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玩具
しおりを挟む取り出した魔導砲は、祝砲に設置するにはだいぶ小さいが、その分砲筒が複数付いている。直径五ドンが二門、二ドンが二門並んで付いていた。砲の付け根から伸びた動力パイプらしき管はリュックサックへ伸びていて、プラモ好きなら小躍りして背負うだろう。そして装飾がゴテゴテしてる。金地に赤青緑のメタリックカラーが施され、特撮好きなら小躍りして背負うだろうが…、敢えて言おう、悪趣味であると。
「おい、これ、着けてみて良いか?」
「辞めとけ。力に飲まれるぞ?動力が自身の魔力なら干からびるかも知れん」
「そりゃ怖ぇな…」
「カケルさんが正解ですね。これ自分の魔力を使うみたいです」
「見た目だけだなこりゃ。貴族が好きそうな色だし売っぱらっちまったらどうだ?」
「殺されて奪われかねんよ。辞め辞め」
魔導砲
装備者の魔力を凝縮し撃ち出す携帯型魔導砲。
背嚢へ魔力を溜める事で使用可能。
大二門は連射不可。小二門は六発/リット。
性能を書いた紙を回し見して、やはり見た目装備だと悟る。俺や龍にしか使えないだろうな。何方にしても玩具だ。
良いモン見たとギルマスは仕事に戻り、俺達も鑑定料を払ってダンジョンに向かおう。
「他にもトンデモ武器をお持ちなのですか?」
街を出て、ノーズコーンに収まり飛んでいるとエージャが思い出したように聞いて来た。
「あるぞ。どれもこれも外には出せない魔剣や魔装ばかりだがな」
「それを装備したら強くなれますかね?」
「基礎が無きゃ使えないし、奪われたら負けちゃうじゃん?素の力は大事だよ」
「確かに」
本人には言わないが、ドロップした魔剣をその場で使いこなしてたジョンは凄い奴なんだよ。
ダンジョン都市まであと少しとなり、ノーズコーンを仕舞って歩いて移動する。かなり広く開拓していて草原や畑が五キロくらい続いてるのでノーズコーンが見られちゃうし、今から行く街は初めてなので、門兵が驚いちゃうからね。
街道を往く人の姿もチラホラ。殆どが農民に冒険者だが、ホルスト車で移動してる商隊も居るな。用心棒を引き連れてこっち来てるよ。
近付くに従い相手が威嚇して来た。
「歩きにくいです」
「《威圧》されて歩き難いで済むのか。中々やるじゃないか」
「歩けません。お姫様抱っこして下さい」
「歩け。街で明日の準備したら使ってやるから」
「走りたい気分です」
「歩け」
走って行かないように手を握らせて歩を進めると、暫くして商隊が目の前にやって来た。
「ちっ、見せ付けやがって…」
「よう、俺の連れに《威圧》したのはどいつだ?」
「「……」」
皆目を逸らして黙りだ。商隊居る者全てに正しい《威圧》を掛けてやると、外に居た者は皆、蹲り動けなくなった。中に居る奴等も似たようなモンだろう。呻き声が聞こえる。
「誰が《威圧》したか聞いてんだ」
「おま…そんなごどじで…」
「だだで、じゅぶど…」
「そっくりそのまま返してやるよ。俺達に《威圧》した結果がそれだ」
荷車に乗った者を引き摺り降ろす。男は容赦無く、女子供は丁寧に降ろし、依頼者と思しき非戦闘員は《威圧》を解いてやった。
「いきなりで驚かせて悪かったな。此奴等に《威圧》を食らったので返させてもらった。舐められたら冒険者は終いだからな」
「こっ、此方こそ失礼な事をしまして申し訳ございません!何卒ご容赦お願い致します」
依頼人と思しき男が許しを得ようと膝を折る。別に俺達は物盗りでも無いし構わないのだが…、
「カケル様、どの女を犯すのですか?全員ですか?私も仲間に入れて下さい。私にだけ入れて下さっても良いのですよ?寧ろそれが良いです」
エージャがそをんな事言うモンだから女達がビビってしまった。
「じゃあエージャ、尻を出せ」
「只今!」
「主人よ、少し荷車を借りるから外で待ってろ」
「は…。はあ」
エージャと二人、荷車の中で小一オコンぬぽぬぽした。スッキリしたので用心棒共の《威圧》を解いて商隊を解放したが、荷車の中は良い匂いになっている事だろう。
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