上 下
502 / 1,519

壁ドン

しおりを挟む


「半分くらい減らせば良いか?」

「その後は私が行きます。ウォリスが厄介ですので其方を多目にお願いします」

「任せよ」

エージャが殺気を放ち、剣を構える。俺は《感知》で獲物を把握し、犬の全てと、犬顔を少し煙に変えた。

「出ます!」

エージャの声と同時にサスーンの剣幕が止まる。飛び出したエージャが横薙ぎすると、犬顔の体が数匹、上下に分かれた。次に出たのはサスーンで、袈裟斬りに一匹、横薙ぎで一匹斬り倒す。カリータはスールズの壁となり、魔法の詠唱時間を稼いでる。スールズは水球を飛ばして援護に回り、三人の攻撃をより確実な物にしていた。俺はドロップしたのを片っ端から《収納》して足元の安全を確保し、新たに湧いたのを間引きして行った。腹減ったよ。

 トータルで何匹殺ったのだろうか。腹減らしの運動にしては充分過ぎる量だった。全員に回復を掛けて飯にする。雪国産の熊っぽい奴の肉を薄切りにして、肉焼きセットを皆で囲んで焼いてソーサーに乗せて食べる。

「ダンジョンで焼肉が食べられるなんて…」

「塩や香辛料をまぶして持って行けば良いじゃん。一日二日は持つだろ?」

「その発想に至らないのが冒険者なんだよなぁ」

「マジックバッグ持ちもそうそう居ませんから。ポーターを雇うのも良いけど、ダンジョンではお金掛かるから…」

このダンジョンは、意図的に深く潜らせないようにしてると思われる。踏破させたくないのだろう。一日五万、持ち物に制限のある冒険者では十日も潜って居られまい。五人で十日で二百五十万。雑費を足してもトカゲの魔石くらいは持って帰らないと赤字になっちまう。
マジックバッグを入手出来た此奴等は実力だけでなく運も持っているんだな。

 食事を終えて探索再開。このペースで移動すると、二十階のエリアボスに着くのは夜になると言う。時間が分かるのでは無くて腹時計なのが何とも冒険者チックだ。

「先導しても良いなら俺が出るぞ?」

「カケル様なら任せても良いかな」

「そうだな」

「何か不都合でもあるのか?」

赤と黄色が思わせ振りな事をおっしゃる。聞くと、狭い所に連れてってぐへへな事もあると言う。

「カケル様の壁ドン…ぐへ、ぐへへ…」

エージャはブレないな。

「休憩、します?」

スールズのスイッチが入る前に移動しよう。三人の感覚的ルート選別は悪くないのだが、《感知》持ちの俺からするとヤキモキしてしまう事もしばしばあって、進言するか迷っていたのだ。戦闘しないと稼げないし、エージャを鍛えられないのは分かるのだが、とっとと下に降りて稼ぎの良い獲物を狩りたいのだ。犬顔の鎧がこの辺りのメインだが、この程度ならエージャでも余裕があるからな。

 《感知》を広げて、ゴール地点の階段を見付ける。お、宝箱発見。

「この辺りの宝箱って中身入ってるのかな?」

「先行者が開けてなければ…」

「開けたい人~」

挙手を募ると三人の手が上がる。エージャの意思は俺次第なので挙手しないようだ。フェイントを掛けようと肩を揺らすが微動だにしないぜ…。民主主義に則り宝箱の場所に向かう事にした。

「また小部屋かぁ」

チラホラ現れる敵を倒しながら着いたのは扉のある小部屋前。サスーンが独り言ちる。

「罠は…、見えないな。俺の熟練度より強いヤツだと分からんが」

「まだそんな階層じゃないから、多分大丈夫ですよ」

スールズの言葉を受けて中に入り、代表して箱を開けた。

「スールズよ、見事なフラグ立てだったな」

「そんなっ!?転移罠なんてこんな所で見た事ないのに!」

宝箱を中心に、部屋全体に光る線が走る。

「とにかく一箇所に集まれ」

「カケル様、抱いてください」

「お前が来い」

「はい!」「カケル様っ」「私も」「あっ、ずるいっ」

四人の女にガッチリ動きを封じられ、光り輝く魔法陣の中に消えて行く俺達であった。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

病弱幼女は最強少女だった

如月花恋
ファンタジー
私は結菜(ゆいな) 一応…9歳なんだけど… 身長が全く伸びないっ!! 自分より年下の子に抜かされた!! ふぇぇん 私の身長伸びてよ~

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す

SO/N
ファンタジー
主人公、ウルスはあるどこにでもある小さな町で、両親や幼馴染と平和に過ごしていた。 だがある日、町は襲われ、命からがら逃げたウルスは突如、前世の記憶を思い出す。 前世の記憶を思い出したウルスは、自分を拾ってくれた人類最強の英雄・グラン=ローレスに業を教わり、妹弟子のミルとともに日々修行に明け暮れた。 そして数年後、ウルスとミルはある理由から魔導学院へ入学する。そこでは天真爛漫なローナ・能天気なニイダ・元幼馴染のライナ・謎多き少女フィーリィアなど、様々な人物と出会いと再会を果たす。 二度も全てを失ったウルスは、それでも何かを守るために戦う。 たとえそれが間違いでも、意味が無くても。 誰かを守る……そのために。 【???????????????】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー *この小説は「小説家になろう」で投稿されている『二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す』とほぼ同じ物です。こちらは不定期投稿になりますが、基本的に「小説家になろう」で投稿された部分まで投稿する予定です。 また、現在カクヨム・ノベルアップ+でも活動しております。 各サイトによる、内容の差異はほとんどありません。

処理中です...