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ヒトモドキの鳴き声

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 アジトの全体を把握した俺は、一番大きい入口以外を全てに煉瓦を詰め込んで固めた。埋め立てた出入口は五つ。一箇所に一人見張りが居たが、これはサービスで処理してやったので、残りは十九人だ。だが俺は、退路を塞いだ事だけを伝えて獲物と生存者の数は教えない。
隊列を組んで、ノシノシ入口に歩いてく。見張りの二人は俺達が見える前に気付き、中に隠れたようだ。きっと奥に居る奴に報告しに行ってるのかも知れない。
 ノシノシ進むダートに、素早く静かに壁を登るニット。ガットは少し離れてダガーを握る。
岩の隙間から襲い掛かるナイフに、ダートは身を翻して躱した。空いた空間を貫いて、ガットの投げたダガーがナイフを持つ手を斬り飛ばす。ナイフの持ち主は声を上げる事無く死んだ。ニットの剣が脳天から串刺しにしたのだ。

「「「……」」」

三人は無言で頷き合うと、警戒しながらダガーとナイフを回収し、後詰の俺達を呼び寄せた。

 野盗のアジトは臭くて暗い。せめて臭いのだけはと思うのを我慢して、俺の周りだけ空気を纏い、死んだ見張りを《収納》して先に進む三人に付いて行く。
通路には誰も居ないが、前を行く三人は警戒を怠らない。身を屈め、足音を立てず、罠や伏兵の存在を確認しながらも出来る限りの速さで歩く。その後ろを存在感を消したワーリンと浮いてる俺が続き、アズはその後ろ。音が出やすい金属鎧のシトンは最後尾だ。
野盗の全ては拉致された女達を集めて一箇所に集まっている。どうせ人質にでもするのだろうな。俺達は別に、人質の救出に来た訳では無いので盾にされた所で何ら気にならない。死ななきゃ治せるしな。
もぬけの殻となった部屋を、一つ一つ見て周り、漸くして野盗共の集まる部屋の前に来た。一丁前に扉なんぞ付けて、此処が本命と言わんばかりである。野盗共も何時来るかとドキドキしてたに違いない。が、愚策である。そう仕向けたんだがな。

「兄貴…」

ダートが囁く。ワーリンは此方を見て様子を伺っている。

「お前達の好きなようにやってみろ」

三人を撫でて前を向かせると、間を置かず行動を開始した。ニットのダガーが扉の隙間に突き刺さり、バターを切る程の力で蝶番と鍵を切り離す。彼奴のダガーはトカゲの牙だ。ちょっとした金属程度なら問題無く切れてしまうみたいだ。一体何時の間に作ったんだろうか。扉を押し込み、盾にしながら中に侵入すると、薄暗い部屋の中からヒトモドキの鳴き声がした。

 止まれとか、人質が…とか言ってるように聞こえるが、此方は誰も聞いてない。扉が勢い良く倒れると三人の姿は薄暗い部屋の中に消えた。その奥に見えるのは俺達なので、野盗共には三人の姿は確認出来まい。

「女と金目の物とお前等の命を貰いに来ただけだからゆっくり寛いでてくれ」

何か喚いているが当然無視だ。女に当てられた刃物を《収納》してやると、一人、また一人と人質を取っていた野盗が死んで行き、此方に女が飛んで来る。三人が俺に向かって女を投げ飛ばしてるのだ。臭いし汚いので直接触りたくない。浮かせてキャッチしたら端っこに置いとこう。
人質が二人になった所で漸く三人に気付いたようで、円陣を組んで警戒し始めた。陣の中央で人質二人を盾にしてる奴が親玉って所だろう。
流石の三人も、しっかり陣を組まれたら手出ししにくいか。ワーリンに目をやると困った顔をされた。棒立ちにしない程度に手伝ってやるか。
《収納》から、以前試作した魔道車のライトを取り出して、獲物の目を狙い魔力を込めた。ぎゃあぎゃあ煩い。視力を奪われた順に、刺されて斬られて死んで行く。光を避けようと目を瞑った野盗は首が飛び、辺り構わず刃物を振り回していた馬鹿は仲間を斬り付け、結果自分も斬られてた。そしてその場に立っていられたのは親玉と思しき一人と人質二人だけとなった。死体を《収納》して足場を良くしてやろう。
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