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サンダルくらいなら俺にも作れる
しおりを挟む片目を瞑って何とか視力を確保していた最後の一人が女達に刃物を当てて喚いてる。
「もう少しだぞ、頑張れー」
「手前ぇ等の目的はこの二人だろうがっ!殺されたく、な…」
馬鹿な奴である。喋くってる暇があるなら壁際にでも逃げれば良い物を。後ろから両腕と首をスパーされて物言わぬ塊と化した。
「三人共、お疲れ」
「吐きそう…」「吐いていい?」「おろろろろろろ!」
ガットはここまで、否、三人共ここまでだな。ワーリン達に介抱されてゲロってら。俺はアジト毎全員に《洗浄》を掛けた。ぐったりしていた女達もびっくりして跳ね起きたよ。
「お、お前さん…。するならするって言っておくれよ」
「あたいは慣れてるけどね」
「兄貴ぃ、水ちょーだーい」「「俺もー」」
女達と三人の勇者に回復と水をくれてやる。ワーリン達が女達の介抱をしてる間に、金目の物を回収だ。と言っても大した物は無かった。金と、安物の武具と、装飾品。手持ちの物に比べるべくも無い。
「カケルさん、何か服になりそうなの無い?」
シトンが聞いて来る。そう言えば人質の女達は殆どが素っ裸だったな。雑木紙に穴を開けて貫頭衣にしてもらおう。サンダルくらいなら俺にも作れるな。履き心地はともかく、足が痛い事は無くなるだろう。八足作って配って回った。
「この度はお救い頂き感謝する」
殆ど素っ裸の中に居て、服を着ていたのはこの台詞を吐いた女の後ろに居る者だけだ。多分貴族で、身代金の為にキレイなままにしておいたのだろう。野盗は本当に馬鹿だな。俯いたままで一言も発せず、唯々時間が過ぎるのを待っているようだ。
「助けたのは彼処の三人だ。礼は彼奴等に言ってやれ」
「…貴方。何処の家から依頼されたの…?」
黙りの貴族が口を開けば家の事、か。
「冒険者の依頼に家名を出すか?アズよ?」
「え?まあ、出しませんね。そもそも依頼なんて受けてませんし、依頼が出てるかも怪しいですね」
「と言う訳でタダ働きだ。気負わず助かった事に喜んどけ」
「私を売れば…お金になるわよ?」
「卑屈だな。金はあるから心配すんな。バルタリンドまで送るから、後は現地の貴族にでも借りを作るんだな。ハイネルマールなりメリクヒャーなりな」
「貴族にお詳しいのですね」
護衛なのかメイドなのか、俺から貴族を守るかのような仕草の女が訝しげな目を向ける。
「メリクヒャーはギルドのサブマスだ。ハイネルマールは仕事の付き合いがあって懇意にしてるってだけの話さ」
女達と少年隊が回復し、揃って外に出た。この穴も閉じておかないとまたアジトにされるのでしっかり蓋しとこう。女達はこれからの移動を思ってか表情が暗い。俺は有り余る雑木で箱を作る。移動は浮かせて行くから足元は橇にした。椅子とクッションも設置して、十人乗りの橇型荷車が完成した。それを魔道車に牽引させる。
「貴方は魔導師でしたか」
「唯のスケベ男だよ」
「オレの時は人外とか女好きって言ってたよね」
「はいはい乗れ乗れ。街に着いたら服と飯。アズと少年隊はギルドで報告だ。昼飯には間に合わせるぞー」
魔道車と荷車に乗り込んで空に上がる。当たり前だが荷車の女達が驚いてるな。風が当たるし怖がらせないように速度を落としてバルタリンドに飛んでった。
門兵に奴隷売買と間違われ、結果全員でギルドに向かう羽目に遭う。ギルドにはカロも居るし、話は通しやすいか。
「カケル様、この女達は…まさか!?」
「カロさんや、お前もか」
階段を降りて来たカロにまで疑われたが、アズが説明して誤解は解けた筈だ。女達は四人がメイド兼護衛、一人が四人を雇っている貴族、三人は平民だそうで、会議室にて各々お礼を言われた。
「メリクヒャー嬢、不躾な申し出ではありますが…」
そんな中、口を開いたメイドの代表はカロに泣き付くようだ。しかしカロ邸には俺達も厄介になってる訳で、カロは渋い顔をしていたが、俺が湖の島に行く事を念話で伝えると寂しげな顔で了承していた。愛い奴め。
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