500 / 1,519
回収するまで終わらない
しおりを挟む長蛇とは言えない一列縦隊の三人に、二列で鶴翼の陣を取る犬顔の敵。後詰は左右から囲む算段か。乳首が唱えた呪文が発動して戦闘が始まった。多分攻撃系のバフだろう。赤の両手と黄色の剣が俄に光り、直ぐに消えた。三人揃って左にズレながら、右端の先端に突っ込んで行く。
剣を横薙ぎにして振り回す犬顔をひらりと避ける赤の後ろから、黄色がコンパクトスイングで腕を斬り飛ばし、直ぐ様三人間合いを取る。斬られた犬顔を中心後方に置き、敵も陣形を建て直していた。同じ事を十回やれば、敵の右手は全部無くなるだろうな。けど相手も馬鹿じゃないようで、間合いを取り続ける三人を押し込んで落とした剣を拾い、左手持ちにして戦力を回復していた。
壁際に追い込まれた三人に対し、二列だった鶴翼が二つに分かれて襲い寄る。そこに乳首を中心とした鶴翼から魔法が放たれた。水か土か分からないが、地面を泥に変える魔法だ。泥に嵌ったのは片方の五人。最初の陣形だと位置的に多くて四人だろうから、上手く使いこなしているんだと思う。更にその泥を地面に戻し、完全な足止めとしたようだ。ちょっと強引に壁際を切り抜けて足止め組から距離を取ったのは剣を投げ付けられない為だろう。
三対五となり、かなりの不利が解消された。鶴翼の左右へと単騎で突っ込み一対二の三。二の方には赤、三の方には黄色が居る。俺なら一と四に分けるかな?すると三の方に水壁が発生した。乳首は水魔法の適性があるようだ。水壁諸共斬り付ける相手に上手く合わせて剣を振り、またもや手を斬り飛ばした。黄色の方は上手く避けながら少しずつ距離を稼いでる。
三人の両手が斬り落とされ、出血のダメージで動けなくなると、再び泥沼で足止めする乳首。此奴等は放っといてもそのうち死ぬだろう。黄色は走って赤と合流し、タイマンで一人ずつ斬り殺す。ここで乳首は戦線を離れた。魔力を温存する為だろう。敵から目を離さずこっちに来た。
最初に足止めされた五人は赤と黄色の敵では無かった。チクチクと手を斬り落とされて、首を撥ねられ煙になった。両手を失い足止めされていた三人も後ろから首スパーされて煙となった。
「お疲れ様」
「まだよ。回収するまで終わらないの」
息荒く肩を上下させる二人に回復を掛けてやると驚いてた。俺のは疲れまで無くなるからな。先に休んでた乳首にも回復して、頭を撫でながら魔力を送ってやる。
「ふぁ!なんでそんな事出来るの!?」
「なんだスールズどうした?」
「カケル様、魔力の譲渡が出来る!凄い!」
「とんでも無い魔法使いなんですね」
「謙遜する訳じゃ無いが、攻撃に魔法は使った事が無い。結果的に目が痛くなった事はあったがな」
「ならどんな戦い方をするんだい?」
「私も見た事ありません。女と寝技してるのしか見た事が無いので」
「俺はコイツも使うがスキルでの戦闘がメインかな」
形見のナイフを見せてやると、赤と黄色は飛び退いた。
「なっ、なんだそれ!?」
「私、武器は使わないけど凄くヤバいって事だけはわかるわ…」
それが分かるだけ、此奴等は真面な冒険者だと分かるな。形見を仕舞ってドロップを回収したら部屋の外、下の階へ続く階段へ向かった。
「此処からは俺達も働こう。と言っても戦うのはエージャだけどな」
「皆さんと肩を並べられるよう頑張ります」
「否、あんた結構強いだろ?」
「長くだらけてたので体が鈍っているんです」
「死なせないから好きなようにやってみろ。丁度来たしな」
階段を降りて暫く歩くとカチャカチャと鎧を鳴らして犬顔が寄って来た。さっきのよりは小さいし、二匹しか居ない。一匹は俺が足止めする事にして、エージャを前に、三人を後詰にして進む。
そして会敵早々しょぼ剣が折れた。笑うしかない。
「どうだ?まだ殺れそうか?」
「問題ありません…つえいっ!」
間合いを詰めて振り抜いた折れ剣は、根元から首元に当たり頸動脈を断ち切った。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
RiCE CAkE ODySSEy
心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。
それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。
特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。
そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。
間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。
そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。
【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】
そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。
しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。
起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。
右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。
魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。
記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
第三王子に転生したけど、その国は滅亡直後だった
秋空碧
ファンタジー
人格の九割は、脳によって形作られているという。だが、裏を返せば、残りの一割は肉体とは別に存在することになる
この世界に輪廻転生があるとして、人が前世の記憶を持っていないのは――
異世界帰りの【S級テイマー】、学校で噂の美少女達が全員【人外】だと気付く
虎戸リア
ファンタジー
過去のトラウマで女性が苦手となった陰キャ男子――石瀬一里<せきせ・いちり>、高校二年生。
彼はひょんな事から異世界に転移し、ビーストテイマーの≪ギフト≫を女神から授かった。そして勇者パーティに同行し、長い旅の末、魔王を討ち滅ぼしたのだ。
現代日本に戻ってきた一里は、憂鬱になりながらも再び高校生活を送りはじめたのだが……S級テイマーであった彼はとある事に気付いてしまう。
転校生でオタクに厳しい系ギャルな犬崎紫苑<けんざきしおん>も、
後輩で陰キャなのを小馬鹿にしてくる稲荷川咲妃<いなりがわさき>も、
幼馴染みでいつも上から目線の山月琥乃美<さんげつこのみ>も、
そして男性全てを見下す生徒会長の竜韻寺レイラ<りゅういんじれいら>も、
皆、人外である事に――。
これは対人は苦手だが人外の扱いはS級の、陰キャとそれを取り巻く人外美少女達の物語だ。
・ハーレム
・ハッピーエンド
・微シリアス
*主人公がテイムなどのスキルで、ヒロインを洗脳、服従させるといった展開や描写は一切ありません。ご安心を。
*ヒロイン達は基本的に、みんな最初は感じ悪いです()
カクヨム、なろうにも投稿しております
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる