上 下
444 / 1,519

おのれダンジョン!

しおりを挟む


「 お の れ ダ ン ジ ョ ン ! 」

浴槽に沈んだ二つの魔石を拾い上げ、俺は吼える。
装備を整え、風呂を片付けていると、二本のナイフが落ちていた。黒い鞘と柄に、刀身は片刃で反りがあり、白く輝く謎金属。まるで二人のようだ。
これは形見として大事に使わせてもらおう。あんまり近接戦闘してないけどな。
 心を落ち着けジョンを探すと、フラフラしながら戻って来てるみたいなので合流する。

「よう、どうだった?」

「殺れたけど強え…。早速使わせてもらったぜ」

全身誰のとも付かぬ血に塗れたジョンを《洗浄》して回復してやった。下に降りて休憩しようぜ。

「カケルは随分キレイじゃねーか。何してたんだ?」

「二匹同時に相手してた。気持ちの良い相手で、互いに高め合える奴等だった。もっとしてたかったんだが、残念ながら煙になってしまったよ」

「で、それが戦利品か」

「形見、だな」

「お前に認められるなんて、すげー奴等だな」

「そうだな。人とは全く違った味があったよ」

話しながらネーヴェの元に戻ると、肉で腹を満たして野生を捨てた寝相を晒してた。龍は大体この格好で寝ているが。ネーヴェが起きるまで、ジョンを休ませた。

「俺も何とか一本、手に入れたぞ」

「良かったじゃん」

「けどこれ、あんま使った事ねーんだよなぁ」

「ほう…」

見せてくれたのは、厚い刀身の剣で柄が長い、所謂西洋薙刀、グレイブと言う物だ。狭いダンジョンで使うには少し使い勝手が悪いが、間合いを保って刺突で倒すだけなら充分な武器だろう。

「ジョンは近接で食らい易いから、間合いを大事にしろって事なんじゃね?」

「一人でダンジョン来んな、とも言われてそうだな」

俺の場合は何て言われてるのだろう?これを私達だと思って大事にしてね、なら嬉しい。ジョンが回復してグレイブを振り回し始め、暫くしてネーヴェが起きた。そろそろエリアボスを殺りに行くか。
扉を潜ると全体的に広い空間になっていた。やっと大型のボスが出そうだな。だいぶ高い所に天井があるようで、薄暗くて見えない。そんな暗がりに隠れてた巨体を晒すべく、光の棒を浮かせて照らすと、突然の大光量に驚いたボスが天井から落ちて来た。

「見ててやるからやってみれ」

「マジかよ!」

全長は部屋の半分程もあるだろうか、二十~二十五ハーンはありそうだ。ウネウネ動く胴体に数え切れない無数の脚がある。地球で言うムカデに似た体付きのモンスターだ。胴体に刃のような突起がこれまた無数に生えていて、近接戦闘ではかなり難儀しそうなフォルムである。
尻尾の側を大きく横に振り回し、上からも横からも死角無しと言った様相だ。これにジョンはどう相対する?
グレイブを構えるジョンが歯切れ悪く口を開いた。

「カケルよう。ちょっと聞きたいんだが…」

「どうしたね」

「この武器、なんかスキルが使えるみたいなんだよ」

「使ってみたら良いじゃないか?」

「本番で使えるかよ…。まあ、使うんだけどな。でだ。なんかあったらサポート頼む」

「死なせてギルマスに命ぜられたくないからな。任せろ」

「それを聞いて安心した!行くぜっ!」

口約束に法的拘束力は…、あったりする場合もあるな。ジョンの意思を感じ取ったのか、グレイブはその姿を変えていく。刃身が伸びる。どんどんどんどん長くなり、刃身が五ハーンを超えた。長い柄の上下を広げた腕で持ち上げて、巨大な刃身を大股開きで支える姿は勇者立ちその物では無いか。
鎌首もたげる巨大ムカデに巨大剣を振り被り、瞬歩で近付き振り下ろす。背後に抜けて残心する間に、巨大ムカデは崩れ落ちた。技名叫んで敵が爆発したら完璧だなこりゃ。爆発せずに煙になって消えた。

「殺ったぞ!」

「やったな」

「やったか」

ジョン曰く、敵と対峙すると使い方が解るみたい。一日で使える回数に制限があり、大きさの加減は出来無いそうだ。

「それ、名前無いの?」

「無いだろ普通。名前なんて人が後から付けるもんだ」

確かに。正論叩きつけられてしまった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?

リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。 誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生! まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か! ──なんて思っていたのも今は昔。 40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。 このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。 その子が俺のことを「パパ」と呼んで!? ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。 頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな! これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。 その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか? そして本当に勇者の子供なのだろうか?

もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~

ゆるり
ファンタジー
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。 最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。 この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう! ……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは? *** ゲーム生活をのんびり楽しむ話。 バトルもありますが、基本はスローライフ。 主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。 カクヨム様にて先行公開しております。

貴方にとって、私は2番目だった。ただ、それだけの話。

天災
恋愛
 ただ、それだけの話。

【完結】8私だけ本当の家族じゃないと、妹の身代わりで、辺境伯に嫁ぐことになった

華蓮
恋愛
次期辺境伯は、妹アリーサに求婚した。 でも、アリーサは、辺境伯に嫁ぎたいと父に頼み込んで、代わりに姉サマリーを、嫁がせた。  辺境伯に行くと、、、、、

亜人至上主義の魔物使い

栗原愁
ファンタジー
人生に疲れた高校生――天羽紫音は人生の終止符を打つために学校の屋上に忍び込み、自殺を図ろうと飛び降りる。 しかし、目を開けるとそこはさっきまでの光景とはガラリと変わって森の中。すぐに状況を把握できず、森の中を彷徨っていると空からドラゴンが現れ、襲われる事態に出くわしてしまう。 もうダメかもしれないと、改めて人生に終わりを迎えようと覚悟したとき紫音の未知の能力が発揮され、見事ドラゴンを倒すことに成功する。 倒したドラゴンは、人間の姿に変身することができる竜人族と呼ばれる種族だった。 竜人族の少女――フィリアより、この世界は数百年前に人間と亜人種との戦争が行われ、死闘の末、人間側が勝利した世界だと知ることになる。 その大戦以降、人間たちは亜人種を奴隷にするために異種族狩りというものが頻繁に行われ、亜人種たちが迫害を受けていた。 フィリアは、そのような被害にあっている亜人種たちを集め、いつしか多種多様な種族たちが住む国を創ろうとしていた。 彼女の目的と覚醒した自分の能力に興味を持った紫音はこの世界で生きていくことを決める。 この物語は、限定的な能力に目覚め、異世界に迷い込んだ少年と竜の少女による、世界を巻き込みながら亜人種たちの国を建国するまでの物語である。

「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です

リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。 でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う) はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか? それとも聖女として辛い道を選ぶのか? ※筆者注※ 基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。 (たまにシリアスが入ります) 勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗

処理中です...