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呆れて物も言えん

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 明けて翌日。ゆっくり朝食を摂ってギルドに赴くと、既に人集りが出来ている。またジョンか。無視して中に入りジョンに《威圧》を放つと直ぐにかっ飛んで来た。

「カケル!呼び方ってモンがあんだろ!」

「どーせアポ取っても不快になるだけだからな。で、ゴミ共は何処だ?」

「ついさっき全員揃って尋問室に入れたトコだ」

ジョンに連れられ尋問室に入ると、壁を背にして椅子に縛りつけられたゴミ共が虚ろな目で座り惚けていた。暴れたり自害しない為の策なんだと。その中にはバルジャンも居て半開きの口から涎を垂らしてる。

「バルジャン、全てを語れ。何故俺の施術を邪魔した」

「貴族になる為…あれの持つ技術…あれその物…王家に献上…男爵に…」

パチンと指を鳴らすとバルジャンは静止した。

「はぁ。呆れて物も言えん」

「昨日聞いた内容だとな、技術を治療院に売って金を集めて賄賂やら色々にしたら、お前を詐欺師としてとっ捕まえて、あれやこれやで洗脳して王家に献上する計画だったと」

「存在するだけで害悪だなあの王は。トカゲ全部寄越せって言った時殺しておけば良かったぜ。ハーク達が泣くと思ってしなかったが」

「止めろよ、後釜が居ねーじゃねーか」

「ジョンよ、ハークが成人するまで王にならんか?」

「ギルマスの器でも無ぇのにやれるかよ」

「だよなぁ。取り敢えず此奴等には死んでもらおう。それで今回の事は手打ちにしてやる」

「しかし、貴族だぞ?」

「騎士爵なんて貴族じゃねーよ。それで国が敵になるようなら更地にしてやる。
所でジョンよ。ギルド解体しろよ。依頼受付廃止して素材の買取業務だけにしたらどうだ?」

「何を藪から棒に」

「ダンジョン入場の抽選とか、季節で依頼が無くなるとか、依頼無しで野盗を狩ってもほぼ無駄とかさ。馬鹿馬鹿しいとは思わんか?買取業務の他に情報収集と開示だけで充分だろ。よく分からんプライドで他人を貶す職員とか要らねーよ。空いたスペースで酒場でもやった方がまだマシだ」

「酒場は良いが、依頼を出したい奴は居るんだぜ?」

「依頼が殆ど無い時期は、冬眠でもしてろってか?」

「カケル、もう行こ?」

今まで静かにしてたネーヴェが口を開いた。これはヤバい状態だな。ゴミ共なんて捨て置いて、とっととラッテの元に向かおう。

「無駄な時間だったな。早くラッテを治してやろう」

「うん」

商家に着いて、姉妹の両親に事の顛末を告げると、二人は胸を撫で下ろした。

「娘の事、よろしくお願いします。どうか、どうか!」

「やれるだけやる。女神は人に都合の良いような干渉等してはくれないが、それでも祈っててくれ」

子供部屋にはネーヴェと姉妹が居て、二人でラッテを勇気付けていた。

「そんなに気負う事は無いよ。痛くも無いし死にもしない。俺が疲れるってだけだから」

ラッテは俺に気付くと、近くにあったぬいぐるみやら人形を抱えてこっちに持って来た。また踊らせれば良いのかな?
座れ、って感じの指示に従い胡座をかくと、膝の上に座って体を預けて来た。準備は整ったようだ。

「ネーヴェ、眠らせてやれ」

「わかった」

その瞬間、姉妹は眠りに着いた。

「ラッテの頭に《麻痺》か《遮断》を。それと部屋に結界を頼む」

「わかった。ラッテの時を止める」

眠って柔らかくなっていたラッテの体が、固まって動かなくなった。ここからは俺の仕事か。
《感知》で見付けた血溜まりを、《散開》で粉状にしながら少しずつ《収納》する。一気に取り出さないのは血管や神経が絡んでいたら命に関わるからだ。
血溜まりを取り終えて、再度確認。回復を掛けると血溜まりのあった隙間が埋まるように脳の組織が戻って行った。

「術式完了。ゆっくり時を戻して目覚めさせてくれ」

「りょうかい」

ラッテは目覚めると、ふぅ、と小さく息を吐いた。

「おはようラッテ。頭の血溜まりは全て取って回復を掛けたよ」

「はへ、へふ」







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