種を個別に皿に取る。
皿の上でボロっとしてる茶色の塊はシルケの人種には全く馴染みが無いのだろう。興味を無くして種を乾かすのを見てるからな、現金なモノだ。俺は小さな塊を摘んで口に放り込んだ。

ほう…。

三種を食べ比べ、結論を出す。

「美味いがどれも同じ味だな」

 その一言にラビアンの耳が此方を向いた。一斉に向いたのでちょっと怖かったぞ。

「ネーヴェ、口開けて。あ~ん」

「ん。あ~~~ん…。これが、甘さ?」

龍には分からなかったか。

「イゼッタ、口開けて。あ~ん」

「ん。あ~~~ん…んまぁ~」

ほわぁ~と言う擬音が出そうな顔をして、イゼッタが破顔した。兎達はそんなイゼッタを凝視して、一斉にこっちを向く。だから怖いって。

「…少なくて悪いが試作だから勘弁してくれ?外に居る奴も連れて来て皆でお食べ。それと、皿を用意しろよ?」

「「「「「はーーーい」」」」」

現金なモノである。取り敢えずは白糖、白蜜、水飴、黒糖が出来るようになった。虫歯や糖尿にならないように消費してくれ。

「カケル、あげる」

生乾きの種をイゼッタから受け取る。黒糖を確保したいのだろう。しっかり乾いて無くても味は変わらんし、こっちの試食もしなくちゃな。
皿に乗った種を種類毎に選別しようとしたが、ヒラバ類は似てるので諦めた。ヒラバ類、サヤノクサと試食する。

ふむ…。

「上品な甘さだな。蜜の濃度を濃くするか、漬け込み回数を増やすか、白糖を塗すのが良さそうだ」

「カケル、あ~~ん」

ネーヴェが雛鳥になっているので一摘み放り込む。

「ん、さっきとは違う味」

「カケル様、私にもあーん」

「はしたないですぞ姫様」

スプーンを持たせてリアに試食してもらう。白糖は食べた事あるだろうし、真面な意見が聞けそうだ。

「これがホルストの餌とは信じられませんね。菓子と言えば焼き菓子か蜜漬けのフルーツですが、これは後者に当たりますね。しかし調理に掛る手間は雲泥の差であると見て取れました。ネーヴェ様には感謝しなくてはなりません。味はと言いますと、水飴は砂糖よりもあっさりとした甘味ですが、スッキリとした味わいがお茶に合うかと思います。種の芯までしっかりと味が染みて、とても美味しゅう御座いました」

何処かの料理研究家みたいな食レポをしてくれた。おいおい、普通は毒見役が先に食べるもんだろう?食レポを聞いてフラノノが手を付けた。

「ん、美味い」

  「ゲテモノ料理は偶に流行るので、これはこれで良いかと」
フラーラは語彙が無い。そしてノーノに至ってはゲテモノ扱いだ。まあ、地球で例えるならミドリムシやウーパールーパーを食うようなものか。ウーパールーパーは食った事無いが、ミドリムシは姉が美容だ何だとほざいてサプリメントを服用してたな。その時の俺の感覚と、ノーノの感想は近い物があると思う。
リア達が食べてるのを見て兎達も寄って来た。スプーンで少しずつ分け与えてる。皆神妙な面持ちで口にして、驚いていた。

「カケル様は神様です!」

いいえ、人です。

「カケル様を信じて良かった」

さっき怪訝な顔で口に入れてたよな?

「カケルしゃま、だいしゅき~」

俺もだいしゅき~。

 ともあれ、黒糖と甘納豆制作は成功だ。この日より、種とアマグキを採る為の畑が作られる事となる。種は餡子、黒糖は黒蜜に変化し、白蜜と共にフサナリを原料とする団子に添えられ、餡蜜が自然発生した。

 そして大量に余った。調子に乗って作り過ぎだ。糖の生産量を調整し、作られた種は食事として消費させた。団子と種のスープ美味しいです。砕いて煮たフサナリは、ご飯っぽい食感で焼肉によく合う。

「カケル、最近フサナリばっか食べてる」

イゼッタに言われて気付く。俺はご飯の国の人なのだな。
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