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おのれダンジョン!
しおりを挟む「 お の れ ダ ン ジ ョ ン ! 」
浴槽に沈んだ二つの魔石を拾い上げ、俺は吼える。
装備を整え、風呂を片付けていると、二本のナイフが落ちていた。黒い鞘と柄に、刀身は片刃で反りがあり、白く輝く謎金属。まるで二人のようだ。
これは形見として大事に使わせてもらおう。あんまり近接戦闘してないけどな。
心を落ち着けジョンを探すと、フラフラしながら戻って来てるみたいなので合流する。
「よう、どうだった?」
「殺れたけど強え…。早速使わせてもらったぜ」
全身誰のとも付かぬ血に塗れたジョンを《洗浄》して回復してやった。下に降りて休憩しようぜ。
「カケルは随分キレイじゃねーか。何してたんだ?」
「二匹同時に相手してた。気持ちの良い相手で、互いに高め合える奴等だった。もっとしてたかったんだが、残念ながら煙になってしまったよ」
「で、それが戦利品か」
「形見、だな」
「お前に認められるなんて、すげー奴等だな」
「そうだな。人とは全く違った味があったよ」
話しながらネーヴェの元に戻ると、肉で腹を満たして野生を捨てた寝相を晒してた。龍は大体この格好で寝ているが。ネーヴェが起きるまで、ジョンを休ませた。
「俺も何とか一本、手に入れたぞ」
「良かったじゃん」
「けどこれ、あんま使った事ねーんだよなぁ」
「ほう…」
見せてくれたのは、厚い刀身の剣で柄が長い、所謂西洋薙刀、グレイブと言う物だ。狭いダンジョンで使うには少し使い勝手が悪いが、間合いを保って刺突で倒すだけなら充分な武器だろう。
「ジョンは近接で食らい易いから、間合いを大事にしろって事なんじゃね?」
「一人でダンジョン来んな、とも言われてそうだな」
俺の場合は何て言われてるのだろう?これを私達だと思って大事にしてね、なら嬉しい。ジョンが回復してグレイブを振り回し始め、暫くしてネーヴェが起きた。そろそろエリアボスを殺りに行くか。
扉を潜ると全体的に広い空間になっていた。やっと大型のボスが出そうだな。だいぶ高い所に天井があるようで、薄暗くて見えない。そんな暗がりに隠れてた巨体を晒すべく、光の棒を浮かせて照らすと、突然の大光量に驚いたボスが天井から落ちて来た。
「見ててやるからやってみれ」
「マジかよ!」
全長は部屋の半分程もあるだろうか、二十~二十五ハーンはありそうだ。ウネウネ動く胴体に数え切れない無数の脚がある。地球で言うムカデに似た体付きのモンスターだ。胴体に刃のような突起がこれまた無数に生えていて、近接戦闘ではかなり難儀しそうなフォルムである。
尻尾の側を大きく横に振り回し、上からも横からも死角無しと言った様相だ。これにジョンはどう相対する?
グレイブを構えるジョンが歯切れ悪く口を開いた。
「カケルよう。ちょっと聞きたいんだが…」
「どうしたね」
「この武器、なんかスキルが使えるみたいなんだよ」
「使ってみたら良いじゃないか?」
「本番で使えるかよ…。まあ、使うんだけどな。でだ。なんかあったらサポート頼む」
「死なせてギルマスに命ぜられたくないからな。任せろ」
「それを聞いて安心した!行くぜっ!」
口約束に法的拘束力は…、あったりする場合もあるな。ジョンの意思を感じ取ったのか、グレイブはその姿を変えていく。刃身が伸びる。どんどんどんどん長くなり、刃身が五ハーンを超えた。長い柄の上下を広げた腕で持ち上げて、巨大な刃身を大股開きで支える姿は勇者立ちその物では無いか。
鎌首擡げる巨大ムカデに巨大剣を振り被り、瞬歩で近付き振り下ろす。背後に抜けて残心する間に、巨大ムカデは崩れ落ちた。技名叫んで敵が爆発したら完璧だなこりゃ。爆発せずに煙になって消えた。
「殺ったぞ!」
「やったな」
「やったか」
ジョン曰く、敵と対峙すると使い方が解るみたい。一日で使える回数に制限があり、大きさの加減は出来無いそうだ。
「それ、名前無いの?」
「無いだろ普通。名前なんて人が後から付けるもんだ」
確かに。正論叩きつけられてしまった。
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